『純愛の部屋』
純愛:純粋に愛する。淀みのない愛。
「本当の愛を求めて三千里ってやつだね」
「なんだよ、それ」
「今回が、純愛の部屋だからだよ」
「……なるほど」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「最近、ドロドロの恋愛模様とかが多くて、純愛ストーリーって減ってる気がするよね」
「そうだな。人間の不幸を見たいとか、世の中が荒んでる気がする」
「そ、そこまで言わなくてもいいような……」
「浮気や離婚は当たり前。そんな現実めいた話なんて、懲り懲りなんだよ」
「お兄ちゃん、そんな深刻に言わなくても……」
「いいや、敢えて言う。恋愛での浮気や離婚っていうのは、つまるところ刑事もので言えば主役を犯人にするようなものだ。
脱獄囚が主人公だったら高視聴率が期待できる。そうした高視聴率を取りたいがために、そういう作品ばかりを作るのはどうかと思うわけだ!」
「……お兄ちゃん、なんか主旨がずれてる気がするよ」
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「作品は作品だもんね。ドロドロしたものより一筋の愛を見たいよ」
「だが、これも今だから言える意見なのかもしれないな」
「急にどうしたの?」
「大人になったら、あえて他人の不孝を見て自分と照らし合わせ、自分は少しでも幸せだと自己暗示するために、そういったものを見たくなるのかもしれない」
「だ、ダークすぎる……それでも、大人になっても青春時代の甘い恋とか、まっすぐで揺らぎようのない愛を見たい時はあるんじゃないかな?」
「それもそうか……何はともあれ、現実なら純愛になることを切に願うよ」
「ふっふっふ。お兄ちゃん、いい提案があるよ」
「は?」
「私を選べば、純愛確定だよ! 私って一途でお兄ちゃんラブだから! 他の男はモブキャラ同然だし、いなくてもいいって感じだもん!」
「お前を選んだら泥沼になるだろ。絶対に」
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「純愛って言っても、どういうものが純愛って呼べるのかな?」
「そうだな……手をつなぐことも躊躇うとか、下の名前で呼び合えないとか、いろいろすっ飛ばさない一段ずつ登る恋愛なんじゃないか?」
「裏表のない愛情……ストーリーだと、きっと無駄な設定を省いて愛に、愛に、愛に生きるってことだね」
「そうだろうな。ただ愛に生きるって言っても、他の登場キャラクターは少ない方がいいだろう。多ければ多い程、面倒だろうし」
「やっぱりこの作品は純愛に最適ってことだね!」
「……強制愛の間違いだろ」




