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俺と妹のただならぬワンルーム  作者: お題の人(新増レン)
2LDK(51~100)
93/102

『VRの部屋①―チュートリアル―』

 VR:Virtual Realityの略。「仮想現実」というゲーマーの夢。

 

「おぉ~~」


「何だその箱。って、それ話題のVRじゃないか」


「そうだよ。お題の人が置いておいてくれたの。今回のお題はVRみたいだね」


「へぇ……お題の人もたまには太っ腹だな」


「早速やってみようよ! このゴーグルみたいな奴付けるんだよね。テレビで見たことある!」


「待て! なんで先につけようとするんだよ」


「え……あ。そうだよね」


「一つしかないんだし、少しは話し合って――」


「お兄ちゃんが先に付けて、私が後に付けた方が二倍楽しいもんね!」


「何を楽しむ気だ。この変態」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



「けど、贅沢言うならもう一つ用意しておいてほしかったな」


「そうだね。どうして用意できなかったのかな?」


「出回ってないからだろ」


「え? でもスマホ用なら多く出回って――」


「それ以上言うな。どんなVRか想像がつきそうだ」


「何だかよくわからないけど、私が先に始めていいのかな?」


「ああ。俺はテレビでお前の見てる映像を楽しむことにするよ」


「え!? テレビで私の視界を見れるの!? お兄ちゃん……それが狙いだね」


「すぐに代われ。俺がやる」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



「うわー、すごいすごい! 本当に映像の中にいるみたいだよ!」


「サファリパークの映像か……ヒトミ、首を動かしてみたらどうだ?」


「え? こう? ――わわっ!!」


「VRは自分の動作に合わせて視界も動くんだ。だから、映像の中にいるように脳が錯覚するんだな」


「すごいね~~! これだったら、色んなゲームやってみたくなっちゃうよ!!」


「ゲームは用意されてないのか?」


「なんか間に合わなかったみたいだよ。今度違う機会に用意してくれるって」


「そうだったのか。……しかしあれだな」


「ん?」


「こうしてVRに没頭する光景を見ていると、これはこれで面白いな」


「え!? お兄ちゃん、いま私のこと見てるの?」


「まあな」


「……そんな」


「どうした?」



「VRゴーグル付けたままだと、お兄ちゃんと一生会えないよ!!」



「そこまで深刻じゃないだろ。取ればいい話だ」


「あ、それもそうだね……でも、少し残念だなぁ」


「何が残念なんだよ」


「だって、私はたとえゲームの中だとしても、お兄ちゃんと一緒にいたいんだもん。……あ、今頬を染めてるでしょ? 見てなくても分かるよ」


「染めてない。捏造するな」


「またまたぁ。このコアラさんのように、私の事をじっと見つめてるんでしょ?」


「コアラは映像だぞ」


「……あ、あれ? これ映像? なんか、こっちがリアルになってきてるんだけど」


「よかったな。ゲームに没頭できてるんじゃないか?」


「でもそれだと、こっちの世界がリアルになると、お兄ちゃんがバーチャルってことに……。私はどうすればっ!」


「安心しろ。こっちが正真正銘のリアルだ。……って、どんだけ錯覚してるんだ」







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