『ヒーローの部屋』
ヒーロー:正義の使者。正義のためなら暴力も辞さない。
「ヒーローって、現代の哲学だよな」
「え、そうなの? 日曜朝からそんな番組やってるってこと?」
「子供たちにとってはヒーローだけどな、こうして成長するとどうしても考えてしまうんだよ」
「な、何を考えちゃうの?」
「ヒーローって言っても、暴力で解決してるんだなって」
「……うん、哲学だね」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「でも、そうしないと面白くないからじゃない?」
「正当防衛になればいいけどな。最も恐ろしいのはヒーローと悪役を仕分けてしまうことだと思うんだよ」
「悪役はどうみても悪役だと思うんだけど」
「例えば、子犬を助けるような不良がたまたま悪事を働いたらどう思う?」
「お兄ちゃん、例え子犬を助けようとも悪事を働いた人が悪だよ」
「それじゃあ、貧乏が故に弟の欲しがるお菓子を万引きする兄ならどうだ?」
「……ま、万引きはいけないけど」
「おばあちゃんのために――」
「もういいよ!! 例を挙げれば挙げるだけキリがないよ!! ヒーローって制約多すぎだよ!」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「一つ質問しよう。誰かが犠牲になれば世界が救われると聞いた時、お前は進んで手を挙げられるか?」
「無理だよ!! 死ぬ時はお兄ちゃんと一緒って決まってるもん!!」
「……狂気的だな」
「あ、でもお兄ちゃんも一緒に手を挙げてくれるなら、一緒に犠牲になってもいいよ?」
「お前こそ、真のヒーローかもしれない……いや、俺を巻き添えにしてる時点で、ヒーローじゃないか」
「そもそも、ヒーローの条件厳しくない?」
「まあ、ヒーローだからな」
「でもこう考えると、ヒーローって括りは間違ってる気がするよ」
「どういうことだ?」
「人を助けたらヒーローってことにしようよ! 弱きを助けて強きをくじくのがヒーローでしょ」
「戦ってるだけだろ。飢えに苦しむ人はどうするんだ? 病気の人は?」
「……それもそっか。戦うばかりがヒーローじゃないんだね。お医者さんとかもヒーローってことになるんだ」
「そう。ヒーローってのは目立つ人たちの事じゃないんだよ。普段の生活の中に、身近に存在する当り前を守ってくれてる人がヒーローなのさ」
「お、おぉ……哲学だね」
「けどまぁ、見返りを求めてるから医者はヒーローといえるのか不思議だけどな」
「……お兄ちゃん、話がゼロに戻っちゃうよ」
「俺達はヒーローなんて大きな存在を望むより、身近なところで誰かを思いやることができれば、それでいいんだよ。そうすれば誰だってヒーローになれるさ」
「――! ってことは、お兄ちゃんが私の愛に応えることもヒーロー活動なんじゃない? さあ、早く愛を確かめようよ!」
「遠慮しておく。俺はダークヒーローが好きだから」
「元も子もないよ、お兄ちゃん……」




