『カウントダウンの部屋』
カウントダウン:3,2,1,イエーイ!
『今年も僅かとなりました。それではカウントダウンに参りたいと思います。3600秒からいきますよ! さんぜんろっぴゃくううう!!』
「さんぜんろっぴゃくううう!! ふぅ、これがあと3599回続いたら新年なんだね」
「そうだな。けどこのカウントダウン、常に3600秒前から始めるが、何考えてるんだ? 一時間もカウントダウンしてたら、途中で間違えて羊を数えながら寝る人が続出するだろ」
「それはないと思うけど」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「しかし、カウントダウンって言葉は怖いな」
「そうかな?」
「こんな風に新年が来る前のカウントダウンはいいかもしれないけど、カウントダウンにも色々あるだろ。死へのカウントダウンとか」
「な、なんでそんなこと言うの!? しかもこんな時に!」
「すまん、TPOをわきまえてなかったな」
「そうだよまったく……。あ、ねえねえ。お兄ちゃんは今年の思い出を訊かれたらどうする?」
「今年の思い出か……なんか、色々あり過ぎてほぼ忘れてるな。まあ、健康に過ごせたことが一番だろう」
「あれ、風邪引いてなかった?」
「そうか? 言われて見ればそんな気もするけど。そう言うお前はどうなんだ?」
「ふっふっふ。私にとってはどんな年もお兄ちゃんと一緒ならそれでいいんだよ! お兄ちゃんだけいればそれでいい!」
「……異常なまでの愛情だな」
「まあね」
「褒めてないぞ」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「お兄ちゃん、カウントダウンの時って何してる事が多い?」
「小さい頃は普通に寝てたな。でもまぁ、いつからか起きてる事が多くなって……そうだな。テレビ見ながら蕎麦食べるんじゃないか?」
「アバウト!」
「大体そうだろ。何が悲しくてカウントダウンの時にわざわざサンバ踊る必要があるんだよ」
「そこまで言ってないけど。で、でもでも特別な感じしない?」
「そうか? 俺は最近、起きる必要もないと思ってるけどな」
「え、寝るってこと?」
「そうだ」
「勿体ない感じしない? 他の人は大勢起きてるのに」
「俺、早寝早起きなんだよ」
「知ってるけど、さすがに……」
「自慢できるぞ? 『年越し何してた? 俺は家族と初日の出見に行ったぜ』『俺は寝てたぜ』『すげー!』って」
「ならないよ!! 寝てた事を自慢するお兄ちゃんにドン引きだよ!」
「いや、寝なきゃ死ぬだろ」
「そうだけども!! ……お兄ちゃん、修学旅行とかどうしてたの?」
「もちろん、すぐに寝てたな」
「やっぱり……話とかしないの?」
「しない」
「……ブレないね」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「お、そうこうしてる間に残り数分みたいだな」
「え!?」
「じゃあ、おやすみ」
「ちょ、お兄ちゃん自由過ぎっ!! あ、ああもう、カウントダウン終わっちゃう! ら、来年もよろしくお願いします!!」
「すぅ」
「寝つき良すぎだよ!!」




