『美少女ゲームの部屋―初恋編②―』
「美少女ゲームでヒロインを攻略しないと終わらない部屋。
そこで私とお兄ちゃんは、大人気美少女ゲーム『初恋はじめました。リメイク版(略して、はつはじ)』をプレイすることになって、主人公をユウジ。幼馴染のヒロインをヒトミって名前にしたんだよね」
「そうだな。それで後輩の駒鳥亜里沙、先輩の望月雫との出会いを果たし、ようやく恋が始まろうというわけだ」
「お兄ちゃんは後輩の亜里沙ちゃんと仲良くしたいんだけど、全方向から刺客が現れて、なかなか意中の相手の好感度が上がらないの。そして迫りくる『もえぎタイム』」
「その続きとなる」
〇〇〇〇〇〇〇〇
『ユウジ:もうすぐ定期試験だ……勉強しないと』
「ついにゲームの中でも勉強シーンがやって来たね」
「授業風景は一切ないのに、唐突だったな。ん? 選択肢が来た」
誰を勉強相手に誘う?
○ヒトミと一緒に気兼ねなく勉強しよう。
○駒鳥さんに教えてあげながら、自分も勉強しよう。
○望月さんにしっかりと教えてもらおう。
○妹とイチャイチャしながら朝まで勉強だぜ。
「これは迷わず四番目だね」
「迷わず二番だ」
「ええー。もう亜里沙ちゃんは諦めようよ。この際だから、もえぎちゃんでもいいよ? ってか、もえぎちゃんがいい! 妹だし、絡みが多いせいかダントツで落としたい!」
「お前も、はつはじの戦略に落とし込まれてるみたいだな」
○駒鳥さんに教えてあげながら、自分も勉強しよう。
『そうだな、最近、駒鳥さんと話せないし……うん、これをキッカケに話せるようになりたい。よし、連絡してみよう……あっ、連絡先知らないんだった。どうしよう』
「こいつはアホか。関係ない会話ばかりしてるから、まだ発展すらしてないんだぞ」
「せ、選択肢を選んでるのは、お兄ちゃんだよ?」
「……お、ユウジは一年の教室に向かうみたいだな。中々に見どころのある行動力だ」
「お兄ちゃん……」
〇〇〇〇〇〇〇〇
『ユウジ:あ、あの、駒鳥さんいるかな?』
『生徒B:はい。駒鳥さんならあちらに、お呼びしましょうか?』
『ユウジ:お願いできる?』
『生徒B:大丈夫ですよ? 少々お待ちください』
なんか、後輩とは思えない……まるで一流企業の受付嬢みたいな対応だ。
『亜里沙:え、えっと、お待たせしました』
『ユウジ:こ、駒鳥さん。ちょっと時間あるかな?』
『亜里沙:だ、大丈夫です。まだ帰る時間ではないので』
『ユウジ:そっか……中庭で話そうか』
『亜里沙:わ、わかりました』
〇〇〇〇〇〇〇〇
「なんか、割とスムーズに会話できるようになってるな」
「……」
「どうした?」
「もしかして亜里沙ちゃん、照れてる?」
「は? ここ最近、全くイベントのなかったヒロインだぞ? こないだも追いかけそびれたし」
「つ、続き見てみようよ」
「……」
〇〇〇〇〇〇〇〇
中庭に来てみた。放課後ということもあって、生徒もまばらだ。
『ユウジ:ここでいいかな。あの、さ……実は――』
『亜里沙:申し訳ございません!』
ビシュ!
『ユウジ:うわああ!』
駒鳥さんのツインテールが暴れて、襲い掛かって来た。
間一髪で避けることができたけど、危なかったぁ。
『亜里沙:あ、えっと、重ねて申し訳ありません。先輩……』
『ユウジ:だ、大丈夫だよ。それに、最初の謝罪はよくわからないんだけど』
『亜里沙:それは――ここ最近、その、先輩を避けるようにしてしまったから……』
『ユウジ:あ、そういえば――』
『亜里沙:先輩とアニメの話をするようになって、初めてそう言うお友達が出来て嬉しかったんです』
『亜里沙:でも、先輩の趣味とわたしの趣味が若干違ったので、先輩が仲良くしてるヒトミ先輩に、先輩の好みを聞いたんです』
『ユウジ:えぇ!?』
『亜里沙:そ、それで研究を重ねて、今なら先輩と同じ土俵に上がれます!』
『ユウジ:そ、そうだったんだ……』
嫌われてなくて、よかったぁ。
〇〇〇〇〇〇〇〇
「本当によかった……」
「お兄ちゃん、ゲームと現実がリンクしてるよ。戻ってきて!」
「ヒトミ、俺はようやく分かったよ」
「な、なにを?」
「俺、やっぱりツインテールじゃなきゃ愛せない。駒鳥さんに、初恋を奪われてしまったみたいだ」
「んなっ――!」
〇〇〇〇〇〇〇〇
『亜里沙:ふう、なんだか胸のつっかえが無くなりました』
『ユウジ:僕もだよ、嫌われてなくてよかった』
『亜里沙:先輩を嫌うなんて、ありえませんよ。だって、大切な人ですもん!』
『ユウジ:――!?』
ドキッ!
笑う駒鳥さんを見て、心臓が高鳴った。
今のは、何だ?
〇〇〇〇〇〇〇〇
「この気持ち、なんだ?」
「恋だよ! 二人揃ってなにしてんの!」
「すまん。役に入り込み過ぎるタイプなんだ」
「そういう問題なの?」
「とりあえず、これで好感度は回復するだろうな。よかった」
「……なんか、こんなに生き生きとしたお兄ちゃんを見られるのは嬉しいけど、別の子に対しての高揚で……心中がとても複雑だよ」
〇〇〇〇〇〇〇〇
『亜里沙:そういえば……これから窺おうと思っていたのに、どうして先輩が教室に?』
『ユウジ:あ、そうだ。今度の定期試験、一緒に勉強したいなって』
『亜里沙:いいんですか? 先輩に教われるなら歓迎ですけど』
『ユウジ:いいもなにも、そのつもりだよ!』
『亜里沙:先輩……! い、いや、先生! お願いします!』
『ユウジ:任されよう! ははっ』
『亜里沙:えへへっ』
こうして僕は、後輩の駒鳥さんと試験勉強をすることになった。
『亜里沙:あ、アドレス交換しておきましょう?』
駒鳥さんのアドレスを手に入れた。
〇〇〇〇〇〇〇〇
「着実と進んでる……」
「出来る、これなら駒鳥さんを彼女に出来るぞ!」
「……次回もお楽しみに」
現在の好感度。
ヒトミ……レベル10。
亜里沙……レベル20。
雫 ……レベル13。
もえぎ……レベル45。
ドキドキ編へ続く。




