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俺と妹のただならぬワンルーム  作者: お題の人(新増レン)
2LDK(51~100)
82/102

『ヒーローの部屋』

 ヒーロー:正義の使者。正義のためなら暴力も辞さない。

 


「ヒーローって、現代の哲学だよな」


「え、そうなの? 日曜朝からそんな番組やってるってこと?」


「子供たちにとってはヒーローだけどな、こうして成長するとどうしても考えてしまうんだよ」


「な、何を考えちゃうの?」


「ヒーローって言っても、暴力で解決してるんだなって」


「……うん、哲学だね」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



「でも、そうしないと面白くないからじゃない?」


「正当防衛になればいいけどな。最も恐ろしいのはヒーローと悪役を仕分けてしまうことだと思うんだよ」


「悪役はどうみても悪役だと思うんだけど」


「例えば、子犬を助けるような不良がたまたま悪事を働いたらどう思う?」


「お兄ちゃん、例え子犬を助けようとも悪事を働いた人が悪だよ」


「それじゃあ、貧乏が故に弟の欲しがるお菓子を万引きする兄ならどうだ?」


「……ま、万引きはいけないけど」


「おばあちゃんのために――」


「もういいよ!! 例を挙げれば挙げるだけキリがないよ!! ヒーローって制約多すぎだよ!」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



「一つ質問しよう。誰かが犠牲になれば世界が救われると聞いた時、お前は進んで手を挙げられるか?」


「無理だよ!! 死ぬ時はお兄ちゃんと一緒って決まってるもん!!」


「……狂気的だな」


「あ、でもお兄ちゃんも一緒に手を挙げてくれるなら、一緒に犠牲になってもいいよ?」


「お前こそ、真のヒーローかもしれない……いや、俺を巻き添えにしてる時点で、ヒーローじゃないか」


「そもそも、ヒーローの条件厳しくない?」


「まあ、ヒーローだからな」


「でもこう考えると、ヒーローって括りは間違ってる気がするよ」


「どういうことだ?」


「人を助けたらヒーローってことにしようよ! 弱きを助けて強きをくじくのがヒーローでしょ」


「戦ってるだけだろ。飢えに苦しむ人はどうするんだ? 病気の人は?」


「……それもそっか。戦うばかりがヒーローじゃないんだね。お医者さんとかもヒーローってことになるんだ」


「そう。ヒーローってのは目立つ人たちの事じゃないんだよ。普段の生活の中に、身近に存在する当り前を守ってくれてる人がヒーローなのさ」


「お、おぉ……哲学だね」


「けどまぁ、見返りを求めてるから医者はヒーローといえるのか不思議だけどな」


「……お兄ちゃん、話がゼロに戻っちゃうよ」


「俺達はヒーローなんて大きな存在を望むより、身近なところで誰かを思いやることができれば、それでいいんだよ。そうすれば誰だってヒーローになれるさ」


「――! ってことは、お兄ちゃんが私の愛に応えることもヒーロー活動なんじゃない? さあ、早く愛を確かめようよ!」


「遠慮しておく。俺はダークヒーローが好きだから」


「元も子もないよ、お兄ちゃん……」






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