『バッドエンドの部屋』
バッドエンド:悪い結果や結末にて終了すること。
「お兄ちゃん、バッドエンドって言ったらどんなのがあるかな?」
「そりゃあ無数にあるだろ。考えたくないほどに」
「定番は主人公が死ぬパターンになるのかな?」
「……そうだろうけど、死に方が問題だと思うぞ」
「どういうこと?」
「例えば、孫や息子夫婦、付き添ってきた妻に囲まれて死ぬ主人公だと、どう考えてもハッピーエンドとしか言えない」
「んー、なんか哲学チックだね。その人にとって、絶妙なタイミングの終わり方がハッピーエンドになるのかな?」
「まあ、そもそもバッドエンドの定義が揺らいでるからな。さっきから命を散らせてばかりだけど、他のパターンのバッドエンドもあり得る」
「例えば?」
「兄が結婚し、ブラコンの妹は独身のまま老後を迎える」
「そんなの嫌だあああああああああああああああああ!」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「すまん。お前があそこまで発狂するとは思わなかった」
「ううん。私も、自重すべきだったよ。空欄を使っちゃった」
「ちょっと何言ってるかわからないが、話を戻すか。さっきのように、恋愛ものだとすれば主人公がフラれた瞬間にバッドエンドとなるケースも考えられる」
「それもそうだよね。でもさぁ、ほとんどの恋愛ものって成功するよね」
「そりゃあ、読者が望むからな」
「わざわざ不幸せな人間の末路を見て楽しむ性癖はないもんね」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「……こう考えると、俺達の読者は何を望んでるんだ?」
「に、人間の読者って……神様とか?」
「いや、考えてみろよ。俺達が普通に生活しているけど、誰かが常に行動を見ているとしたらどうだ?」
「……こわっ」
「だがな、もしそうだとすれば……俺達が望めば、望むような最後に辿り着くんじゃないか?」
「でもその理論だとさ、バッドエンドは存在しないんじゃない?」
「それは特殊な性癖の奴がいて――」
「さすがに自分からバッドエンドを目指す人はいないよ。そんなの、マグマにダイブするようなものだもん」
「……」
「お兄ちゃん?」
「妹に納得させられるとは……屈辱だ」
「何気に酷い言いようだなぁ……」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「ともあれ、バッドエンドは避ける必要がある」
「そうだね。特に、この作品の終わり方って不明過ぎるけど、バッドエンドだけは避けよう。誰も血を見たくないもん」
「おい、フラグを立てるな」
「てへ」
「まあ、なんにせよ。ハッピーだろうとバッドだろうと、終わりが来ないのが一番だよな」
「お兄ちゃん、渋いね」
「終わりって一言だけで寂しいだろ。だから俺は、残り続けたいって思うな」
「し、詩人だね……でも私もそうだよ! このお題の部屋が終わらなければ、お兄ちゃんとずっと一緒だもんね! さあ、これからもずっと一緒にお題を――」
「これだけは終わってくれ」
「んもう、照れ屋さんなんだから」




