『入れ替わりの部屋』
入れ替わり:マジックではなく、よくあるやつ。
「……おい、これはどういうことだ」
「あれだよ。私達、入れ替わってる!? ってやつだよ」
「描写が無いから全くわからないな。それに、経緯も何もあったもんじゃない」
「それはしょうがないよ。こういう作品だもん。入れ替わっても声とかで判断できないし」
「中身が変わっても、結局は駄弁るだけだもんな」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「あ、そうだ。せっかくお兄ちゃんになったんだから」
「(お兄ちゃんと言ってる俺を見るのは、新鮮というより不気味だ)」
「ちょっとトイレに――」
「行くな」
「いいじゃん。あ、お兄ちゃんも私の身体好きにしていいよ。ね、今の好感度上がったでしょ? こんなオープンなヒロインはいないよ! 世界で私だけだよ! 開放型ヒロインとして新たなジャンルを確立させたよ!」
「絶対に人気が出ないだろ、それ。恥じらいはないのか?」
「お兄ちゃんになら、見られてもいいし、触られてもいいの」
「真顔で言うな。俺の顔だから気持ち悪いんだよ」
「ぶぅ。お兄ちゃん、そう言いつつも本当は興味あるんでしょ?」
「は?」
「だって、おっぱい触りまくりの揉みまくりだよ。ここから見てる分には、私が自分の胸を触るだけだから、なにも危険なことはないよ!」
「ありまくりだ。少なくとも状況を理解してるオーディエンスに見られる」
「えぇ~~。なんなら下も――」
「お前はもう喋るな。大体、さっきから俺が変態発言してるみたいじゃないか」
「まあ、第三者から見ればそうだね。ん、待てよ?」
「やめろ。何を思い付いたか知らないが、やめてくれ」
「お、俺、ヒトミの事、好きだ」
「……」
「妹とか関係なく、好きだ!」
「キモい」
「そんなっ! お兄ちゃんも私になりきってよ! 私なら一も二もなく抱き付いてハッピーマリッジエンドまっしぐらだよ!
おまけに公式公認のベストカップルとして扱われて、色んな作品の中で口々に語られたり、実はこの世界と他の世界の時間軸が一緒だったり、色々と後付けの設定がもらえるのに!」
「後付けって言ってる時点で駄目だろ。しかし、お題の人がお題を出すだけで入れ替わるなんて、どんなファンタジーだよ」
「あ、今のもストックされたんじゃない?」
「……」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「まあ、こうして入れ替わったわけだけど、どうする?」
「何もしない。戻るのを待つだけだ」
「つまんないなー。美少女と入れ替わるなんて、滅多にないよ?」
「あってたまるか」
「考えたことないの? もし、美少女と入れ替わったら、あんなこととかこんなこととかしほうだいだなグフフフフって」
「ない」
「お兄ちゃん、やっぱり夢が無いんだね。でもそんなお兄ちゃんも好き」
「キモい」
「ちょ、いつもより当たり強くない?」
「そりゃあ、いつも鏡で見る自分が、目の前で自分大好き宣言してたらキモいだろ」
「あ、そうなるのか。ふむふむ。じゃあ試しに、お兄ちゃんも私の身体で何か言ってみてよ」
「……お兄ちゃんのこと嫌い」
「んなっ! そ、そんなことあるわけないだろ私イイイイイイ!」
「なっ――!」
ドカッ!
「あ、つい手が滑って……私? あ、いやお兄ちゃん? やだ、どうして冷たく……嘘でしょ? だって、身体私のままだし、ってことはお兄ちゃんが? 嘘だよね?」
「……」
「おにいちゃあああああああああん!」




