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俺と妹のただならぬワンルーム  作者: お題の人(新増レン)
2LDK(51~100)
74/102

『美少女ゲームの部屋―ドキドキ編①―』

 


「美少女ゲームでヒロインを攻略しないと終わらない部屋。

 そこで私とお兄ちゃんは、大人気美少女ゲーム『初恋はじめました。リメイク版(略して、はつはじ)』をプレイすることになって、主人公をユウジ。幼馴染のヒロインをヒトミって名前にしたんだよね」


「そうだ。後輩の駒鳥亜里沙、先輩の望月雫の二人のヒロインと、強烈な妹キャラもえぎの出現。そして混沌となっていく学園生活の中で、俺の見つける答えとは――」


「なんか、聖杯うんたらみたいな壮大な言い方だけど、実際はお兄ちゃんの狙う後輩ヒロイン、ツインテールキャラの亜里沙の攻略が順調なんだよね」


「そしてついに刃が――」


「交わりません。続きをどうぞ」


「血が……血が足りないなぁッッ!!」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



「ようやく駒鳥さんを射程圏内に捉えた感じだな」


「お兄ちゃん、露骨に駒鳥さんのイベントばかり選んでるけど、他のヒロインはどうするの?」


「は? 俺は決めたものに一途に生きる人間なんだ。大体、駒鳥さん以外のヒロインとイベントを起こせば、彼女の好感度が下がるだろう?」


「でも、ゲームはそう簡単じゃないみたいだね」


「え?」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



『ヒトミ:むぅ』


 学校に来ると、隣の席のヒトミが頬を膨らませてこちらを見ていた。


『ユウジ:ど、どうしたの?』


『ヒトミ:最近、冷たくない?』


『ユウジ:そんなことないと思うけどなぁ』


『ヒトミ:じゃあ、放課後一緒に帰ってくれる?』



 〇〇〇〇〇〇〇〇



「おい、邪魔するな。放課後は駒鳥さんとアニメ談義をする方がいいに決まってるだろ」


「わ、私だけど私じゃないよ! ゲームの中の幼馴染系メインヒロインだよ! えっと、ちょっと待って。調べてみるよ」


「……」


「えっとね、メインヒロインはもえぎの次に厄介なキャラクターみたいだね。元から主人公に淡い恋心を抱いてるせいもあって、たまにヤキモチを焼いてくるみたい」


「元から……? 始業式にはそんな素振りなかった気がするけどな」


「女の子は複雑なんだよ。でも、今回は一緒に帰るしかなさそうだね」


「……はぁ」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



『ヒトミ:ユウジくん、一緒に帰ろっ』

『ユウジ:うん。いいよ』


『ヒトミ:ユウジくん、今日も帰ろうよ』

『ユウジ:そ、そうだね』


『ヒトミ:ユウジくん、もちろん今日もだよね?』

『ユウジ:あはは』



 〇〇〇〇〇〇〇〇



「なんで断る選択肢が出てこないんだよ! これまでは散々選択させてきただろうに!」


「確かに、このままじゃマズいよ。好感度チェックしてみないと」


「……なっ」


「あちゃー」


 現在の好感度。

 ヒトミ……レベル27。

 亜里沙……レベル21。

  雫 ……レベル14。

 もえぎ……レベル40。


「株価暴騰だね」


「嬉しくねぇ……」


「あ、そうだ。折角番号交換したんだから、連絡してみたらどうかな?」


「その手があったか。天才か、お前は」


「(……単に、お兄ちゃんの女性経験が皆無だから、方法に行きつかないだけだよ)」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



『ユウジ:そういえば最近、駒鳥さんと話してないな。よし、休日に会えないか誘ってみよう』


 僕はこないだ知った番号に、メッセージを飛ばす。

 すると、数分後に返事が来た。


『亜里沙:『もちろん、大丈夫だよ。休みの日に家に行くね』』


『ユウジ:よおし、これで駒鳥さんと遊べるぞ』



「すごいなこいつ、いきなり家に誘い出したぞ」


「選択肢あるかと思ったんだけど、なかったね……おりょ?」



 駒鳥さんを家に呼んで、何をしよう?

 ○一緒にアニメ映画を観賞する。そのあと感想を言い合う。

 ○アニメ談義。最近の傾向と特徴について、ネットのような議論を展開する。

 ○ちゅっちゅする(希望)。



「お兄ちゃん! ここは慎重に選ぼう! 初デートで三番の選択肢を選ぶなんて、最低ゲス野郎のすることだよ! しかもまだ付き合ってないし!!」


「そ、そうだよな。おのれ右親指!」



 ○ちゅっちゅする(希望)。



「右親指イイイイ!」


「お兄ちゃんの意思だよ。それは確実に、お兄ちゃんの指だよ。……あ、お兄ちゃん。もえぎタイムの時間みたいだよ」


「説明しよう。もえぎタイムとは――」


「そういうのいいから。もえぎちゃん待ってる」


「お前は、相変わらずの妹押しなのか……最初はあんなに罵倒していたくせに」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



『もえぎ:お兄ちゃん、携帯電話握りしめて何してんの?』


『ユウジ:も、もえぎ?! 何でもないぞ!』


『もえぎ:ふうん。そうだお兄ちゃん、明日って暇かな?』


『ユウジ:どうしたんだ?』


『もえぎ:たまには、一緒にショッピングしたいなって。駄目?』


 もえぎの上目づかいCGが投入された。


『ユウジ:……そうだなぁ』


 どうしよう?

 ○断る。

 ○一緒にショッピング。

 ○そんなことよりもディスコ。



「なんか、このゲームって押したくなる選択肢多くない?」


「何言ってんだ。一択だろ」



 ○断る。



『ユウジ:ごめん、明日は予定があるんだ』


『もえぎ:予定? もしかして、彼女が出来たとか?』


『ユウジ:か、彼女ってわけじゃないけど』


『もえぎ:ふうん。へぇ』


『ユウジ:もえぎ? どうしたんだ?』


『もえぎ:何でもないよ? うん、何でもないから……』


 もえぎは不気味な笑顔を浮かべたまま、部屋を出て行った。

 僕はこの時、明日の惨劇を知るはずもなかった。



 DEAD END。



 真っ赤なアルファベットが黒の画面に出現した。



 〇〇〇〇〇〇〇〇



「……なんだこれ」


「ちょ、ちょっと待ってね。……えっと、攻略サイトによると、もえぎタイムで選択肢を誤った場合、状況によってはデッドエンドに直行します。

 特に他のヒロインとの進展がバレてはいけません。なぜなら、もえぎは初期状態から兄を愛しているからです。――って書いてあるよ」


「……まさか、ヤンデレ妹に死ぬほど愛される要素があるとはな。盛り込み過ぎだろ」


「キミも、もえぎたんと一緒にドキドキの青春を送ろう。だって」


「心臓に悪すぎる! そっちのドキドキはいらん!」


「あ、そういえばお兄ちゃん、セーブしてあるの?」


「安心しろ。このゲームはオートセーブ機能がある。選択肢の前でセーブされているはずだ」


「おぉ、さすがだね。デッドエンドを見越してるね」


「さて、もえぎの選択肢に戻るか」



 ゲーム再開。

 ドキドキ編②へ続く。






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