『流行語の部屋』
流行語:流行の言葉。造語もあり。流行れば当てはまるガバガバな基準。
「流行語もクリスマスも終わったし、いよいよ年末って感じだね」
「待て。流行語で一年の終わりを感じ取るのか?」
「お兄ちゃんは違うの?」
「ああ。流行語が発表されたからと言って一年の終わりは感じないな」
「えー、だって一年通しての発表だよ?」
「そもそも、俺は流行って言葉が嫌いなんだよ」
「わ、でた。お兄ちゃんの頑なな流行否定。俺流は今の時代にあってないんじゃないかな?」
「じゃあ訊かせてもらおう。流行してるから何がいいんだ?」
「な、何がいいってことはないと思うけど……ほら、話題についていくには知っておく必要があるんじゃない?」
「はぁ」
「深い溜息……何か違った?」
「あのなぁ、流行ってしようと思えば流行になるんだよ」
「ど、どういうこと?」
「例えば、小さな集落で頭に壺を乗せることが流行るとするだろ? そうしたら、その集落では頭に壺を乗せる行為が流行になるんだ」
「ふむふむ」
「そんな中、一人は頭に壺を乗せずに脇に抱えたとする。それを見て他の人たちも真似をする。そうしたらそれが流行になる。ほらな」
「ほらな。――って、何もわかんないよ!!」
「つまり、どんなことでも流行になり得るってことだ。流行だからと言って優れているわけではなく、それはただの人真似に過ぎない。つまり、流行に乗るという行為はただの真似なんだよ。」
「で、でも、流行語は違うんじゃない?」
「……」
「あ、黙った」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「でもお兄ちゃん、もし私達の発言が流行語を席巻したらどうする?」
「どうもこうも、ありえないだろ」
「いや、もしかしたら――」
「そう話してる時点で、実現することが無いんだよ」
「えー、でもふとした言葉が社会的には流行じゃなくても、周囲では流行することってあるよ? それがSNSとかで使われて拡散し始めたら、現代社会において流行語になることも不可能じゃないよ!」
「そう言われて見ると、そうかもな」
「でしょ? 今の社会ってどことなく自分大好きアピールがはびこってるから、便乗すればいけるよ」
「言い方はどうかと思うが、確かに面白いな。俺達で流行語を考えてみるか」
「……」
「どうした?」
「あ、いや。言っておいてあれなんだけど、流行語を考えてる時点でダサい気がして」
「……言うな」




