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俺と妹のただならぬワンルーム  作者: お題の人(新増レン)
1LDK(1~50)
26/102

『水着の部屋』

 水着:海やプールで着る、遊泳・潜水用の衣服。デザインが多い。


「サービス回だね、お兄ちゃん!」


「なんでノリノリなんだよ。第一、勝手に用意されてたけど、部屋の中で水着ってのは落ち着かないな」


「うふん。お兄ちゃん、こっち見てもいいんだよ? この谷間とくびれ、全部お兄ちゃんのものだよ」


「何言ってんだ? さっきから見てるだろ」



「違うよ! そこは年頃の男子らしく――もっとこう! 熱くなれよ! 燃やせよパッション!!」



「はぁ……。大体、水着も野球と似た位置にあるんだぞ」


「え、何の話?」


「……こんな話、しなかったか?」


「野球かぁ、したことないかもね」


「そうか……勘違いか」



〇〇〇〇〇〇〇〇



「それよりもさ! 水着回の定番と言えばあれだよね! サンオイル塗り!」


「なんだよ、それ」



「知らないの?

 こう、一緒に来たヒロインとかが『日差し強いなぁ……そうだ、ユウジくん、その、前は塗ってきたんだけどね、背中が塗れてなくて……オイル、塗ってくれる?』――って言って大胆にも水着を外しながら――」



「は? 日焼けしたくないなら海行くなよ」


「元も子もない! 全国八千万人のサンオイルシーン愛好家に失礼だよ!」


「すごい市場規模だな。まぁ、背中には塗りづらいだろうから、頼まれたら塗ってやらんでもない」



「――! (お兄ちゃんから、ラブコメ主人公のにおいがする! 大抵のラブコメ主人公は、こういうサービス回でお色気シーンを逃さない百戦錬磨の超人。もしかして、お兄ちゃんもその類なの?)」



「部屋の中でサンオイルはいらんけどな」


「だ、だよね」


 ヒトミは手に持っていたサンオイルをサッと背中の後ろに隠した。



〇〇〇〇〇〇〇〇



「しかし、前々から疑問なんだが」


「どうしたの?」


「海とかプールって、楽しいか?」


「出た! お兄ちゃんのインドア発言! 素敵ぃぃ!」


「……海なら、まだなんとなく潮風が気持ちいとか、楽しそうな理由はあるけど、プールはないだろ。人多いし」


「そうだね。人が多いのは確かに。でもさ、冷たくて気持ちいいよ?」


「それなら、家で浴槽に冷水を溜めて浸かればいいだろ」


「それはそうだけど。ほら、大勢だったら楽しいし」


「友達のいない奴は楽しくないだろ」


「……」


「ま、人それぞれだけどな」


「急すぎるよ! お兄ちゃんの交友関係から察して黙っちゃったじゃん!」


「修行が足りないな」



〇〇〇〇〇〇〇〇



「とにかく! 今はサービス回だから! ほら!」


「なにしてんの?」



「見せつけてるんだよ。こうして寄せれば、胸の谷間も結構あるでしょ? 飛び込んできてもいいんだよ?」



「へー、そうだね」


「うわー、全く興味なし? なら、これならどうだ!」


 シュバッ!


「どうしたんだ? 急に水着を取ったかと思えば胸を片手で隠すようにして」


「全部説明された!? ど、どう? これならグッとくるでしょ?」


「……あのなぁ、水着だからって必ずしもサービス回にするのはどうかと思うぞ」


「え?」


「第一、海に行っても水着なんて着る必要はないし、海を眺めるだけなら普段着で充分だろ。まあ、プールは無理だけど」


「で、でも! サービス回を期待してる人だっているよ!」


「それなら尚更。お前のそれはサービスにならん」


「な、なんだってぇぇぇぇええ!」


「自分で水着取るなんて、痴女だろ。ああいうのは定番のアクシデントで――ヒトミ?」


「……」


 ヒトミは灰になっていた。


「……はぁ。風邪ひくぞ」


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