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『悪夢の部屋』

　悪夢：嫌な夢。

「……」

「今日は悪夢の部屋だって。私こわーい。てへ」

「……」

「……お兄ちゃんどうしたの？　汗がすごいよ？」

「確認したいんだけど、あの後どうなった？」

「へ？」

「愛情表現の部屋の後だよ」

「なにそれ。聞いたことないお題だね。……でも、いいかも。お題の人に懇願しておこう。もしくは賄賂で……」

「……（あれは、悪夢だったのだろうか。あの後は、想像したくもない）」

　しかし、腕を見ると何やら掴まれたような跡がある。

　ゾワッッ――。

「お兄ちゃん？」

〇〇〇〇〇〇〇〇

「な、何でもない（考えないことにしよう）。――で、悪夢の部屋だったな」

「うん。お兄ちゃんは悪夢ってみたことある？」

「ある」

「今日は随分と機嫌いいね。ひねくれないで即答するなんて」

「ついさっき見たからな」

「えぇ～～。それは怖いね」

「お前も気をつけろよ。悪夢は、あっという間に俺たちを飲み込むんだ」

「注意するけど、悪夢ってどの程度からが悪夢になるのかな？」

「……それは、そうだな」

「恐い夢って、夢だって気づいた時には怖くなくなったりするけど、そういう感覚が一切ないのが悪夢なのかな？」

「そうかもしれないな。夢の中で夢だと認識できないようなリアリティのある怖い夢が悪夢と断定しよう」

「うぅ、そう考えると怖いねぇ。逃げ道がわからないまま彷徨う感覚なのかも」

「成程、夢だとわからないから、醒めるって知らないんだな」

「うん。それで、ずっと夢の中に閉じ込められたり」

「……それは、怖いな」

「悪夢は、見ない方がいいに決まってるよね」

「ああ」

「どうせ見るなら、お兄ちゃんとラブラブするような夢がいいもん」

「やめろ。ついさっきまで落ち着いていたトラウマを抉るな」

「ほえ？」