『愛情表現の部屋』
愛情表現:愛してることの証明方法。
「唐突だな」
「まあまあ、ようやくお題の人もこの私とお兄ちゃんの関係に気付いて、フォローに回ってくれたのかもしれないよ?
さあお兄ちゃん! 愛情表現しよう! 二人でイチャイチャのネチネチしよう! 放送規制されるようなあんなこととか、PTAに目を付けられる様なムフフな展開とかを所望する!」
「どこかで恥じらいを落としてきたのか、お前は」
「ほえ?」
「まあいい。愛情表現とは何か。これは結構哲学かもしれないな」
「そんなことないよ。愛情表現は一つ……性的なことだよ」
「よし、すぐに警察を呼ぼう」
「まだ何もしてないよ!」
「犯罪者予備軍だ」
「勘忍して! 兄妹だよ?!」
「……仕方ないか。そういえば、以前やった告白の部屋を思い出すな」
「あ、あれも一種の愛情表現だね……って、あの時は何一つ愛が育まれなかった気がするのは私だけなの?」
「安心しろ。お前だけだ」
「そっか。それなら――って、そうはならないから!」
「ちっ」
「あ、いま舌打ちした!」
「してないって」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「じゃあお題に戻るね。愛情表現の話だけど……やっぱり愛を育むような行為が該当すると思うなぁ」
「だからさっきはあんな痴女みたいな発言をしたのか?」
「痴女じゃないもん! 普通、年頃なら少しは興味持たないと変だよ」
「……それもそうか」
「興味持った? じゃあ、私と予行演習のためにキスの練習から――」
「さて、愛情表現だったな。これは人間に限ったことじゃない。動物に対しての愛情表現や、動物から人間に対しての愛情表現もあるし、歌に乗せるのも愛情表現の――」
「……」
「なんだ、日サロか?」
「こないだの部屋のネタ持ち込み禁止」
「すまん、つい出来心で」
「さっきのお兄ちゃん、なんか校長みたいだったね」
「そんなこともお題にあったなぁ」
「……(あれはお題から遠く逸れていたような)」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「校長と言えば、あのくどいスピーチも生徒達に対する愛情表現かもしれないぞ」
「……凄く傍迷惑で一方通行な愛情だね」
「なら、頬をすりすりしてほしいのか? 夏の汗ばんだ校長の、さらに脂の乗った頬で」
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
「ぜ、絶叫するほどとは」
「当り前だよ! 想像しただけで全身寒気に襲われたよ! 青ざめた顔で卒倒する自分の姿を真っ先に思い浮かべたよ! 次に見るのは保健室の天井確定だね!」
「そうか。やっぱり長いスピーチを聞くしかなくなったな」
「そもそも、長くなかったらいいと思うんだけど。それも一種の愛情でしょ? 校長はこれから、生徒への愛情を表現するために自分の自慢話をひけらかすことをやめて、自傷トークも控えて、夫婦円満かつスピーチも短くすることを義務付けるべきだよ」
「それが義務付けられたら、校長はストレスで更に自傷トークのネタが増えるかもしれないし、頭皮の方が心配になってきて……ゆくゆくは見栄を張るため、妻に内緒でカツラを購入したはいいが、あまりにもわかりやすいカツラだったから生徒は反応に困り、教師陣も腫物を扱うように接し、最終的には妻にカツラの購入がバレて、更にストレスで――」
「と、止めようのない負のスパイラルだ! いや、やめてあげて! そのままじゃ校長が死んじゃう! 死んじゃうからぁぁあ!」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「とりあえず、校長の話はやめよう。こっちに逸れたら最後、もう元に戻ることが出来なくなりそうで、ある意味怖い」
「そうだね。愛情表現だっけ。お兄ちゃんは何か思いつく?」
「そうだなぁ、妹の成長を感じながらも、敢えて何も言わずにそっけない態度で返す。それはきっと、妹に兄離れをさせるための愛情表現なんだな、うん」
「いらない! そんな愛情表現いらない!」
「どうして?」
「なに真面目な顔で問い返してるの!? 私たちの間にそんな邪魔な愛情いらないよ! そんなものくれるなら、唇ちょうだい!」
「おい、顔を近づけるな」
「ひどいっ! でも知ってるの。これはお兄ちゃん離れさせるための愛情表現。けどいいんだよ。私が最初で最後に好きになったのはお兄ちゃんだから……素直になって」
「なんか、目が変だぞ」
「そんなことないよ?」
「近い近い近い近い近い!」
「お兄ちゃん、愛をもって応えます」
――。




