『偏見の部屋』
偏見:偏った意見。考え方。
「思うんだが、偏見を抱く人は頭が固いよな。視野が狭いというか、可能性を考慮しないというか」
「これまで散々の偏見と独善を振りまいてきたよね、お兄ちゃん」
「というわけで、今回は偏見の部屋みたいだな」
「都合の悪いことは無視する。これはきっと偏見じゃないよね。万人に通用すると思うよ」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「しかしなぁ、いきなり偏見について語れと言われてもなぁ」
「お兄ちゃんには適役だと思うけど」
「そんなまさか。もっと大物コメンテーターとかに語ってもらった方が――」
「大物コメンテーターが偏見について語れるって時点で、大体は偏見だよね。それに、この作品には基本的に私達しか登場しないし、無理だよ。オファーする予算すらきっとないと思うよ」
「大物だからな。ギャラも高いということか」
「偏見のオンパレードだね」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「ふと思うことがあるんだが、晴れの日に外出するってのは偏見だよな」
「それが健全ってものなんだよ、お兄ちゃん。そんなことを考える時点で、インドア派によるインドア派のための偏見になっちゃってるよ」
「そのインドア派って言葉、差別じゃないのか?」
「そ、そう言われると……別に家にいるのが好きっていえばいいもんね」
「まあ、言われても苦じゃないけどな」
「どっちなのさ!」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「とりあえず、妹のいない連中にだけは言いたいことがある」
「突然どうしたの? 随分と真剣な表情だね」
「そりゃあそうだ。妹のいない連中は、妹に対する妄想を抱きすぎる! つまり、偏見の度が過ぎてるんだよ! 兄を好きになる妹なんて、自然と出てくるもんか!」
「……首、絞めてない?」
「絞めてるとすれば、お題の人の首を絞めてることになるな。――はっ、もしやこれがキッカケで俺は、取り返しのつかないことを?」
「だ、大丈夫! 首は絞めていたとしても間接的だよ! 物理的にはしてない! これは表現の問題だから!」
「それもそうだな。第一、俺達はお題の人に会ったこともない」
「そもそも、いるのかどうかも不明だよね」
「お題の人って、何食べてるんだろうな?」
「なんか、つまらなそうな人だと思わない? お題だってありきたりなものが多いし、展開だってなんとなく、ありきたりな風に収まると思うはずでしょ?」
「確かにな」
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「……あれ? 手紙だ」
「また空から落ちてきたぞ。天井から降ってきてるのか?」
「……」
「どうした?」
ヒトミは手紙を見て固まっている。
「お兄ちゃん、お題の人が怒ってるよ」
「え?」
ユウジが手紙を見ると、そこにはこう書いてあった。
『人を傷つける偏見は、慎むように』
「「…………(お怒りでいらっしゃる)」」
「お兄ちゃん、とりあえず謝っておこう! 口にしてきた偏見をここで一旦謝っておこう! 取り返しのつかないことになる前にそうしよう!」
「そうだな。すぅ……」
「「どうも、すみませんっしたあああ!!!」」




