『大掃除の部屋』
大掃除:年末行事のひとつ。いつもより気合いを入れた掃除。
「さて、年末といえばこれだな」
「お兄ちゃん、やけにノリノリだね……」
「当り前だ。この一部屋しか掃除しなくていいみたいだが、とことんやるぞ!」
「……とことんって、どの辺まで?」
「時計の裏とか、椅子の下、それにテレビラックの――」
「お兄ちゃん、普段の掃除は怠け癖があるのに……こういう時は積極的だね」
「まあな。決して主夫としてのスキルをアピールして将来働かない為とか……そんな不純な動機じゃないぞ」
「もう言ってるようなもんだよ、それ」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「お兄ちゃん、こっち終わったよ」
「……そうか」
「ワンルームだから描写する間もなく終わったね。同門だけど、魔王の城とかの大掃除は大変そうだなぁ」
「あっちの話はするな」
「えー、年末なんだし特別共演してもいいと思うなぁ」
「次元を捻じ曲げる気か?」
「あ、それと作者のエタった作品の人達とも――」
「その話はやめろ!! 俺達が抹殺されるぞ!!」
「そ、そうなの!?」
「いいか? 作品ってのは作者の気分次第に変わるものなんだ。ここで変なことを口走ってみろ。今は亡き……それこそエタった投稿作品みたいに感想も評価も受け付けず公開停止される可能性もあるんだぞ」
「こ、公開停止されたら生きてる意味ないよ!」
「だから下手なことは言うな。俺達が大掃除されたら最期だ。もうユーザーの目に晒されることもなくなり、作者のPCで安楽死させられる」
「ひいいいいい! ゴミ箱には行きたくないでございますううう!!」
「だろ? だから、思ってなくても作者だけは立てておく必要があるんだ」
「そ、そっか。でもそれだとお題の人はどうするの?」
「あいつはこの際、放っておけ。お題を出すだけなんだからな」
「成程、そうだね」
「いやぁ、作者がいて良かった。最高の作者だ」
「そうだね、お兄ちゃん!」
ひらひら。
「あ、お題の人からの手紙だ」
「そんなの無視しておけ」
「えー、一応読んで……」
「どうした?」
「お題の人が、かなり怒ってるよ。文体がいつもの明朝体じゃなくて行書体になってる」
「どれどれ? ……果たし状みたいだな」
「ど、どうしよう!!」
「落ち着け。今回のお題は大掃除だ。生憎俺達は済ませてしまったが、お題の人の部屋を掃除しに行けばいい」
「あ、その手があったね! よし、どこにいるかわからないけど、どうしようか?」
「……」
「お兄ちゃん? も、もしかして考えてなかったの?」
「ああ。まあ、そういうことにしておけばいいか」
「適当過ぎだよ!!」
「とりあえず土下座だ! こうしておけばいい!」
「誠意の欠片もない土下座には意味ないと思うけど……それに、お兄ちゃん言葉だけでやってないよね」
「言葉で言っておけば描写されたことになるだろ」
「……適当過ぎだよ」
この後、必死に謝った。




