『小説の部屋』
小説:これ。
「なんか、ついに時代が追いついてきたって感じだね、お兄ちゃん」
「何言ってんだ、お前」
「小説だよ小説! お兄ちゃんは読む方でしょ?」
「まあな」
「そう。お兄ちゃんは読む人間だからわからないんだよ」
「なにを?」
「文字だけっていうのが、私のような人間にとってどれだけ苦痛かってことだよ!」
「は?」
「考えてみてよ! 文字だけなんだよ? 文字だけって……最早、古文書だよ!」
「末期だな……若者の読書離れを痛感した気分だ。しかし、さっき時代が追いついてきたって言ってただろ。あれはなんだよ」
「ふっふっふ。小説というお題なら、私達は無敵だもん! 例えるなら、F1の覇者がレースで全てが決まる異世界転生して、持ち前のテクニックを生かして異世界の王になるような感じ!」
「いや、意味が分からん」
「まあ、端的に言えば、大人の事情だよ」
「(こいつに大人の事情を諭されるとは)」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「確かに、私は小説って苦手だよ? 格式が高いというか、手に取りにくいというか、同じ金額なら漫画に走っちゃう方だよ」
「典型的だな。でもまあ、小説にも利点はあるぞ」
「例えば?」
「内容が濃い。漫画の一冊に比べて遥かに濃い。漫画は絵だから制約が多いけど、小説は物語の進行速度が速い。まあ、時に物凄く遅くて内容も薄い小説もあるけど、それは漫画と同じようなもんだ」
「へぇ……で、でもさ、なんか単色の表紙とかじゃ、内容もよくわからないし、意味不明の絵柄とかじゃ手に取りにくいよ。あらすじを立ち読みするのも面倒だし……いっそのこと、漫画みたいな可愛くてきれいな表紙だったら手に取るのに!
あ、これって発明じゃない? 新ジャンル開拓だよね、お兄ちゃん!」
「もうある」
「え?」
「本屋に行けば、間違いなくあるぞ」
「そ、そうなの?」
「まあ、な」
沈黙。
からの、起承転結はなかった。




