『元日の部屋』
元日:あけおめの日。お年玉を貰う側は天国、あげる側は地獄。
「「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」」
「ふう、オーディエンスへの挨拶も済ませたことだし、寝るか」
「また寝るの!? カウントダウンに続いてまた寝るの!? あ、ほらほら、普段は見れない正月特番とかやってるよ?」
「テレビ? 俺はパス。最近のテレビは面白くないし」
「ネット社会の侵略!!」
「ああ、違うぞ。別に動画サイトを眺めるわけでもネット小説を読むわけでもない。ただ単に、俺は元日だけは何もせず、一年で一番寝る日って決めてあるんだよ」
「初めて聞いたよ……十数年一緒に生きてるけど、初耳だよ」
「つまり、俺とお前の絆はその程度ってことだ」
「新年早々に毒吐かないでよ! 私とお兄ちゃんの絆は数値では表せないほどのすごさなんだよ!」
「ふうん」
「せめて起きてリアクションしてよ!! ……もう、私もコタツでゆっくりしよー」
「お、おまえもこっちの世界に来るか?」
「こっちの世界って……」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「あ、そうだ。初詣って行ったことないよね。行ってみる?」
「ZZZ」
「そんなあからさまな漫画効果音出しても、目の前でミカン食べてるの見えてるよ。口でゼットゼットゼットって言いながらミカン食べてるでしょ」
「ちっ、これだから同じ二次元は」
「どういうこと!?」
「しかし、初詣の映像って恐ろしいよな。どうして寒い中、わざわざ神社いかにゃならんのだ」
「完璧インドア派のセリフだね」
「やったな。インドア派歓喜だ」
「……お兄ちゃん、そんなんだからモテないんだよ」
「なんだと?」
「まあ、私にとっては好都合だけどね。お兄ちゃんは誰にも渡さないんだから」
「おい、どうして初詣に行かないとモテないってことになるんだ」
「だって、カップルってそう言うイベントに興味津々でしょ? クリスマスもハロウィンも、お兄ちゃんはインドアを貫いてたし、そんなんじゃ彼女なんてできないよ」
「なん、だと……」
「そこまでショックだったの!?」
「元日早々にやめろ。そんな不吉な話」
「え、不吉じゃないよ。私にとっては最高の展開だもん。だから、ね? さっさと私を選んじゃおうよ」
「初夢は悪夢か」
「そこまで言う?!」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「一つ反論させてもらおう。インドア派だからと言ってモテないとは限らない。同じくインドア派が相手なら、これ以上ない組み合わせだろ」
「元日からどうしてこうなったの?」
「お前が振ってきたんだろ」
「やめやめ。もっとまったりしようよ。ほら、正月特番でも見て」
「寝る」
「ふふっ。妹ルート一直線の選択肢だね」
「不吉なこと言うな」




