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俺と妹のただならぬワンルーム  作者: お題の人(新増レン)
2LDK(51~100)
72/102

『美少女ゲームの部屋―初恋編①―』

 


「美少女ゲームでヒロインを攻略しないと終わらない部屋。

 そこで私とお兄ちゃんは、大人気美少女ゲーム『初恋はじめました。リメイク版(略して、はつはじ)』をプレイすることになって、主人公をユウジ。幼馴染のヒロインをヒトミって名前にしたんだよね」


「そうだな。それで後輩の駒鳥亜里沙、先輩の望月雫との出会いを果たし、ようやく恋が始まろうというわけだ」


「以上、あらすじでした」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



「いい感じに進んでるね、お兄ちゃん」


「ああ。行程はすっ飛ばしてるものの、着実に放課後イベントをこなしてるぞ」


「ん~~、でも攻略対象はまだ決まってないの?」


「俺は駒鳥さん一択なんだけど、選択肢が上手くいってなくてな」



『ユウジ:駒鳥さん、今から帰るの?』


『亜里沙:……』


 スタスタスタ。


 駒鳥さん、僕、何か悪いことしたかな?



「完璧に嫌われてるよ、これ」


「俺が何したっていうんだ……」


「散々やったでしょ。ほっぺた触ったり」


「……好感度チェックでも、駒鳥亜里沙のレベルが上がりにくいと思うんだが」


「そう言われてみると……」



 現在の好感度。

 ヒトミ……レベル5。

 亜里沙……レベル10。

  雫 ……レベル14。

 もえぎ……レベル43。



「相変わらずの、もえぎ無双になってるな」


「――と言ってる間に、家に帰ってからの通称『もえぎタイム』に突入してるよ」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



『もえぎ:お兄ちゃん、宿題でわからない所があるんだけど、教えてくれないかな?』


『ユウジ:ああ、いいぞ。どれどれ? 意外だな、この教科苦手なのか?』


『もえぎ:そうなんだよ~。てへり』



 もえぎの苦手科目はなんでしょう?

 ○物理

 ○英語

 ○美術



「知らん……そういえば、お前の不得意科目はなんだ?」


「私は家庭科だよ」


「ないな……こういう妹は、英語とかにしておくか」



 ○英語



『もえぎ:でもね、英語できるようになって、お兄ちゃんと海外旅行したいの』


『ユウジ:もえぎ……』


『もえぎ:そ、その時は、えっと、一緒に行ってくれる、かな?』


『ユウジ:もちろんだ!』


『もえぎ:お兄ちゃん大好き!』



「終わったか……もえぎタイム。しかし、こういう妹がいたら嬉しいとは思うだろうな」


「ここに関しては、完璧に趣味だよね……。

 ちなみにこの『もえぎタイム』では、選択肢によって妹もえぎの見えないステータスが変化していき、もえぎの育成にも繋がってるんだよね。

 なんという究極の妹ゲー。しかも毎日のように……もえぎタイムがあるという修羅」


「それさっき聞いたぞ」


「いわゆるサービス精神だよ」


「意味わからん。とにかく、明日も後輩一択で挑む」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



『ユウジ:お、ヒトミだ。そう言えば最近、話してないな。おーいヒトミ』



「あれ?」


「お兄ちゃん、ついに妹ルートを選択したんだね!」


「ややこしいな。こっちでは幼馴染のお前だろ」


「そ、そうだった……でも待って。こっちだと血の繋がりもないし、正式に結婚できるってことだよね。はっはっは! もえぎ、私の勝ちだよ!」


「……ちなみに、もえぎは都合のいい義妹設定らしいぞ」


「義妹でも駄目でしょ!」


「お前が言うと、すごく新鮮だな。とにかく、間違ってヒトミを選択し……あれ?」


「どったの?」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



『ユウジ:――!』


『ヒトミ:あ、ユウジくん。今から帰るの?』


『ユウジ:そ、そうだけど……どうして駒鳥さんが?』


『ヒトミ:あれ? ユウジくん、いつのまに亜里沙ちゃんと仲良くなったの?』


 ヒトミの言葉の後に、亜里沙の立ち絵が出てくる。


『ヒトミ:私、亜里沙ちゃんに話しかけられて、それから仲良くしてるんだよ?』


『ユウジ:は、話しかけてって……駒鳥さん、どういうこと?』


『亜里沙:そ、その……すみません、先輩っ!』


『ユウジ:あ、ちょっと!』



「なんか、熱い展開になってきてるね」


「ヒトミを間違えて選んだんだけど、これってもしかして追っかけろってパターンか?」



『ヒトミ:ユウジくん』


『ユウジ:……!』


『ヒトミ:追わなくて、いいの?』


『ユウジ:僕は――』



 どうする?

 ○追いかけるしかない。

 ○クラウチングスタートの体制を取る。

 ○ヒトミと下校する。



「なんか、明らかに誘導されてる気がする」


「お兄ちゃん、どれにするの?」


「これだ――」



 ○クラウチングスタートの体制を取る。



『ヒトミ:ユウジくん?! 急にどうしたの?』


『ユウジ:僕、陸上部だから……こうしないと気が済まなくて』


『ヒトミ:ユウジくん……帰宅部だよね?』


『ユウジ:ばれたか』


『ヒトミ:もう! 笑わせないでよ!』


『ユウジ:か、帰ろっか』


『ヒトミ:うん。久しぶりね、二人で帰るのって。小学校以来かな?』


『ユウジ:そ、そうだね』


 こうして僕は、ヒトミと下校した。


 駒鳥さんを追いかけるべきだったけど、陸上部じゃない僕には無理だ。



 〇〇〇〇〇〇〇〇



「お兄ちゃん、やっちゃったね」


「なんだよこれ」


「きっとあれだよ。陸上部に所属していた場合は、二番でも追いかけるんだよきっと。でも、そうじゃないからジョークを言うだけの展開になったんだね」


「最悪だな、ユウジ。というより、部活勧誘イベントを無視した俺の責任か」


「お兄ちゃんは悪じゃないよ! 悪いのはこの状況で笑って――って、それじゃあ私ってことになっちゃう!」


「「……」」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



 駒鳥さん……。


『ユウジ:明日、話せるかな』



「ま、まだチャンスはありそうだな」


「そうだね。ネバーギブアップだよ!」



『もえぎ:お兄ちゃん、今日は一緒にお風呂に入らない?』


『ユウジ:な、何言ってるんだよ!』


『もえぎ:き、昨日のお礼だよ』


『ユウジ:そ、そんな……』



 どうすればいいんだ。

 ○兄妹だから大丈夫だぜ。

 ○もえぎにグヘヘヘへ。

 ○水着を着用しよう。



「全部入浴の選択肢じゃねえか」


「きっと、入り方で兄としてのレベルが測られてしまうんだよ……恐るべし、もえぎタイム。ちなみに、私が相手だと仮定してみたら――」


「もえぎの方を取る」


「まさかの義妹! もえぎは所詮、イラストなんだよ!」


「馬鹿言え。お前よりもよっぽど、妹らしいと思うぞ」


「なんと……がくり」


「はぁ、とりあえず三番にしておくか」



 こうして、もえぎのやけに気合いの入った美麗なお風呂シーンのCGを堪能した後、好感度が表示された。


 現在の好感度。

 ヒトミ……レベル12。

 亜里沙……レベル7。

  雫 ……レベル12。

 もえぎ……レベル47。



「……下がってる」


「あ、明日があるよ、お兄ちゃん!」


「絶対に……絶対に亜里沙のルートに入って、後輩彼女とラブを追い求めてやる!」


「あ、愛が深い……その愛が、ほしい!」


 彼の初恋は、まだ実りそうになかった。



 初恋編②へ続く。





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