『宝くじの部屋』
宝くじ:当たっても当たらなくても、不幸になりそう。
「お兄ちゃん、宝くじ当たったらどうする?」
「唐突な上に、随分とありきたりな質問だな」
「だって、今回は宝くじの部屋だから――」
「お題の人が当たったのか?」
「それはないよ。だって当たったらお題なんて出してないし」
「(お題の人って時給制なのか?)」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「それより、どうする?」
「当たるって言っても、金額はどうするんだ?」
「そうだなぁ、手頃に一億?」
「言っておくが、一般人に一億の価値は分からないぞ。よくプロ野球選手の年棒でうんたら億円って目にするけど、意味わからんし」
「そう言われるとそうだね。一億円って言われても、よくわからないね」
「だろ? だから、俺は一億円が当たったら――」
「当たったら?」
「とりあえずビルの屋上からばらまいてみる」
「なにそれ! なんかやってみたいけど!」
「それで俺は言うんだ『見ろ。貧乏人たちが懸命に紙くずを拾ってるぞ』って」
「それ完璧に悪役だよね。そういうのじゃなくて、もっと夢のあることしない?」
「夢? 薄々思っていたけど、お前は困ったら夢に走るよな」
「え?」
「夢に逃げるな! 現実を見ろ!」
「現実だと宝くじ当たってないよ」
「そうだな」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「えっとね、私はとりあえずスイーツバイキングに通い詰めちゃうかな」
「お兄ちゃん好き好き設定のお前にしては随分と普通だな」
「なんかそれ、だいぶ古いネタだよね。でも、これくらい夢のあることじゃないと!」
「成程」
「じゃあお兄ちゃん、もう一度」
「そうだな……家を純金にするとか」
「それはきっと一億じゃ足りないよ」
「じゃあ、ロケットを作ってもらって宇宙に移住する」
「それも絶対に無理だよ。一億円の価値は分からないけど、絶対に無理とだけは言えるよ」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「……」「……」
「役に立たないな、一億。こんなの、俺はいらん」
「お兄ちゃんの使い方に絶対的な問題があると思うんだけど」




