『レベル上げの部屋』
レベル上げ:町の周囲で不眠不休。
「今日はビデオゲームをしろとのことらしいな」
目の前に設置されたのはテレビに繋がれた旧型のゲームハードだ。
「何読んでるんだ?」
「これ? 先に読めって書いてあったの」
「またお題の人か。なんだって?」
「んっとね、諸般の事情によりタイトルは口に出してはいけません。だって」
「そうか。じゃあ早速はじめるか、ピ―――(規制音)。……なんだ、今の音」
「ピーってなったね。なんか不思議。でも、七不思議の一つみたいで面白いね、お兄ちゃん」
「七不思議というより、第三者の力を感じるな……。ま、いいか。とりあえずやってみるぞ」
「おー」
〇〇〇〇〇〇〇〇
カチッ! デッデッデッデ。
「ん?『つづきから』があるな。セーブデータ、いつの間に作ったんだ?」
「私が試プレイしといたんだぁ。結構面白いから続きを――ってちょっと!? なんで『はじめから』選ぶの!?」
「ん? いや、プレイヤー名が不吉だったんでな。つい」
「えー、お兄ちゃんの名前だよ? ちなみに、ヒロインのお姫様も仲間にいるんだけど、名前はね、当然というか予想通りというかノストラダムスというか、私の名前だよ!!」
「主人公は『ユウジ』。ヒロインはそうだなぁ、『ナオ』っと」
「なんでスルーした上に初めから!? それにナオって誰なの! 私知らないんだけど!! 説明して!」
「は? 知るわけないだろ。咄嗟に作ったんだ」
「ふうん。――にしては、現実味あるよね。本当?」
「面倒な奴だな……わかったよ。つづきからはじめる」
「さすがお兄ちゃん。大好き!」
「へいへい」
〇〇〇〇〇〇〇〇
一度リセットして、『つづきから』を選択。
ピッピッ。
「へぇ、結構レベル上げてるんだな」
「うん。RPGって、黙々とやっちゃうんだよね。ふと気づいたときには、これって何のためかなって思うけど、その疑問に負けないで続ける精神力を試されてる気がするよ」
「誰にだよ誰に」
カチッカチッ。
「――で、今回はゲームするだけなのか?」
「えっとね、レベル上げの部屋だって」
「成程……おい、ヒトミ」
「ん? どしたの?」
「レベル上げすぎだろ。次のレベルまで途方もない数字が叩き出されてるぞ」
「あ、あちゃ~~。レベリングあるあるだね」
「……はぁ、やるか」
「おー!」
〇〇〇〇〇〇〇〇
二時間経過。
「や、やっとレベルが上がる」
「やったねお兄ちゃん! 交代しながらプレイすること数時間、弱い魔物を狩り続けてようやくレベルアップだね! 途中、何度も強い敵に絡まれながらも背中を向け続けてきた結果だよ!」
「ダイジェストご苦労。多分だが、俺達の戦いは編集されてるだろうから助かった。よし、これで!」
ズシャ! ポロロ~―――ギギィ。
「「え……」」
ブツン――。
「お、おい。画面暗くなったぞ」
「も、もしかして、レトロゲームあるある?」
「嘘だろ……」
バタンッ!
「お、お兄ちゃん!」
その後、新しくレベル1からはじめて、簡単にレベルを上げました。




