『美少女ゲームの部屋―告白編②―』
「お、おにいちゃんが動物に?」
「実は俺、魔法の国の妖精だったんだ。ゲームをクリアしないと現実世界に戻れない、みたいな冒険活劇物語じゃないけど、ゲームをクリアしないと俺が元の世界に帰れないんだよ」
「そ、そうなの?」
「だから、この契約書にサインして魔法少女になってくれないか?」
「どういうこと?」
「魔法少女になって、後輩の駒鳥亜里沙との恋を成就させてほしいんだ。幼馴染ヒトミの出現によって揺れ動く主人公を、救ってあげてほしい」
「……わかったよ。だって恋愛にも、魔法や奇跡はあるんだから」
「――とまあ、こんな感じだな」
「急な淡泊だね。あ、本編には魔法も奇跡もありません」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「ヒトミが来たことで、何故か主人公が揺れ始めたな」
「そりゃそうだよ、私の登場だもん」
「同姓同名、異性格だ」
「なんかカッコいいね」
「よくない」
〇〇〇〇〇〇〇〇
『ユウジ:ヒトミ、好きって……どういうことなんだ?』
『ヒトミ:言葉通りの意味だよ。私、ずっとユウジくんの事が好きなの』
『ユウジ:そんな……』
『ヒトミ:最近、後輩の亜里沙ちゃんに構ってばかりだから、もしかしたらって思って。告白する前に、私が告白したかったの』
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「さすがお前の分身、理論が破綻してるぞ」
「頑張れヒトミ! 後輩ツインテールという、お兄ちゃんの抜群ストライクなキャラに負けちゃ駄目だよ!」
〇〇〇〇〇〇〇〇
『ユウジ:ご、ごめん。僕、その……』
『ヒトミ:……謝るのはこっちだよ。ごめん、無理言って』
『ユウジ:ヒトミ……』
『ヒトミ:初恋、なんだよね』
『ユウジ:うん……』
『ヒトミ:頑張って』
ヒトミが涙を溜めながら、笑顔で声援を送ってくるCGと共に、BGMが流れてくる。
ヒトミの歌う、ゆったりとした曲調の温かい歌だ。
『ヒトミ:応援、して……っ、応援してるからね!!』
『ユウジ:――! ありがとう!』
『ヒトミ:うんっ……』
〇〇〇〇〇〇〇〇
「なんか、ちょっとだけじわっときそうだな。音楽といいイラストといい」
「びどみ~~~~」
「隣では号泣してるけど……いよいよ告白か」
「鬼! 悪魔! 最初はヒトミのこと意識してたくせに!! この、たらし!!」
「……」
〇〇〇〇〇〇〇〇
『ユウジ:駒鳥さん……』
『亜里沙:は、はい……』
『ユウジ:好きです。僕と、お付き合いしてください!』
『亜里沙:……わ、私でいいんですか?』
『ユウジ:キミがいいんだ。キミじゃなきゃ、駄目なんだ』
『亜里沙:……! えっとその、よ、喜んでお受けします』
『ユウジ:ほんとっ!?』
『亜里沙:はい……よろしくお願いします、先輩』
〇〇〇〇〇〇〇〇
「おぉ……やった。やったぞ」
「ちっ」
「舌打ちするな。ほら、カップル成立だ」
「……お兄ちゃん、なんかうれしそうだね」
「そりゃあそうだ。これでようやく、この部屋が終われるんだからな」
「……何言ってるの? まだ続くよ」
「え?」
「恋愛ゲームは、付き合ってからが本番なんだから。イチャラブにシリアス、そして感動のエンディングってパターンが王道なんだよ?」
「本気か?」
「マジだよ」
〇〇〇〇〇〇〇〇
『ユウジ:亜里沙って、呼んでもいいかな?』
『亜里沙:もちろんです。ユウジさん……は、恥ずかしいですね』
二人が赤面し、その後ろで拍手をしているヒトミが映ったCGが映し出された。
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そんな二人の頭上から手紙が降ってくる。
「ん? あれ、お題の人から手紙が降ってきたよ」
「今度はなんだ」
「……」
「ヒトミ?」
「このお題、長すぎるから告白成功でクリアとみなすって……」
「嘘だろ? 亜里沙とまだラブいこと一つもしてないぞ」
「ラブいって……。確かに、これからデート編、破局編、再会編、未来編と続くらしいけど」
「破局編って、そんなストーリーあるのか?!」
「とりあえず、そういうことみたいだから、本日は撤収だって。反響が大きかったら再開するかもしれないよ」
「ふざけんな!! 亜里沙のぬいぐるみの秘密もそうだが、何より、一度しか名前で呼んでもらってないぞ!!」
「また次の部屋で会いましょう。ではでは~~」
「勝手に終わるな。あ、おい――!」




