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俺と妹のただならぬワンルーム  作者: お題の人(新増レン)
2LDK(51~100)
65/102

『歌い手の部屋』

 歌い手:カラオケの達人。



「歌い手だって。そういえばネットの動画で歌ってみたとか……お兄ちゃん?」


「何が歌ってみた、だ」


「お、お兄ちゃんがまたしても腐ってる。お腐兄ちゃんになってる……あ、これだとお豆腐みたいだね」


「……」



〇〇〇〇〇〇〇〇



「とにかく、俺は『歌ってみた』だの抜かしてる動画が大嫌いなんだよ」


「えー、私は結構好きだけど」


「は?」


「……え?」



「お前が好きなのはなんだ? 歌声か? 違うだろ……曲だろ!!」



「そ、そう言われてみると……」



「大体なぁ、歌ってみたとか言ってるけど、歌う曲は流行りものだったり人気の曲だったりするんだよ。曲にあやかってんじゃねえよ!」



「す、すごい迫力……」



「考えてもみろ。そいつらは曲が人気だから歌うんだよ。誰も知らないような歌を歌ってみろってんだ。それと、他人の作った曲を踏み台にしてんじゃねえっての。ボイトレだかアレンジだか知らんが、歌う奴が偉いんじゃない。いつの世だって、作る奴が偉いんだよ!」



「で、でも、歌う人がいないと……」


「そんなの、いくらでもいるだろ?」


「うぐっ」


「例えるなら、お笑いのネタを他のやつが何人もやってるのと同じ状況だ」


「……カオスだ」


「これが売れてるネタなら、どうだ?」


「そりゃあ、面白いと思うよ」


「売れてないネタなら?」


「うーん」



「同じなんだよ。歌い手とか言っておきながら、歌う歌を選んでるってことだ! 何様だよ! カラオケで歌ってろよ! 真の歌い手なら曲選ぶなよ!」



「お兄ちゃん、今日はやけに張り切ってるね。何かトラウマでもあるの?」


「……」


「あ、怪しすぎる……」



「ふっ……俺がかつて言われたことさ」



「え、お兄ちゃん、歌ってみたの? あれだけ歌えない設定って威張ってたのに?」


「……すぐに削除したよ。罵倒と非難の嵐だからな。だが、わかってくれ」


「え?」


「決して、CDデビューしたいって思ったんじゃなくて、楽しそうって思ったからで、そんなやましいことは決して――」


「お兄ちゃん、正直になろう」


「……すみません。歌手になろうとしました」


「よしよし」




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