『ワル自慢の部屋』
ワル自慢:ひたすらに武勇伝を語り、悪さをアピールすること。
「お兄ちゃん、ダークなエピソード持ってる?」
「俺がそんなキャラに見えるか? 一度も踏み外してないし、そんな勇気すらない」
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「でもさ、そういう風に見えないくせに、自分の悪事を自慢する人ってよくいるよね。特に学生時代は多いと思うよ」
「学生時代って、俺達もまだ学生だろ」
「そうだけどさ、なんか、中学の時はワルだったとか自慢げに話してる人とかいるでしょ」
「ああ、確かにいるな。見ていて痛い奴」
「俺は怖いんだぜっていう保険だよね、完璧に」
「本当に怖い奴は自慢しないからな。ヤバい奴は更に、悪事を悪事だと思ってすらいない。
例えば、標識を破壊して武器にする行為の場合、ワルぶって敵を減らそうとする連中は『標識あるだろ。あれ壊したことあんだぜ! あん時の俺って、めっちゃワルだったわ』って言うけど、本物の場合、『標識? 壊すためのもんじゃねえか。何言ってんだ?』ってなる」
「そ、それは極端すぎるような気がする。でも、なんとなく前者は分かるよ」
「大体、自慢げに話すなんて、罪の告白と同じだよな」
「あ、そうか。悪いことをしていたアピールで敵を減らす作戦でもあるけど、同時に罪を告白することで負荷を減らそうとしてるんだよ!」
「懺悔というわけか。それにしちゃ、あいつらの顔は悔いてるようには見えんな」
「うーん、やっぱりアピールになっちゃうのかぁ」
「まあ、アピール内容もブレブレになることが多いだろ」
「本当に怖いエピソードっていうより、一種の話のタネみたいだもんね」
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「そうだ。第一、証拠がなかったら嘘のケースだって考えられる」
「なるほど」
「現代社会は生きにくいからな。少しでも敵を減らそうと躍起になるのが、大半の連中の考えだ」
「敵を作りたいって思う人は少数派だよね」
「お前はどうなんだ?」
「私? 私はもちろん、お兄ちゃんの為なら全人類だって敵に回すよ!」
「なんか、ヒーローみたいな台詞だけど、紐解くとダークヒーロー感があるな」
「一人の為に世界を敵に回す。一人と世界、どちらを救うのか。選択肢を迫られると、人間ってどっちを選ぶんだろうね」
「とりあえず自分だろ」
「さっすが、ブレないね」




