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俺と妹のただならぬワンルーム  作者: お題の人(新増レン)
1LDK(1~50)
33/102

『あおり文章の部屋』

 あおり文章:煽ってくる文章の略。たぶん。


「あおり文章って?」



「簡単に言えば『この後すぐ! チャンネルはそのまま!』とか。『衝撃の事実はCMの後!』とか言うやつだ」



「ああ、あれの事なんだ。映画の宣伝とかでもあるよね。『ラスト数分で衝撃の結末が!』とか。漫画でも最後の方に『~~が立ち上がった! 残るはロスタイムだけ!』とか仰々しく書かれてあることが多いよね」



「そうだな。しかし、あおり文章ってのはリスクを伴うのが常識なんだ」


「どういうこと?」



「考えてみろ。あおり文章で大袈裟に期待させてしまえば、視聴者や読者の期待のハードルはうなぎのぼりに上昇する。しかし大概は、そのハードルを越えることはない。ハードル走や高跳びのつもりが、実は競技が棒くぐりだってことだ」



「……最後のは、よくわかんないよ」


「とにかく、期待を悪い意味で裏切る確率が期待に比例して上がる」


「それは言えてるよね。だってさ、言われなかったら正直に驚けたかもしれないもん。……ん? ちょっと待って。これって盛大なネタバレ行為だよ!」


「まあ、そこまで言ってやるな。集客は思いの外、大変らしいぞ」


「そうかもしれないけど、これからのあおり文は控えめにしてほしいよ」



〇〇〇〇〇〇〇〇



「控えめにっていうが、それじゃあ、どんな文章にするんだ?」


「そうだなぁ……『見る人によっては面白いよ』とか」


「どの作品もそうだと思うぞ。言われるまでもなく」


「じゃあ、お兄ちゃんは思いつく?」


「いや、思いつかないな」


「諦め早いよ! でも好きになっちゃんだもん、しょうがないよね! お兄ちゃん好き!」



〇〇〇〇〇〇〇〇



「猛烈なアピールは置いておいて、俺達もあおり文章を試してみないか?」


「どういうこと?」


「次のお題は分からないから、盛大にこのお題を締めくくっておくんだ」



「それで、次のお題を期待してもらおうってことだね。これはお題の人の首を絞めることになるけど、私がお兄ちゃんの考えに逆らうはずないよ!」



「それでいい。お題の人も、そろそろ苦しんでもいい時期だろうからな。俺達だけが無理難題のトークを繰り広げていてはつまらん。お題の人に、多大なプレッシャーを与えよう」



「――で、どんな感じにするの?」


「それは、こうする。『次の部屋で、何かが起こる!』」


「お、いいねぇ」


「だろ? そんでもって『怒涛の裏切りと、読者を震え上がらせる展開の数々が待っている!』ってな感じでどうだ?」


「おぉ、これはかなりハードル上げたね。……思うんだけどさ」


「どうした?」



「お題の人のハードルも上がるけど、これだと私達のトークの期待も大きくなって、私達へのハードルも上がってるんじゃ……」



「……よし、寝るか」


「お兄ちゃん……」


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