『王様の部屋』
王様:偉い人。
「王様になりたいかぁぁ!」
「……」
「独裁者になりたいかああぁぁ!」
「……それは、なってみたいな」
「お兄ちゃん、こっちにだけ反応するのはどうなんだろう」
「続けろ」
「あ、うん。絶対王政を実行したいかぁぁ!」
「……」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「ということで、王様ゲームをしよう」
「今の流れでどうしてそうなったのか、半日ほど追及させてもらっていいか?」
「え~~? 細かいことを気にする男はモテないよ? ま、そうなってくれた方がわたしに回ってくる可能性が増すんだけどね。げへへへへ」
「好感度低そうな笑い方だな。というかお前、さっきからテンションおかしくないか?」
「お兄ちゃんが低体温なだけでしょ? 私は何も変じゃないよ。(へっへっへ。これで王様になってお兄ちゃんに命令しまくるんだもんね。あんなのやこんなの……)うへへへへ」
「だから、笑い方気持ち悪いって」
「実の妹に気持ち悪いなんて、ひどいよ、お兄ちゃん」
「妹とか抜きにしても今の笑いは気持ち悪いぞ」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「それじゃあ割り箸用意したからはじめようよ」
「ルールは?」
「赤く塗られた方を引いたら王様になれるの」
「王様……誰に?」
「だ、誰?」
「王様というからにはモデルが必要だろ。……そうだな、王様ゲームは命令を下す絶対王政の独裁ゲームだから、歴史上で最も嫌われていそうな王様にするか」
「嫌われた王様なんて知ってるの?」
「ジョン王にしよう」
「ジョンってたくさんいそうだね。苦情来ない?」
「心配するな。こんな末端で行われている王様ゲームのモデルになったくらいで苦情なんて来ないだろう。それに、ジョンで王様となればあまりいないだろうから」
「それならいっか」
「……しっかし」
「?」
「何が悲しくて妹と二人で王様ゲームをしなくちゃならんのだ」
「むむ。じゃあお兄ちゃんは誰となら王様ゲームしたいの?」
「そうだな……」
「(これはチャンス! お兄ちゃんの願望を引き出すチャンス! 王様ゲームとなれば相手に命令が出来るという点でどことなくエッチな方面のゲームだから、きっと相手は女の人に違いない。もしかしたら今片想い中の相手を知ることもできる。ってか知りたい! さあ、お兄ちゃん。淫らな願望を曝け出すといいよ!)」
*注意、彼女は淫らな願望を抱いていた人です。
「権力者かな。男女問わず」
「……夢がないよ。お兄ちゃん。ってか、このやりとりデジャブがすごいよ」
「?」
「それに、夢というよりも、欲望がなさすぎだよ! 小学生じゃないんだから、もっと欲望にまみれていないと男子失格だよ! 権力と酒池肉林に走ってこその男だよ!」
「急に偏見に走ったな。……じゃあお前は誰と王様ゲームしたいんだ?」
「そ、それはもちろん……ちらっ」
「さ、とっととお題を終えて寝るか」
「ちょ、お兄ちゃん! 勝手に引かないでよ!」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「じゃあ見るか」
「せーの、で見ようよ」
「……」
「あ、いま面倒くさいなって思ったでしょ」
「誰でも思うだろ。そんなに王様ゲームしたいなら馬鹿サークルの飲み会にでも参加してろ」
「私が参加するなんてありえないよ。お兄ちゃん以外に興味ありません、以上」
「自己紹介でそれを言ったら、きっと簡単に孤立できると思うぞ。そして部活を作っちまえ」
「言ったよ?」
「……本気か?」
「うん。まぁ、お兄ちゃんの魅力を話したら友達も自然と出来たけどね。みんな一緒に帰りたいってうるさいんだよ。きっと家までついてきてお兄ちゃんを狙うつもりだろうから、いつも断ってるけど。えへへ」
「もうその時点で王様のようなものじゃないか……。はぁ、とりあえず、お前の言うとおり同時に見てやるよ」
「ありがとっ! さっすがお兄ちゃん」
「はいはい。仕切ってください現場監督様」
「それじゃあ、せ~の!」
「「王様だ~れだ!」」
バンッ!
繰り出されたのは、先が赤く塗られた二本の割り箸だった。
「骨肉の覇権争いをしろとでもいうのか? おい、これはどういう――」
「……」
「ヒトミ?」
「王様への欲望のあまり、二本とも王様棒にしてしまった!」
「お前は何がしたいんだ……」
「あ、あははは」
王様ゲーム、一巡目にて終了。