『顔出しNGの部屋』
顔出しNG:顔を出さないこと。理由がある。
「顔出しNGか。深い話題が来たな」
「そんなに深くない気がする……」
「何言ってる。顔出しNGは、夢を維持することができるんだぞ」
「(いっつも夢を破壊してるのに、今回は夢を語ってる……レアなお兄ちゃんだ)た、例えば、どういう展開でそうなるの?」
「最たる例は、漫画家だ」
「あ、確かに。漫画家の先生ってだけで、なんか別次元の人って感じするよね」
「そう。それなのに、やたらとテレビに出たがった末に、その作者の漫画を読むと作者の顔が先に出てきて、このキャラクター可愛いけど、あんな作者がニヤニヤしながら描いてるんだなって思った瞬間に、漫画の世界観は崩壊し、読みたいと思う読者が消える」
「……随分と、毒舌だね」
「まあな。その点、顔出しNGの場合、漫画の世界に浸ることができるから、これ以上ない娯楽として成立するんだ」
「これ、特に内容も比例するよね。すごくシリアスでミステリアスな作品だと、描いてる人もきっとミステリアスかなって思いがちだけど、顔出しされて短パンのわんぱく大人だったらショックだもん」
「そうだな。それで顔出しNGだった場合、どうだ?」
「――! 作者の顔を想像する楽しみが増えるね!」
「そういうことだ。これは、漫画の世界だけではない」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「あ、わかった。声優とかも似てるよね」
「そうだ。彼らは最近、やたらと顔面を押し出してる傾向があるが、本来声優とは影の役者。声だけで成立させる仕事に、顔を前面に出してしまえば元も子もないだろう」
「で、でも、それは仕方ないんじゃないかな? ほら、アーティスト活動とかしてる人もいるし」
「だからどうした」
「……怒ってる」
「声優だって、顔出しNGにした方が実力主義になるんじゃないのかって話だよ!」
「いつになく、真剣だね」
「漫画家よりも、声優の顔出しNGの方が面白いだろ」
「そう言われてみると……カッコいい声とか可愛い声を出してる人が、実際にこんな人だって知ってるよりは、どんな人かなって想像した方が面白いね」
「そうだな。……ま、弊害はないわけじゃないけど」
「え?」
「ストーカーが増えそうじゃないか?」
「……確かに。顔見たさが犯行動機になりそう。そんなのが新聞の一面を飾るのは嫌だね」
「でもまあ、顔も知られてなきゃ、ストーキングできないだろうけどな」
「ストーカーを甘く見ちゃ駄目だよ! 奴らはどんな手を使ってでもストーキングをしようとするんだから! 例え顔出ししてなくても突き止めてくるんだよ!
だってあれだよ? カラスみたいにゴミ捨て場のゴミを漁ってレシートを見つけると、何を買って食べたかメモるんだよ! 外側だけじゃなく、内側の内臓もストーキング対象なんだよ!」
「常軌を逸してるな。……その行動力や熱量を、ぜひ他の所に発揮してほしいものだ」
「うんうん。ストーキングは駄目だよ、絶対」
「……しかし、やけに詳しいな」
「あ、そうだ。今日は好きなドラマが――」
「話を聞こうか? ストーカー予備軍」
「ひええええええええ!!」
「大丈夫だ。お前は捕まっても、まだ未成年だから顔出しNGだぞ」
「最悪の顔出しNGだよ、それ」




