『人生ゲームの部屋』
人生ゲーム:人生はゲームではない。
「突然だけどお兄ちゃん、人生ゲームをしよう」
「断る」
「この部屋のお題でも?」
「……ルールを説明しろ」
「えっとね、私が作った人生ゲームなんだけど、このルーレットを回して駒を進めるの。そして、最終的に幸せな人生を送った方の勝ちだよ」
「……」
「どったの?」
「いや、製作者に不安を覚えた」
「大丈夫だよ。そんな身構えなくても」
「本当だな?」
「ひゅ~ひゅ~」
「口笛、鳴ってないぞ……。まあ、とりあえずやるしかないか」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「じゃあ、私先行ね。ちょりゃ!」
キュルキュルキュル……6。
「6だね。ほいほいっと。……えぇと、お兄ちゃんと結婚します」
「ストップ」
「どうして? これからが燃える展開だよ? 結婚して、ついに私たちは遂に血の繋がりという鎖から解き放たれるの!」
「待て。6マスで展開しすぎだ」
「えぇ~~」
「大体、こんな序盤に結婚したら、この先どうなっていくんだよ」
「もちろん、甘々なラブストーリが目白押し。やったね!!」
「勝手にやってろ」
「ちょ、お兄ちゃん! お題に逆らうの?」
「……っ! やっぱり不安は的中したな。お前が作った人生ゲームなんてこんなものだと思ってたよ」
「えへへ」
「褒めてない」
「じゃあ、お兄ちゃんが作ったら?」
「わかった。少し待ってろ」
〇〇〇〇〇〇〇〇
三十分経過――。
「まだ?」
「待て。ここで転職する際に選択できる職業が、これまでの学歴を加味するとして……」
「凝り過ぎだよ! 作る側に回ると凝り過ぎて若干周りが引くレベルだよ! こういうのは夏休みの自由研究レベルでいいんだよ! お茶を濁しても誰も咎めないから!」
「人生とは、かくも深く難儀なものである。おしまい」
「急に終わろうとしないで! ほら、やっぱり私のやろうよ!」
「……仕方ない」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「えへへ、お兄ちゃんからだよ」
キュルキュルキュル……3。
「3だな。……おい」
「ん?」
「『階段で転んで妹の胸を揉む』って、なんだこれ。CEROが上がるぞ」
「ラブコメ定番のラッキースケベイベントだよ! ほら、リアルで弾力を確かめて、想像を膨らませよう! ほれほれほ~れほれ!」
「……次、お前だ」
「はぁい。えいっ!」
キュルキュルキュル……5。
「いち、に、さん、し、ご……っと。えぇと、熱いベーゼを交わす?」
「良かったな」
「注意、このイベントはリアルに直結します。というわけらしいよ」
「待て、おかしい。さっきからリアルに直結しすぎだろ。大体、これじゃあ人生ゲームというより――」
「恥ずかしがらないで、ほら」
「ち、近づくな。目を閉じるな。唇を尖らせるなっ!」
「もうっ! お兄ちゃんのえっち」
「何もしてない! この状況を利用して文脈で勝手に既成事実を作ろうとするな!」
「――とか言いつつ?」
「逆転の展開もないぞ」
「つまんないなぁ」
「なぁ、これいつまで続くんだ?」
「え? んとね、子供が生まれて、また子供が生まれて……地球の最後、魂の消滅から楽園が再び誕生するまで?」
「お前の方が凝り過ぎだろ。いろんな意味で」




