『水族館の部屋』
水族館:水の楽園。魚の檻。
「――というわけで、お題の人が簡易的なアクアリウムを用意したみたいだね」
「何がアクアリウムだ。ただの水槽に金魚が入ってるだけじゃないか」
「まあまあ、お題の人の資金も潤沢じゃないんだよ」
「潤沢って言葉、よく出てくるな……。はぁ、今回はこの金魚を見ながら何をしろと?」
「さあ?」
「ま、そうだな。いつもと同じか」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「「…………」」
二人揃って、じいっっと水槽を眺めている。
「お兄ちゃん」
「なんだ?」
「水族館って、動物園とは違うんだよね」
「そりゃそうだろ」
「じゃあさ、魚とかは動物じゃないのかな?」
「……動物だよな。確か、動物はヒト以外で植物以外の生物なら分類されるはずだ」
「じゃあ、動物園で水族館みたいに魚を集めてもいいってこと?」
「そりゃ駄目だろ。動物園だし」
「どうして?」
「どうしてって……食われるからじゃないか?」
「魚同士も食べるよ」
「……あのなぁ、そんなこと言ったらキリがないぞ。例えるなら、回転寿司なのに寿司以外のメニューが置かれてる事に文句言うか?」
「言わないけど」
「それなら、水族館の事にも目を瞑った方がいい」
「釈然としないなぁ」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「……ねえ、お兄ちゃん」
「ん?」
「金魚って食べられるの?」
「わんこそばみたいに食べられるかもしれないな」
「それ、人間ポンプになりそうだね」
「「…………」」
「水草、食べられるのかな?」
「そうやって何でも食べようとするな。馬鹿だと思われるぞ」
「失敬だね、お兄ちゃん。先人が食べようと思わなかったら、食材だって豊富じゃないんだよ? 考えてみてよ。タコとかイカなんて、初見で食べようって思えないじゃん」
「確かになぁ。あれにかじりつく勇気はないよな。……でもそれを言うなら、ナマコはヤバいだろ。あとはそうだなぁ、フグとか毒を持ってたら、最初に食べても後から食べようって思わないよな」
「それもそうだね……ふわぁ~~」
「眠いのか?」
「うん……ずっと水槽見てるからね。それになんだか……」
ぐぎゅるるるる……。
「「はぁ、お腹空いたなぁ」」
金魚は戦々恐々とした。




