『サングラスの部屋』
サングラス:太陽が眩しい時にかける両目の保護グラス。別途使用例アリ。
「とりあえず、大丈夫? お兄ちゃん。随分と具合悪そうだけど、急にどうしたの?」
「なんだろうな、この作品をざっと読み直した気分だ。それで、今回のお題は?」
「ズバリ、サングラスの部屋だよ!」
「また、随分と適当だな」
「最初はこんなもんだったよ?」
「確かに……今の俺ならそれがわかる気がする。何故だ」
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「よくわかんないけど、サングラス用意してあるよ! 付けてみてよ!」
「俺が?」
「うん。絶対似合う! もう完全に似合う!」
「こうか?」
「それだよ! 眩しくもないけどサングラスをかけてしまう……お兄ちゃん、たった今、ロックしてるよ! 最強だよ!」
「サングラスとロックを結び付けるのはかなり偏見だが、こうしてサングラスをかけることにも利点はあるよな。ファッション以外で」
「どんな利点があるの?」
「ポーカーフェイスになれる。少なくとも顔の上半分は」
「じゃあ、ポーカーやるときは必須だね」
「何言ってる。ただかけてるだけじゃ駄目だ」
「どうして?」
「顔の下半分が丸見えだろ。人間、大抵は顔の下半分に感情が集中するから、サングラスをかけただけじゃ効果が薄い」
「確かに……じゃあ、顔の下を手で覆えばいいんだね」
「そうだが、タイミングが重要なんだ」
「タイミング?」
「最初から手で覆っておけばいいけど、サングラスをかけた奴が途端に手で口を覆ったら、他の連中はすぐにサングラスの感情変化に気付く。つまり、ポーカーフェイスは成功しないというより、自らバラしてるようなものだ」
「な、なるほど(よくわかんないけど)。それじゃあ、サングラスをかけるだけじゃ駄目なんだね」
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「それもそうだが……女子はサングラスをかけた男には注意しないとな」
「どういうこと?」
「ほら。サングラスかけてたら、相手の視線がわからないだろ」
「うん」
「身体中が見放題で、舐め回すように見られる」
「……! もっと見て! お兄ちゃんは私だけをもっと見て!」
「今は俺がサングラスをかけているが、ふと外に出てみろ。ファッションとは口ばかりで気付かれないためにサングラスを着用し、女性の身体を凝視して毎晩夢の中で戯れているような童貞野郎もいるかもしれない」
「そ、それは嫌だよ! この身体はお兄ちゃんのものだよ!」
「はたまた、ナンパ野郎が口笛を吹いて近づいてくる前にサングラス越しに値踏みしてくるかもしれない。『はっ、あの女、胸はデカいけど顔が駄目だな』とか知らず知らず言われてるかもしれないぞ」
「想像するだけで吐き気がするよ!」
「そう、夏は特にサングラスに気を付けておく必要があるんだ」
「成程、勉強になったけど私は大丈夫だね」
「随分な自信だな」
「だって、私は既にお兄ちゃんしか見えないサングラスをかけてるから、誰にどう見られようと、誰のものにもならない唯一無二の妹だよ!」
「すまん、言ってる意味が分からん」
「文法じゃないよ。魂で感じるんだよ!」
「余計に分からん。冬にサングラスをかけるくらいわからん」
「冬の方が日光激しいんだよ? まあ、そんなことよりも、こんなお題でも私のお兄ちゃんへの愛が伝わってしまうなんて、私って罪な女だよ」
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「お前のブラコン設定って、ぶれるよな。ぶれるあまり、アピールが激しくて見てて辛いぞ」
「そんなことないもん!」
「きっとお前はキャラの定まらない妹キャラで、最終回までよくわからないまま読者に共感されることの無い残念な立ち位置のキャラなんだ」
「そんなの嫌だあああ!」
「ここで泣き叫んでる時点で、共感は得られないよな」




