『クローズド・サークルの部屋』
クローズド・サークル:隔絶された空間。ミステリーの定番で、必ず事件がおこる。
「お兄ちゃん、私達……この部屋に閉じ込められちゃったみたい!」
「元から閉じ込められてるようなもんだろ」
「……もー、つまんないなぁ。ここは『事件ですね』とか言って立ち上がり、周囲を見渡しながら『クローズド・サークルか……』って呟いてくれなきゃ!」
「拒否する。大体、なんだよそのセリフとキャラ。明らかにそいつがいたせいでクローズド・サークルになるパターンじゃないか」
「推理ものとかミステリーの主人公って、どうしてあんな貧乏神なんだろうね。犯人よりも先にそいつを逮捕すべきだよ」
「歩けば事件、話せば供述、生まれながらの探偵にだけはなりたくないな。サイコな性格になりそうだ」
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「しかしクローズド・サークルか」
「あれだよね、嵐の孤島とか、隔絶された村とか、吹雪の山荘とか、石の並べられた平原とか」
「最後のはミステリーサークルな」
「でもさ、どうしてミステリーによく登場するのかな? 別に閉じ込められなくてもいい気がするんだけど」
「閉じ込められるってことはつまり、そこで事件が起きれば犯人が必ず同様に閉じ込められていることになるんだ。誰も脱出できないってことはつまり、そういうことだろ?」
「あ、そっか。犯人が限定できるんだね」
「そうなる。そしてそれに伴って人の心理状態も抑圧されてくるんだ。疑心暗鬼を生んでしまうのがクローズド・サークルならではの展開になる」
「疑心暗鬼になって、犯人が増えるケースってことだね」
「まあな。現実にそうなった場合に備えて、閉じ込められそうな場所には旅行に行かないことをお勧めしておこう」
「それも必要だけど、周りにホームズとワトソン君がいないことも重要だよね!」
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「うーん、クローズド・サークルの定番と意味は分かったけど、代表作ってどんなものがあるのかな?」
「クリスティの作品だろうな」
「あー、あれだね。うん、あれだあれだ」
「本当に分かってるのか? まあ、この作品もかなりのクローズド・サークルだけどな」
「作品って、最近になって更に二次元の存在であることを認め始めてる気がする」
「例えここで事件が起きても、どちらかが犯人であることは確かだけどな」
「わからないよ? お題の人の犯行かもしれないもん」
「お題の人っていうより、お前の犯行である可能性の方が高い気がする」
「……」
「ん、突っ込まないのか? ヒトミ?」
「ま、少しずつボロが出てもおかしくないもんね」
「は?」
「お兄ちゃん、この世界には知っちゃいけない秘密があるんだよ」
「何言って――」
「今はまだ、駄目なんだよね」
「ヒト――」
「おやすみ、お兄ちゃん」
グサァッッ!!




