『新婚ごっこの部屋』
新婚ごっこ:新婚の真似事。ままごと。
「――というわけで」
「なにが『――というわけで』だ! 入れ替わりの部屋でとんでもない展開だったぞ! お前が俺を、あ、いや、正確には俺が入ったお前を……ああもう、ややこしいな!」
「やだなぁ、お兄ちゃん。ご都合主義だよ。ご都合主義。生きてるんだし、いいじゃん」
「……腑に落ちん」
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「じゃあ早速、今日も二人でラブラブしようよ!」
「で、今日は何の部屋なんだ?」
「新婚ごっこの部屋だよ」
「最早、お前の為に部屋の歯車が回ってるとしか思えなくなってきたな」
「それは違うよ! 歯車はお兄ちゃんの為に回ってるんだよ! ここ重要! テスト出すよ!」
「なんのテストだよ」
「お兄ちゃん好き好き検定の三級だね。ちなみに二級から一級にかけては何度が急激に上がっていき、お兄ちゃんの全てを知り尽くしていなければ突破できないんだよ。ま、私は既にマイスターだけど」
「……で、新婚ごっこだったな」
「華麗にスルーだね、お兄ちゃん」
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「新婚ねぇ。イメージなんだが、新婚って考えるほど甘々な生活を送ってるものなのか?」
「そりゃそうだよ!」
「でも、結婚の前に大体の連中が同棲するだろ? 延長線上じゃないのか?」
「そ、それはそうだけど! 姓が変わってるし!」
「姓ねぇ……芸能人って、結婚しても変えないよな。芸名」
「そりゃ、芸名だもん」
「芸名だから変えないってのはおかしいだろ。そんなんだから不倫や浮気が増えてマスコミが大喜びするんだぞ」
「そ、そうとも限らない気がするけど。でも、新婚って確かに、想像してるよりも普通なのかな?」
「その辺りをシミュレートしろと言ってるのかもしれないな」
「よし、やってみよう!」
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「ただいま。帰ったぞ」
「おかえりなさい、あなた。お風呂にする? それともご飯? やっぱり――私?」
「それ、絶対に漫画の中でしか言わない台詞だろ」
「えー、面白くないなぁ。これはあくまでもシミュレーションなんだから、乗ってくれないと!」
「……じゃあ、ご飯で」
「ご飯ってことは、遠回しに私ってことですか? あなたって、大胆。でも大好きよ」
「待て。勝手な解釈で進めるな。それに今の方法だと、風呂でも同じ展開になるぞ」
「せいかーい」
「お前の方が変態だろ」
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「でもでも、新婚ってそんなものじゃないの? 愛し合うしか興味ないって感じ。もし新婚の内にラブラブしておかないと、愛が深まらない気がするよ」
「そうか?」
「それで、旦那のいない隙に浮気に走るんだね。まったく、考えられないよ。きっと本当に好きな人と結婚できてないんだね。ちなみに、私はお兄ちゃんと結婚したら終焉までお供するよ! 婚姻から墓場まで!」
「そうか。俺は浮気するかもしれないけどな」
「ちょっとお!」
「こうみえて、俺にはそんな才能があるのかもしれない」
「ないよ! そんなモテクズ男設定は皆無! 駄目駄目駄目!」
「結局、俺達に結婚は早すぎるってことだ」
「なにその落しどころ! 私達もオーディエンスも納得してないよ!」
「言うな。有耶無耶にしようとしていたところだ」
「納得できない」
「ご都合主義ってことで処理しておこう」




