『カフェの部屋』
カフェ:日本では一般的に喫茶店と同様。うんたらカフェは別物。
「ふぅ……。ん~、エレガントな休日って感じだね」
「ただコーヒーを飲んでるだけで、いつもと同じ部屋にいつもと同じ二人だけどな」
「お兄ちゃん、こういうのは気分が大事なんだよ。カフェはコーヒーを飲むでもなく、話に花を咲かせるでもなく、優雅に妄想に耽る場所なんだよ」
「それは間違いなく利用方法を誤ってると思うぞ」
「あぁ、私には見える。幸せな家庭を築いてコーヒーを飲む私とお兄ちゃんの姿が」
「兄と妹で幸せな家庭を築くのは、幸せって言う前提の時点で無理だな」
「お兄ちゃん、人の妄想にケチ付けないでよ」
〇〇〇〇〇〇〇〇
ズズズ……。
「カフェといえば最近、色んなカフェがあるよな」
「インターネットカフェとか、メイドカフェ、猫カフェとかあるよね! あ、メイドカフェがお望みなら私がいつでも猫耳フリルの可愛いメイドになってお兄ちゃんをご奉仕――」
「丁重に断る」
「ズバッと言う時点で丁重な気がしないんだけど」
「気のせいだ。ともあれ、カフェって本来はコーヒーって意味のフランス語なのに、今やその意味は隠れがちだよな」
「へぇ」
「カフェの本場はフランスだけど、フランスの給仕は女性より男性の場合が圧倒的に多いって知ってるか?」
「そうなの?」
「テーブルごとに担当者が決まっていて、日本のカフェとは全く違う形式なんだ。席ごとに値段も違う」
「……お兄ちゃん、フランスに行ったことあるの?」
「こないだ調べただけだ。ちなみに、日本で始まったのは幕末の頃らしい」
「そんなことよりも、私はカフェがフランス語でコーヒーの意味だなんて知らなかったよ! 今度からは、コーヒーを頼むときにカフェプリーズって言ってみるね」
「フランスでコーヒーが飲みたいときにそれを言っても、慣れ親しんだコーヒーは来ないぞ」
「え」
「フランスのコーヒーと言ったらエスプレッソだからな。エスプレッソが運ばれてくる」
「えー、あれ苦いんだよね」
「苦いのを飲めないなんて、まだ子供舌だな」
「そういうお兄ちゃんだってさっきからバンバン砂糖入れて飲んでるよね」
ズズズ。
「あ、黙った」
「こういう時はお茶を濁したっていった方が面白いぞ」
「お兄ちゃん、ホットコーヒーを飲んでるはずなのに寒いよ」
「ホッとしないのか?」
「……」
「すまん。俺も飲めない」
「うん」