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俺と妹のただならぬワンルーム  作者: お題の人(新増レン)
2LDK(51~100)
54/102

『秋の部屋』

 秋:四季。


「秋だね、お兄ちゃん」


「そうだな」


「……テンション低い?」


「秋ってことは、もうすぐ一年が終わるってことだろ。テンションなんて、上がるはずもない。年末調整や年末商戦、年賀状作成に印刷、リア充のクリスマスパーティーなど、恐るべきイベントが目白押しなんだぞ」


「……最後のだけ、私情だよね」



〇〇〇〇〇〇〇〇



「それでも、秋は色々と楽しいものだと思うよ」


「例えば?」


「ほら、食欲の秋とか!」


「ああ、あれな。そもそも、○○の秋って……どうして秋なんだろうな。食欲とかは、秋の食材が美味しいとか強引に理由を付けられるけど、他は……芸術の秋に読書の秋、スポーツの秋なんてのもあったな」


「スポーツの秋は、秋に運動会とかやるからだと思うけど、他の二つは難しいよね」


「芸術……秋と芸術って結びつくのか?」


「紅葉がきれい!」


「それで芸術と言い切るのか……」


「でもさ、芸術の冬とか夏ってイメージはないよね」


「確かに。しかし春はどうだ? 桜が綺麗だぞ」


「それは日本限定だからだよ、きっと」


「……違う気がする。まあ、芸術はいいとして、問題は読書だ。読書なんて、いついかなる時も出来ると思うんだけどな」


「もしかして、紙の生産が一番多くなる時期なのかも」


「それなら読書じゃなくてもいいんじゃないか?」


「それもそっか……確かに、読書はイメージ湧きにくいね」


「そこで、俺達でもっとイメージしやすい○○の秋をつくってみよう」


「唐突だね」


「猪突猛進型の人間だからな、俺は」


「意味不明だよ」



〇〇〇〇〇〇〇〇



「はいっ! 思いついたよ」


「どんなのだ?」


「じゃん! 初霜の秋」


「すごく限定的な上に、都会人からすればなんのこっちゃだぞ」


「そんなもんかな?」


「そんなもんだ。次は俺だな。冬物の秋」


「お兄ちゃん、意味不明過ぎるよ」



「考えてみろ。冬になってからセーターやマフラーなどの冬用衣服を買う人は少ない。

 つまり、秋とは冬物の争奪戦が起きる、アパレル業界にとっての季節を左右する大商戦の時期だと思わないか? 彼らにとっては食欲も読書も芸術も必要ない、冬物の季節というわけだ」



「そ、そうなのかな? 普通に冬でも買いそうな気が……で、でも、衣替えをするのはこの季節だもんね」


「そうだろう?」


「考えてみると、秋って奥深いのかも。ほら、秋深し~~なんたらかんたらってよく聞くし」


「俳句も秋だと読みやすそうだな……そうなると、芸術と読書もカバーされてしまうのか?」


「すごいね、秋」



〇〇〇〇〇〇〇〇



「こんな風に秋について考えることなかったから、不思議な魅力にはまりそうだよ」


「季節はいつだって生まれ変わって、俺達の前に現れるからな」


「なんか、重い話みたいだね」


「よし、乗ってきたところで、もう一巡してみるか」


「えっ!? この空気感でいきなりすぎる……えっと、紅葉の秋!」


「つまんね」


「お兄ちゃんが無茶ぶりしたからでしょ!」


「コホン。手本を見せてやろう……就活の定員、空きが無い秋ってな」


「言いたくないけど、お兄ちゃんの方がつまらないと思うよ」


「……すまん。言っておいて考えてなかったんだ」


「飽きないね、お兄ちゃん」


「ぶふっ!」


「そこまで爆笑する?!」



〇〇〇〇〇〇〇〇



「そういえば話は変わるが、木枯らし吹き荒れる秋とか冬でもスカートの奴いるだろ? あれってどういうことなんだ?」


「オシャレじゃないの?」


「凍傷してもいいのか?」


「……だ、大丈夫だよ。タイツとか履いてると思うし」


「え?」


「お兄ちゃん、さすがに女の人はガード無しで外は歩けないよ。ストッキングとかタイツは欠かせないマストアイテムだよ。それに、制服だったら冬でもスカート強制だもん」


「そうだったのか……」


「秋について論じている場合じゃなく、お兄ちゃんはもっと世間に関心を持った方がいいかもね」


「飽く(秋)なき探求ってことか? 秋だけに?」


「今年一番の寒波だったよ、お兄ちゃん……」


「すまん。言ってから俺も、背筋が凍った」




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