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俺と妹のただならぬワンルーム  作者: お題の人(新増レン)
2LDK(51~100)
70/102

『美少女ゲームの部屋―出会い編①―』

 


「なんか、前回の部屋と連動してるね」


「お題の人は、愛に飢えてるのか?」



「とりあえず、今回は大型テレビとゲーム機が用意されてるみたいだよ。美少女ゲーム……つまり恋愛ゲームでヒロインを落とすまで終われない部屋なんだって」



「最早、罰ゲームだな」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



「そいじゃ、やってみようよ。もちろんプレイヤーはお兄ちゃんだよね」


「主人公が男だからって、俺じゃなくても――」


「いいからいいから。えっと、作品名は『初恋はじめました。リメイク版』だって」


「なんだよその、冷やし中華のノリ」


「うわっ、お兄ちゃん……このゲーム、CEROがD(対象年齢17歳以上)だよ、お色気シーン過多なのかな。お兄ちゃんの教育に悪いよ」


「俺は何歳児なんだ。条件はクリアしてるから大丈夫だ」




「えっとね、レビューとか見てみると――


『神ゲー、降臨』

『後輩の亜里沙ちゃんルート、すっごくよかった。感動した』

『幼馴染が欲しいと思いました』

『生徒会長の望月さんが可愛いです。天然すぎます』

『妹ちゃん、はぁはぁ』

『妹のもえぎたん、マジ天使』

『もえぎたん、結婚してください』

『もえぎたんと暮らせるなら、全人類を敵に回してもいいレベル』

『もえぎたん、私の初恋を返してください』

『もえ、もえ、もえぎたん。M・O・E・G・I! MOEGI!』


 ――すごいよ、かなりの高評価みたい! 美少女ゲームの革命的存在なんだって」




「後半のコメントは偏り過ぎてる気がしたけどな……まあいいか。ヒロインを一人、陥落させればいいんだろ?」


「陥落って……落とすんだよ、恋に。城じゃないんだから。でもまぁ、お兄ちゃんは既に私というヒロインのルートに乗ってるから、難しいかもしれないけどね」


「よし、始めるか」


「無視しないでよ!」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



 画面に可愛らしいキャラクターが現れた。

『あなたの名前を教えてね?』



「しゃ、喋ったぞ。ボイス有りなのか?」


「有名な人気声優さんを使ってるみたいだね。とりあえず、お兄ちゃんの名前を入力してみようよ」


「そうだな」



『美少女:ユウジくんっていうんだね』



「……なんか、本当に呼ばれてるみたいで気恥ずかしいな」


「お兄ちゃんが、画面の美少女に照れてる……これはこれでレアだけど、なんか悔しい」



『美少女:ねえ、ユウジくん。私の名前、憶えてる?』



「は?」


 幼馴染の名前を入力してください。



「お兄ちゃん、幼馴染だって。……えっとね、この作品では幼馴染のキャラクターがメインヒロインで、名前と誕生日を好きなように入力できるみたいだよ」



「幼馴染がいない場合はどうするんだ?」


「それは……妄想?」


「悲しいな、それ。まあ、大体が幼馴染なんていないだろうけど」



「そういうゲームだよ。と、とりあえずヒトミにしようよ! そうすれば私と始まる恋の物語だよ! いやっふう!」



「まあ、他に付ける名前もないから、それにしておくか」


「(よし。これでお兄ちゃんとの恋愛が……)くひひひ」


「笑い方、キモいぞ」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



「とりあえず、始業式を終えたな」


「ゲームだと、始業式の緊張感も気怠さも感じなかったね。描写が一切ないし」


「校長には登場してほしかったな」


「それだけはやめてほしいよ。校長の話だけでストーリー進まなかったら、シナリオライターが炎上するよ、確実に」


「だろうな」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



『ユウジ:(今日からこの学園で、僕の二年目の学生生活が始まるんだな)』



「おい、俺が急に一人称を僕にして語り始めたぞ」


「これはモノローグだよ。つまり心の声だね」


「心の声って……始業式が終わって、こんなこと呟くか? だるいってのが大半だろ」


「お兄ちゃん、そういう腐った思考は良くないよ。純粋にゲームを楽しもうよ」


「……納得いかんな」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



『先生:それでは、クラス替えもあったため、自己紹介をしてもらう。窓際の者から一人ずつ頼むぞ』


『生徒A:えぇと、私の名前は――』


『ユウジ:(自己紹介だ。ここで失敗したら、学園生活が破たんしてしまう。一年の時は失敗して友達が一人も出来なかった。二年生は、どうにかして乗り切らないと)』



「こいつ、他の生徒の自己紹介を聞かないで、自分の事ばかりか。そんなんだから一年生の時に失敗したんだと思うけどな」


「大体の生徒は、クラス替えしたての自己紹介で慌てると思うけど。あ、それよりお兄ちゃん、選択肢が出てきたよ」


「選択肢? なんだよそれ」


「こういう恋愛シュミレーションゲームって、プレイヤーが台詞や行動を選択することで、後々のストーリーに影響してくるんだよ」


「……随分と詳しいな」


「せ、説明書を読んでるからね。ほら、画面見て画面」



『ユウジ:ぼ、僕の番だ。ようし――』


 どういう風に自己紹介しますか?

 ○真面目にしてみる。

 ○元気にしてみる。

 ○含んだ感じにしてみる。



「これは、現実の俺と直結させて考えた方がいいのか?」


「うーん、どうなんだろう? 好きなヒロインを狙う場合だと、ゲームと現実は分ける必要があるけど……ま、お兄ちゃんなら完璧だから、自分の意思でいいと思うよ!」


「そうか。俺なら、これだな」



 ○元気にしてみる。



『ユウジ:僕はユウジって言います。これからよろしくお願いします!』


『生徒一同:おぉ』


『ユウジ:(よし。掴みは上々みたいだ)』



「よし」


「よし。じゃないでしょ! お兄ちゃんなら迷わず三択目でしょ!」


「何言ってるんだ。俺は元気キャラで名を通してるんだぞ」



「嘘だ……完全に理想の自分をゲームの中に出現させてるタイプだ。つ、次からはお兄ちゃんの意思に合わせてよ! その方が面白いよ!」



「はぁ……わかったよ。お、お前の自己紹介みたいだ」


「え? 本当?」



『ヒトミ:ヒトミです。趣味は愛犬の散歩に、ウィンドウショッピングです。えっと、テニス部に入る予定です。皆さんと仲良くしたいと思いますので、よろしくお願いします』



「うっわ超絶、私そのものなんだけど」


「嘘つくな。愛犬なぞおらん」



『ユウジ:(ヒトミ……相変わらず可愛いな)』



「ちょ、お兄ちゃん。いくらモノローグでも曝け出しすぎだよぉ」


「この画面の中の俺は、何を考えてるんだ」



 〇〇〇〇〇〇〇〇



『ユウジ:――!』


『ヒトミ:ふふっ』


 ヒトミがこちらを見て微笑むCGが映し出される。

 長い髪をなびかせ、こちらを見て微笑む美少女だった。


『ユウジ:(もしかして、俺を見て……よし、この学園で僕は、恋愛をしよう!)』



 〇〇〇〇〇〇〇〇



「急に発展しすぎだろ!! 単純すぎないか!?」


「まあまあ、恋愛ゲームの前提でユーザーが手に取ってるんだから、多少の強引さは目を瞑らないと」


「……納得いかん」


「とりあえず、OPムービーだね。見よう見よう! わぁ、アニメーションなんだね」


 こうして、長い美少女ゲームの部屋が始まったのだった。



 出会い編②へ続く。






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