『告白の部屋』
告白:何かを打ち明けること。恋や罪、色々と。
「「…………」」
「じゃあ、まずは俺から――」
「ごくり」
「昨日、告白されたんだ」
「告白されたことの告白!? そ、そそそそそれでどうしたの、お兄ちゃん!」
「どうやら相手を間違えたらしくて謝罪された。隣の下駄箱に入れるはずのラブレターを焦って俺の下駄箱にいれたらしい」
「……やったぁ」
「重力に逆らって浮かぶほど嬉しいのか」
「だってお兄ちゃんの彼女になるかもしれなかったんだよ! 成立したらすぐ破滅に追い込んでやるんだから」
「真顔で怖いこと言うな。それより、お前は何かないのか?」
「告白? それならお兄ちゃんの事が生まれた時から――」
「そこはもういらん。大体、告白するまでもなく何度も言われているから、衝撃は一つもないぞ」
「衝撃が必要なの?」
「そりゃあ、告白っていうからには少しくらいの衝撃を与えるようなものじゃなきゃつまらないだろう。……とは言っても、ここで血が繋がっていませんでした、てへり。――なんて告白されても現実味がないけどな」
「繋がってないよ!」
「間違いなく繋がってるから安心しろ」
「……それはそれでいいかも。くへへへ」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「ほら、気味悪い笑みを浮かべてないで、とっとと告白しろよ」
「そ、そんないきなり言われてもなぁ~~、うんと、えぇと、あ、そうだ」
「何かあったのか?」
「ふっふっふ」
「なんか笑い方からして期待外れ臭がプンプンするんだが」
「今朝ね?」
「ああ」
「大好きなお兄ちゃんの寝顔を、そっとデジカメでパシャリと――」
「……っ!」
本気で引いた。
「そ、それより、部屋は別々で寝てるんだから、撮れるはずないだろ」
「甘いよ、お兄ちゃん。たとえ別の部屋だろうと、私の忍び足を使えばベッドの中にだって潜入できるんだから」
「さすがにそれは気付くだろう」
「これまで、五戦五勝の負けなしだけどね」
「……(こいつの前では、おちおち寝られないな)」
「あぁ、思い出すだけでも身体に焼き付くようなお兄ちゃんの熱量……身悶えするほどに恋しいよぉ」
「気持ち悪いぞ」
「――ってことでお兄ちゃん」
「ん?」
「今すぐホールドオンミィィィィ!」
「や、やめろくっつくんじゃない! 告白はどうした告白は!」
「そんなのもう関係ないよ! 罪を告白するくらいのシリアスな展開がお望みだったら、なんたら賞とか風情のある小説を読めばいいんだし、こんなに愛し合ってる兄妹に今更秘密なんてないもんね!」
「………………あ、ああ」
「え、何その間。そこは即答でしょ?」
「……」
「そ、そうだ確認しよう。私は当然、今朝の出来事以外は何も隠し事なんてしてないよ。もう、裸同然だもん。ほら見てよこのボディライン! って、あれ?」
「……」
「(り、リアクションが無い?!)お、お兄ちゃんも隠し事なんてしてないよね?」
「すまん、お前には言えない」
「そ、そんな。で、ででもここは告白の部屋なんだよ? 何か抱えてるなら、一緒に考えてあげるよ! お兄ちゃんには私がついてるもん!」
「ヒトミ……」
「さぁ、洗いざらい話してよ。喉に刺さってるもの全て。そしたら、ハグしてあげるから」
「いや、ハグはいらん」
「あ、そ、そう」
「いいか。絶対に怒らないと誓えるか?」
「もしかして、私に関すること? もしかして本当に血の繋がりがっ!」
「それはない。……お前のケーキを食っただけだ」
沈黙が訪れました。