表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺と妹のただならぬワンルーム  作者: お題の人(新増レン)
1LDK(1~50)
46/102

『ユートピアの部屋』

 ユートピア:トマス・モアの著作。作中の国家で、理想郷のこと。店の名前ではない。


「ユートピアって?」


「理想郷の事だ。砕いて言えば楽園だな」


「楽園……!? つまり、お兄ちゃんが無限に出現するってこと?」


「どんなカタストロフィだ、それは」



〇〇〇〇〇〇〇〇



「でもさ、実際に楽園に行っちゃうと、人間は更なる楽園を求めそうだよね」


「それは、なんとなくわかる気がする」


「人間は強欲だからね」


「確かにそうだな。しかし、楽園ってことは世界にいくつもあっちゃ駄目だろ?」


「うん、そうだね」



「人それぞれ、楽園には思い描くイメージがあるんだから、たとえば食事に興味の無い人が食べ物に困らない楽園に辿り着いても、そこを楽園だと認識するのは難しくないか?」



「あ、そっか。私みたいにお兄ちゃんを求める人もいるのに、顔だけのイケメン揃えられても嬉しくないもん。一緒だね」


「……とにかく、楽園ってのは普通に生活してる分には、決して辿り着くことの出来ない場所だと思うわけだ」


「どういうこと?」



「例えば、世界中には貧困や病に脅かされる人が大勢いる。そんな人達の為に、楽園はひっそりと門を開けるのかもしれない。俺達みたいに中途半端に幸せな連中には、ユートピアは歓迎の意思を示さないだろう。つまり何が言いたいのかというと、俺達はユートピアに一生行けない」



「なんか、すっごく重い話になってる。でも、それだと逆も考えられないかな」


「どういうことだ?」



「貧しい人たちからすると、ユートピアは貴族や金持ちが独占していて、自分たちが入ることの出来ない場所って考える場合もありそうだよ。私達みたいに普通の生活を送れてる事も、一種の楽園に思えるんじゃないかな?」



「成程。理想郷っていうのは、皮肉なことに、個人の状況で変化してしまうのか。これじゃあ、万人にとっての楽園なんてありえないな」



〇〇〇〇〇〇〇〇



「でもでも、ユートピアがあったらいいなって思うよね」


「それは、そうだな。一生働かなくていいなら、最高だよな」


「お兄ちゃん、まだ働いてないよね」


「仮定の話だ。ともかく、ユートピアを信じて待つよりも現状の努力をした方がいい。つまり、お前は勉強をしろ」


「異議あり! 私にもユートピアは歓迎すると思います! 人を選んで歓迎しないなんて、楽園でも何でもありません!」


「そんなお前に、助言をしてやろう」


「え?」


「甘い話には罠がある。つまり、ユートピアって言っても竜宮城のようなケースも考えられるってことだ」


「……年取りたくないし、今を生きるよ」


「そうしろ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ