『VRの部屋②―シューティング―』
「ふぅ……なんかちょっと疲れたかも」
「慣れてないからな。交代するか」
「うん、そうしよ。……あ。ちょうど届いたみたいだよ」
「ん?」
「ほら、そこに箱が置いてあるよ。んしょっ。ゲームが二本届いたよ」
「二本? どんなジャンルなんだ?」
「シューティング・ホラーの二本セットだって」
「ほう……それじゃあシューティングからやってみるか」
「わかったよ。ソフトを入れて……うん、オーケーだよ!」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「(……すごいな。本当にゲームの中にいるみたいだ。見渡すと本当に空や人が見えてくる。ん、こっちに誰か来るのか?)」
『よく来た。お前はわが軍のホープ。これからの任務の要はお前だ。存分に暴れてくれ』
「ヒトミ、このゲームってどんな設定なんだ?」
「うんとね、主人公は軍のホープなんだって。それで、最前線で戦う兵士みたいだね。幼い頃に妹と一緒に戦争で祖国を追われた主人公は、妹を護るため、そして失われた祖国を取り戻すために軍隊に入隊して、取り戻すその日まで銃を握ることを誓ったらしいよ」
「なんか、すごく適当な設定だな」
「兄妹設定が最強だね!!」
「お前の盛り上がるところはそれだけだろ」
『では、幸運を祈る』
「隊長みたいな奴が敬礼して去っていったな。これ、FPSみたいなもんか。操作方法はどうなってるんだ?」
「操作方法? ちょっと待ってね……うわ」
「どうした?」
「なんか、リロードとか照準とか意味不明の単語がずらりと……」
「……こっちでなんとなくやってみる」
〇〇〇〇〇〇〇〇
『戦闘開始!!』
バンッバンッ!
「お兄ちゃんすごい! 操作ちゃんと出来てる!!」
「なんとなく操作してみたら当たったな。しっかし、この緊迫感凄いな。どこに敵が潜んでいるかわからないんだが、実際に自分の首を動かさないと見えないのか」
「本当に戦ってるみたいな感覚になるの?」
「実際はもっと恐怖感満載だろうが、これでもかなりだな。何より……うわああ!!」
「ど、どうしたの!?」
「敵から放たれる銃撃がすげぇ怖い。いきなりでパニックになりそうだ」
「……(お兄ちゃんの怖がる姿、レアかも。きっとホラーゲームも。ふふふ)」
「うわっ、のわ!」
「お兄ちゃん頑張れ!! あ、右に敵がいるよ!」
「右っ!? おわっ!」
ズダンッ!
『――! おい、撃たれたぞ! 後ろへ運べ!!』
ゲームオーバー。
〇〇〇〇〇〇〇〇
「……ふぅ、疲れた」
「お疲れ様、お兄ちゃん。どうだった?」
「本当に戦場にいる気分だったな。二度と行きたくないけど」
「それじゃあ、この調子で次のゲームも挑戦してみようよ」
「……」
「ど、どうしたの? ゴーグル脱がなくても、次もお兄ちゃんが」
「何企んでるんだ?」
「な、何も企んでないよ!!」
「どうだか。次ってホラーゲームだろ? 俺がプレイしている後ろから驚かせるつもりだとしたら、お前を許さないぞ」
「(そ、そんな手があったなんて)……し、しないよ。お兄ちゃんに嫌われたくないし」
「ほう、そうか」
「もちろん!」
「じゃあ、お前がやってくれ。VRに酔ったんだ。慣れないと難しいな、これ」
「え……」
「ん? 兄が苦しんでるんだから、妹なら助けてくれるだろ?」
「……わ、わかったよ(こ、断れない。ホラーなんて大の苦手なのに!!)」
「(ホラーが苦手な事は知ってる。だが、こいつの計画通りにはさせん)」
こうして、ヒトミがプレイヤーとなってしまった。




