表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺と妹のただならぬワンルーム  作者: お題の人(新増レン)
1LDK(1~50)
41/102

『アニメ化の部屋』

 アニメ化:マンガや小説、ゲームなどの媒体がアニメになること。決定とは言っていない。




「大変だよ大変だよ大変だよ!!! お兄ちゃん!」


「どうした?」


「私達がアニメ化するらしいよ、お兄ちゃん!」


「は?」


「私達がアニメ化するらしいよ、お兄ちゃん!」


「いや、聞こえなかったわけじゃない。本気か?」


「本気だよ!! ついに銀幕デビューだよ!」


「最近はやたらとアニメ化するけど、俺達がアニメ化だなんて、正気の沙汰じゃないな」



〇〇〇〇〇〇〇〇



「そもそも、どんな感じになるんだ?」


「そりゃあ、現代のアニメだもん。ぬるぬる動くんだよ! ほら、某アニメとかだとキャラクターが踊ったり楽器弾いたり、はたまた話数ごとに顔が変わったりするんだよ」


「三つめはあえて触れないでおくとして、この作品で踊りも楽器もないだろ。ケチャでも踊れってか? 冗談じゃない」



「いや確かにないけど、最近はなくても踊らされるらしいんだよ! 作品とは全く関係の無い所で踊らされるから、私達も練習しないと駄目だね! 社交ダンスとかいいんじゃない!? ほら、距離近いし! そのまま踊っていって互いをパートナー以上に意識しちゃって……最高の展開だよ! いざベーゼ! 果てに結納だね」



「……最悪だな」


「んもう、テンション低いよ! お兄ちゃん! ほらほら!」


「無駄に動き回るのはやめておけ。作品の中だと一切描写されないが、仮にもアニメになったとしたら、お前の動きにアニメーターがキレると思うぞ」



〇〇〇〇〇〇〇〇



「つまんないなぁ。あ、でもさ、アニメ化ってことは色もつくんだね」


「そうだな」


「それに、私達もついに姿形を得るわけだよ」


「何言ってんだ? 俺達は常にここにいるだろ」


「ちっちっち、甘いね、お兄ちゃん。角砂糖の角――」


「それ前にやったぞ」


「とにかく、私達の髪形も髪色も身長も顔立ちも体型も声も特徴も服装も、この作品では全くと言っていいほどに描かれていないんだよ!」


「言われて見ればそうだったな。でも苦労したことはないだろ」


「ないけどさ……ようやく、私達が生きるってことだよ。感無量だね」


「しかし、確実に尺は短いよな」


「え、なんで?」


「考えてもみろ。こんな会話だけのアニメ、通常の尺で見たいと思うか? きっと気怠いぞ」


「……」


「ここで問題。アクションシーンが多いアニメ、感動要素が多いアニメ、可愛い又はカッコいいキャラクターが出演してるアニメ。列挙すれば一日が終わりそうな昨今のアニメ事情を鑑みて、会話だけの狂気的アニメが受け入れられると思うか?」


「た、確かに……」


「それこそ、早口カオスコメディのような立ち位置に近い気がする。つまり、出来て五分か。妥当だな」



〇〇〇〇〇〇〇〇



「で、でも、この台詞だってアニメになったら声優さんが……ハッ!」


「どうした、妹」


「そうだよ声優さんだよ! 私達の声が、遂に確定するんだよ!」


「気の毒にな。いくら仕事とはいえ、俺達の声を担当することになるとは、これぞ最悪の極み」


「えー、どうして?」


「経歴に傷がつくだろ。……いや、待てよ? 有名な声優を使えばファンがアニメを見てくれるから、話題が拡散しやすい。この世の中、良くも悪くもネット社会だから、火がつけば一気に円盤が売れるんじゃないか?」


「お兄ちゃん、考え方が嫌だよ。まあ、お兄ちゃんは嫌じゃないというか、好きだけど」



〇〇〇〇〇〇〇〇



「今考えると、これって俺達しか出演してないよな」


「そうだね……ってことは、声優さんは二人になるの?」


「それに、背景は永遠に変わらない部屋の風景だ。無駄な小道具が無い部屋の時は、描くのに苦労しないな」


「――そしたら、高価格で売りつけてしまえば」


「高収入確定なんじゃないか!? でも、いや、そもそも俺達に入ってくるのか?」


「どうだろう」


「これで入ってこないとしたら……ぶつくさ」


 ぶつくさ言ってると、天井から手紙が宙を舞うように降ってくる。


「ん? あれ、お題の人から手紙が降ってきたよ」


「随分と急だな。前々から思ってたんだが、それどうなってんの?」


「えっと、なになにふむふむ。なんですと!?」


「どうしたんだ?」


「お兄ちゃん、アニメ化の話……白紙になったんだって」


「急すぎる展開だな。スポンサーがつかないのか?」


「アニメ会社が倒産しちゃったんだって」


「……まあ、あの業界もかなりブラックだからな」


 それには、何も言えなかった。


「――しかしやっぱり、試合はホームゲームに限る。頭の中だけで動く方がいい」


「お兄ちゃん、負け惜しみにしか聞こえないよ」


 静かになりました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ