『オセロの部屋』
オセロ：二人用ボードゲーム。石を挟んで取り合う。囲碁とは違う。
「お兄ちゃん、オセロやろうよ」
「まあ、お題だから仕方ないか」
「へっへーん。お兄ちゃん、どうせだから何か賭けようよ」
「賭けごとは駄目だろ」
「お金じゃないよ。私が勝ったら、お兄ちゃんに抱きしめてもらうってところでどう？」
「随分な自信じゃないか」
「もちろん。オセロはね、得意なんだ」
「そうか。なんとなく先の展開は読めてきたけど、俺が勝った場合はどうする？」
「そうだなぁ、仕方ないから、私の胸を触らせて――」
「おい、どっちも地獄じゃねえか。痴女が」
「地獄とは失礼な！！」
「（そっちに怒るのか）」
「この胸を触りたい男子が全国に何万人いるか知ってる？！」
「知るかっ！」
「でも安心して。私がこんなこと言うのは、お兄ちゃんだけだよ？」
「さ、始めるか。俺が勝っても何もしないから、安心しろ」
「お兄ちゃん！？」
〇〇〇〇〇〇〇〇
パチ。パチ。
「（くっくっく。お兄ちゃん、オセロは逆転のゲーム。最初に負けてても後から――）」
「ほい、お前の番」
「ほえ？」
見ると、全ての白が黒に代わっていた。
「ど、どどどどうして！」
「オセロは確かに終盤で逆転する醍醐味があるけどな、わざわざ負けるためにやってたら序盤で終わるぞ」
「そ、そんなっ！？」
「ま、予想通りの展開だ。ボードゲームはヒトミには似合ってないだろ」
「――！ じゃ、じゃあ、どんなゲームが似合ってると思う？」
「そうだなぁ……頭を使わないゲームか」
「それ、本当にゲームって言えるの？」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「しかしオセロか。オセロは白と黒だろ」
「うん、そうだね」
「チェスも白と黒だろ」
「あ、本当だ」
「勝負事って、どうしても白黒つけたがるよな」
「……そうだね」
「俺は、白黒つけなくてもいいと思うんだ」
「お兄ちゃんが、いつになく真剣モードだ……ごくり」
「勝負は確かに勝った負けたを競うもの。でもさ、楽しければ勝ち負けなんてどうでもいいよな」
「き、綺麗事が眩しい！！」
「というわけで、さっきの取引はなかったことで」
「お兄ちゃん、どこへ行くのかな？」
「は、放せ！ お前の胸に興味ない！」
「させないよ！ こればかりは白黒つけてもらうから！」
「ぎゃああああああああ！！！」
