表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺と妹のただならぬワンルーム  作者: お題の人(新増レン)
2LDK(51~100)
81/102

『ゼロ和ゲームの部屋』

 ゼロ和ゲーム:ゲーム理論の一つ。複数のプレイヤーの得点の総和がマイナスを含めるとゼロになるゲーム。


「うわ、なんか小難しいお題来たよ」


「そうか? ゼロ和ゲームは経済学用語で、ゲーム理論の一つだな。まぁ、こっちよりもゼロサムゲームっていった方がわかりやすいか」


「……まったくわからないよ! お兄ちゃんは、随分と詳しそうだね」


「博識と呼んでもいいぞ」


「よっ! 博識お兄ちゃん! 結婚して!」


「兄妹間における結婚? それについては――」


「わわ! なんか無駄に博識披露されそう! さ、さっきのお題に戻ろうよ!!」



 ○○○○○○○○



「仕方ないな。ゼロサムゲームって、聞いたことないか?」


「全然ないんだけど」



「いいか? ゲームにも種類があるんだ。例えばチェスとか将棋、オセロなんかがあるだろ? あれはゲーム理論の中では二人ふたり零和(れいわ)有限(ゆうげん)確定(かくてい)完全(かんぜん)情報(じょうほう)ゲームと言って、簡単に言えば偶然に左右されないゲームとして分類されるんだ」



「あ、確かに……途中の単語はよくわからないけど、オセロは運とか関係ないよね」


「そう。二人零和有限確定完全情報ゲームは、二人の間で行われ、運に左右されないゲームということを意味してるんだ。ゼロサムゲームっていうのも、ゲーム理論っていう理論の中でつけられた名称と考えていい」


「そうなんだね。でも、意味がわからないよ?」



「ゼロサムゲームは、複数人で行うゲームを想定すると理解しやすい。参加者は何人でも構わないんだが、参加者の得点と失点の総和(サム=sum)が、必ずゼロになっている。こういったゲームの方式をゼロサムゲームというんだ」



「ゲームの方式の事だったんだね」


「例えるなら、勝ち負けのゲームだろうな。この場合、勝者に賞金が出るとするだろう? 敗者の負け分がマイナス、勝者の勝ち分がプラスと考えて、両者の総和がゼロになる……これがゼロサムゲームだよ」


「実際にゼロサムゲームって存在するのかな?」


「競馬とかはそうみたいだな。それに、勝ったり負けたりするのは賞金が出てなくても言えることだろ? 日々の生活の中にも、何気なく存在しているかもしれないな」



 ○○○○○○○○



「でも、どうしてこんなことを理論にしてるのかな?」


「ゲーム理論はそもそも、ゲームをしようってわけじゃない。意思決定や相互依存的状況について、数学的モデルを用いて研究する学問の事なんだ」


「学問だったの?!」


「ゲーム理論は、結構色んな所で用いられてるんだぞ。経済学、経営学、社会学……挙げるとキリがない程、ゲーム理論って言うのは応用される」


「そうなんだ。じゃあ、私達の日常生活にも?」


「勿論、応用は可能だろうな」


「じゃ、じゃあさ、どんな時に使えるのかな?」


「そうだな……例えば、俺に恋人がいたとするだろう?」


「そんな例え嫌だよ!!」


「まあ聞け。記念日を考えてみて、俺から彼女に贈り物をするとなった場合、俺は選択する必要がある。この意思決定におけるゲーム理論を考察してみよう」


「な、なんか頭が混乱しそう」


「簡単だ。俺は贈り物をしようと考えるが、その時にいくつかのケースを考える必要がある」


「……ケース?」


「俺があげても彼女からはもらえない場合。俺はあげずに彼女がくれる場合。双方渡す場合。双方渡さない場合の4つのケースを考えるとしよう」


「な、なんか複雑だね」


「そんなことないぞ? 表にして考えるとわかりやすい。俺の行動パターンは常にあげる、あげないの二つ。それは彼女も同様だろ? 空白を4つ思い浮かべてみろ」



 (   ) (   )

 (   ) (   )



「えっと、4つの空白を思い浮かべたよ」


「それじゃあ、左上を双方渡すケース。右下を渡さないケースとして、残った四角を片方渡すケースとする」



 俺\彼女  渡す     渡さない

  渡す  (    ) (     )

 渡さない (    ) (     )



「これでどうするの?」



「ゲーム理論では数値を用いて考える。この場合は嬉しいか、そうでないかを数値化してみよう。貰えた場合を1、貰えなかった場合をー1、加えてカップルだからな。自分だけ貰うのは心苦しいだろうから、その場合もー1してみよう。その場合、こうなる」



 俺\彼女  渡す     渡さない

  渡す  (1, 1) (ー1, 0)

 渡さない (0,ー1) (ー1,ー1)



「左がお兄ちゃんの数値、右が彼女さんの数値なんだね。でも、左下と右上は、(1,ー1)(ー1,1)じゃないの?」


「片方のケースは貰った場合、もう一度-1するって決めただろ」


「あ、そうか」


「ああ。これを見て合理的で最適な選択をする場合、どう行動する必要がある?」


「合理的……あ、わかった! 渡さなければいいんだよ!」


「どうしてそう考えたんだ?」


「渡さなかったら相手より嬉しいもん!」


「はぁ……最初に定義しただろ。一人だけ貰った場合は嬉しい反面、心苦しくなるって。それに、カップルなんだから今後の関係に直結するだろ?」


「た、確かに……じゃあどうすればいいの?」


「渡す選択が最善だな。渡さなかった場合、確かにプレゼントを貰えるかもしれないが、もし貰えなかったらどうする?」


「それは……あ!」



「そう。二人ともマイナスになってる。つまり、二人して損をするんだ。そのケースを考えたとき、合理的なカップルだと迷わず『渡す』選択ができて、二人ともプラスとなる」



「そ、そんな合理的なカップルいないと思うけど……」


「けど、ゲーム理論で説明できただろ。これはゲーム理論の基礎みたいなものなんだ」


「た、確かに凄いよ? ……でも、そんな風に考える人、なんかやだよ」


「そうか? 最適な選択をするのは関係の維持に必要だと思うけどな」



 ○○○○○○○○



「ふぅ……久しぶりの勉強会だったね」


「ああ、そうだな。ここまでくるとナッシュ均衡や囚人のジレンマも取り上げてみたいな」


「さ、さすがにこれ以上は……」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ