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俺と妹のただならぬワンルーム  作者: お題の人(新増レン)
2LDK(51~100)
76/102

『美少女ゲームの部屋―告白編①―』

 


「隊長、美少女ゲームを御存知ですか?」


「ああ、知っている。可愛いヒロインを落とし、恋愛を楽しむという趣向のゲームだろう。ヒトミ隊員、それがどうした?」


「実は前回、後輩の駒鳥亜里沙への恋に気付いた主人公が、ついに告白へと動き始めるようです」


「成程……夜明けは近いか。総員準備、告白イベントへと直行せよ。ただし、もえぎタイムのデッドエンドだけは避けるべし!!」


「はっ!!」


「以上、前回までのあらすじだ」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



『先生:もうすぐ夏休みだが、もう二年生だ。気を引き締めて、来年の受験に備えるように。では、終わります』


 ホームルームが終わり、先生の残した単語に盛り上がる。


『生徒C:ヒトミちゃん、夏休み楽しみだね』


『ヒトミ:うん。楽しみだよね』


『生徒T:そういえば、また告白断ったんでしょ? 』


『生徒R:え、うそっ』


『生徒T:ほんとほんと、サッカー部のエース先輩を振ったんだよね?』



 〇〇〇〇〇〇〇〇



「モブキャラ多すぎないか?」


「た、確かに……Tの時点で二十人規模になってる。制作サイドは、もえぎよりもモブに力を入れるべきだったような気がするよ」


「しかし、ヒトミが告白を断ってる事が隣の席で話題になっているのに、この主人公は聞き耳立ててずっと座ってるのか?」


「そ、そこは触れないであげてよ。あ、動きがあったみたい」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



『ヒトミ:ふぅ……あ、見られちゃった?』


『ユウジ:大変そうだね』


『ヒトミ:まあね。断る私が悪いんだけど、ちょっとあれで』


『ユウジ:ふうん……何か困ってたら相談してよ。幼馴染なんだから』


『ヒトミ:……うん』


 ヒトミは元気の無いようすのまま教室を出て行く。

 ようし、今日は駒鳥さんに想いを伝えようかな。



 〇〇〇〇〇〇〇〇



「こいつ、最低じゃないか?」


「さ、最低だけども、お兄ちゃんじゃないから大丈夫だよ」


「……選択肢が無いのに最低ってのは、結構つらいな」


「もしかして、お兄ちゃんが変な選択肢を選び続けた結果、この数か月間でゲームの中のユウジは一段とマイナスに成長してしまったんじゃ――」


「さ、放課後だな」


「……」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



『亜里沙:え、明日ですか?』


『ユウジ:そう。明日、放課後時間あるかな? 一緒に行きたい場所があるんだ』


『亜里沙:わ、わかりました』


 そう言って駒鳥さんは抱きかかえる人形を、さらに強く抱きしめた。

 よし、これで準備万端。明日の告白を待つだけだ。



 〇〇〇〇〇〇〇〇



「どうやら腹をくくったらしいな」


「早すぎる気もするけど、駒鳥さんの好感度は高いから、成功するよきっと!」


「だがその前に、関門がある」


「もえぎタイムだね」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



『もえぎ:あ、おにいたん、お帰りなさいだお?』


『ユウジ:ど、どうしたんだ? その話し方』


『もえぎ:えへへ~~。電気街のメイドカフェにいる店員さんを参考にしてみたんだよ? どうかな? 萌え萌えになった?』


『ユウジ:そのワード、かなり久しぶりに聞いた気がするけど……メイド服、似合ってるよ』


『もえぎ:やた。……ご主人様、メイドのもえぎに、命令ください』


『ユウジ:もえぎ?』


『もえぎ:のんのん。ここではメイドのもえぎだよ? お兄ちゃんのメイドとして、ごほーし、してあげる!』


『ユウジ:ご、ご奉仕って……』


 ゴクリ。喉が鳴った。


『もえぎ:さあ、お兄ちゃん? 命令ください、にゃ?』


 ど、どうしたらいいんだ?


 メイドもえぎに、命令しよう。

 ○一緒に風呂に入ろう。

 ○抱き合って眠ろう。

 ○脱げ。



 〇〇〇〇〇〇〇〇



「「……」」


「さ、最後のはさすがに……アウトなやつだよね」


「ああ。だが、もえぎに嫌われる必要がある以上、選ぶしかないだろう」


「ま、待ってよ! もし、もしもだよ? これがもえぎルートのきっかけになったらどうするの? あんな変態奇行妹なら、確実に悶え死ぬ歓喜の選択だよ!?」


「な、なんて説得力のある……さすが同類」


「あんなのと一緒にしないでよ!!」


「だが、物は試しということで」


「あ、ちょっと――!」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



 ○脱げ。


『ユウジ:……脱げ』


『もえぎ:ご主人様……もちろんです!!』


『ユウジ:なっ! と、取り消し! 冗談だから!』


『もえぎ:もえぎの愛、たぁんと召し上がれ。むぎゅうううう!!』


 全裸のもえぎが抱き付いてきて、僕に身体を擦りつけてくる。

 頭が熱くて、何が何だか……。


 ガチャリ。


『 母 :うるさいわね、何して――』


『ユウジ:……』


 あ、死んだ。



 DEAD END。



 〇〇〇〇〇〇〇〇



「社会的に死ぬということか……恐ろしすぎる」


「最強の生殺しだね」


「仕方ない。オートセーブで戻って、最初の選択肢を選んでみるか」


「おっ、今度は何事もなく、もえぎの好感度にも変化なく終わったみたいだよ」


「遂に放課後だな」


「進行が異常なまでに速いけど、気にしない!」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



『ユウジ:あ、あの、駒鳥さん』


『亜里沙:は、はいっ!』


 駒鳥さんと二人、下校の途中で浜辺に立ち寄った。

 夕日をバックに、僕は何度も唇を濡らして、言葉を頭の中で繰り返す。


 出来る。

 大丈夫だ。

 だって僕は誰よりも――。


『ユウジ:駒鳥さん、僕と――』


 そう言い出す瞬間、砂浜に足音が響いた。


『ヒトミ:その告白、ストップ!!』


『ユウジ:ひ、ヒトミ!?』


『亜里沙:どういう……』


『ヒトミ:ユウジくん、私、その……』


 ヒトミはモジモジとしながら、こちらを見て来た。

 顔は夕焼けのせいでオレンジ色に見えたが、きっと赤かっただろう。


『ヒトミ:私も、ユウジくんの事、大好きなのっ!!』


『ユウジ:……!』


『亜里沙:先輩……』



 〇〇〇〇〇〇〇〇



「……なんだ、これ」


「まさかの、幼馴染乱入だね。おっと、続きは次回だよ!」


「また延長か」


「ふっふっふ。まだまだ続くよ、長寿アニメの様に」


「老後の恋愛まで描く気かよ」



 告白編②へ続く。






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