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俺と妹のただならぬワンルーム  作者: お題の人(新増レン)
2LDK(51~100)
75/102

『美少女ゲームの部屋―ドキドキ編②―』

 


「美少女ゲームでヒロインを攻略しないと終わらない――」


「さすがに長いあらすじは飽き飽きだろう」


「えぇ……じゃあどうするの?」


「シンプルに考えることこそ、成功の第一歩だ」


「おぉ、説得力あるね」


「では、こほん。後輩に狙いを定めたユウジであったが、ヤンデレな妹と化したもえぎに殺された。しかし俺達にはオートセーブがある。翼がある」


「端折り過ぎだよ! く、詳しくは前の部屋に戻ってください!!」


 ゲーム再開。



 〇〇〇〇〇〇〇〇



「まあしかし、オートセーブ機能があって助かった」


「究極の保険だね。いっそのこと、私達でオートセーブ保険を作ってみる?」


「オートセーブ保険に加入すると、どうなるんだ?」


「オートセーブされるんだよ。そして使う度に、過ちを犯す手前に戻れるの」


「現実にあったら、加入者が殺到するタイムリープ保険になりそうだな。けど保険というからには加入者には何かを納めてもらうんだろ? オートセーブ保険には、何を納めるんだ?」


「そうだなぁ、時間かな。戻れるんだし」


「命を削ってセーブするってことか……魅力的だが、代償が恐ろしいな」


「人生、簡単に元に戻れるなんて思ったら大間違い。ってことだよ」


「とりあえず、ゲームでのオートセーブは代償が無いから、ぱぱっと再開するか」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



『もえぎ:ふうん。そうだお兄ちゃん、明日って暇かな?』


『ユウジ:どうしたんだ?』


『もえぎ:たまには、一緒にショッピングしたいなって。駄目?』


 もえぎの上目づかいCGが投入された。


『ユウジ:……そうだなぁ』


 どうしよう?

 ○断る。

 ○一緒にショッピング。

 ○そんなことよりもディスコ。



「断っちゃいけないってことは、一緒に行くのか?」


「きっとそうだと思うけど……最後の気になるね」


「よし」



 ○そんなことよりもディスコ。



『ユウジ:もえぎ、そんなことより今宵はパーリナイだぜ!』


『もえぎ:え……お兄ちゃんどしたの?』


『ユウジ:ふううううううううううううううう!』


『もえぎ:うぎゃああ! ま、ママ! お兄ちゃんが壊れてバブリーになっちゃったよ!』


『ユウジ:(よし、これで妹からの尊敬を犠牲にして、どうにか駒鳥さんとの約束を守れそうだ)』



 〇〇〇〇〇〇〇〇



「まさかの正解だったね……狂気過ぎるよ」


「もしや、こうやって妹の好感度を下げていかないと、各ヒロインのルートにはたどり着けないという高難易度の恋愛ゲームなのかもな」


「開発者の悪意が滲み出てる……そして同時に、異常過ぎる妹愛も炸裂してる……お兄ちゃん、是非とも私達も、こんな風に異常なまでの兄弟愛を――」


「お、駒鳥さんが家に来たみたいだ」


「ふふっ、無視も慣れると快感だね」


「(俺の妹が、ヤバい方向に目覚めようとしている。……これ、ラノベのタイトルみたいだな)」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



『亜里沙:おじゃましまーす』


『ユウジ:僕の部屋二階だから、こっちだよ』


『亜里沙:あ、はい』


 緊張する……これから駒鳥さんと、あんなことをしようと考えてるなんて。



「こいつ、変態なんじゃないか?」


「お兄ちゃんの選択肢のせいだよ。詳しくはドキドキ編①を参考にしてね」


「誰に言ってるんだ?」


「オーディエンスへのサービスだよ」


「ふうん。お、展開があったな……って、どうしてこうなったんだ」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



 画面には亜里沙とユウジが抱き合うようにこけてしまい、ユウジが彼女の身体を身体全体で受け止めているCGが表示されている。


『ユウジ:だ、大丈夫?』


『亜里沙:すみません、先輩……あ』


 駒鳥さんの手から、いつも抱いている人形が落ちた。

 それを僕が拾うと、駒鳥さんは奪うようにそれを引き寄せる。


『亜里沙:か、返してください!』


『ユウジ:え、あ、うん』


『亜里沙:……! す、すみません。条件反射で、先輩に……』


『ユウジ:気にしてないよ? それよりも、立てる?』


『亜里沙:はい……その、ありがとうございます』


 駒鳥さんがぺこりと謝って来た。



 〇〇〇〇〇〇〇〇



「ここは是非、お辞儀と共に揺れるツインテールのCGもしくはアニメーションが欲しいな」


「そんなマニアックな注文、受け入れられないと思うよ」


「なんだと?」


「あれ? なんか、主人公のお兄ちゃんが――」


「え?」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



 ちゅっちゅしようとか考えてたけど……やっぱり駄目だよな。

 駒鳥さんを怖がらせちゃうし、何より僕は……彼女の事が好きだから。

 傷つけたくない。

 もっと純粋に、好きでいたかった。


『亜里沙:先輩? アニメ始まりますよ?』


 僕の部屋のテレビの前で、小首を傾げる駒鳥さん(CGあり)。

 人形を抱いているけれど、彼女が人形のように見えてしまう。

 華奢で儚げな少女。僕はいつの間にか彼女を好きになり、護ってあげたくなっていた。

 先程、咄嗟に彼女が転んだのを大袈裟に庇ったのも、その表れだろう。


 決めた。

 僕は彼女に告白しよう。

 ……でも、タイミングはどうしよう。


 告白はいつするべき?

 ○今日ここで。

 ○もう少しお互いを知ってから。

 ○信じて待ってみる。



 〇〇〇〇〇〇〇〇



「お兄ちゃん、まさかの重要な選択肢だよ」


「そ、そうだな……ふ、ふふっ、余裕だ」


「声も手もブルブルだよ!! 最後のは論外だけど、二つとも微妙だよね」


「……まだ早い気がする。それに、ここには奴がいるからな」


「――っ! もえぎ!!」


「そうだ。奴に聞かれるのはマズい。そのためにも――」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



 ○もう少しお互いを知ってから。



 そうだ。焦る必要はない。

 もう少し、お互いの距離をつめてからにしよう。

 こうして、楽しい駒鳥さんとの休日を終えた。



「終わったね、大きなイベント」


「なんとか、首の皮が繋がった感じだな」


「いよいよ告白かぁ……あれ、いつの間にか私、お兄ちゃんを応援してる。やっぱり、私はお兄ちゃん一筋ってことだね!」


「妙なアピールはよせ。途中で何度もヒトミやもえぎをプッシュしたじゃないか」


「なんのことかな?」


「……とりあえず、決戦は近そうだ。敵になるであろう他の勢力を見ておこう」


「これ、恋愛ゲームだよね?」


「そうだ」



 現在の好感度。

 ヒトミ……レベル30。

 亜里沙……レベル37。

  雫 ……レベル22。

 もえぎ……レベル28。



「おや?」


「なんか、均等で上がってるね……何故?」


「か、関係ないだろ。駒鳥さん一筋を貫くべし!!」


「嫌な予感がするー」



 告白編へ続く。





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