#6 彼女のナミダ
お久しぶりです( *´艸`)
やっと続きを投稿することができました…。
1年ぶりです(;´・ω・)
どうかよろしくお願いします!
「傷物にするんじゃねぇぞ!大事な商品なんだ。丁寧に檻にぶち込め」
薄汚れたローブで顔を覆った6人の男たちが、狐人族たちを拘束し鉄のような物で作られている大きな檻の中に入れている。
「離せ!人間め!」
「おーっと、大人しくしてな、っと!」
拘束されるのに抵抗した狐人族の少年が身長2mはあるのではないかと思われる男に腹を蹴られうずくまる。
「アルン!?」
蹴り飛ばされた少年の母親だろうか、1人の狐人族がうずくまる少年―アルンのもとに駆け寄る。
「けっ!大人しく檻に入りゃあ痛い思いなんてしねーのによ!」
「ゾル、それくらいにしておけ。とっとと仕事を終わらせるぞ」
同じくローブで身を包んでいる、ゾルと呼ばれた巨体の男とは真逆の細身の男、ルギィが低い声で言う。
「へいへい。それにしてもよ、こんだけいりゃあ1人や2人俺らがいただいてもばれねーんじゃねーのか?」
「馬鹿を言うな。もしばれて俺らの信頼が落ちたらどう責任をとるつもりだ」
「かぁ!旦那は堅いねぇ。ばれやしねーって!奴隷商人の奴らだって、ここにいる狐人族の数なんて把握してねーんだろ?なら問題ねーって!」
「ゾル。いいから、今は仕事に専念しろ。」
「あーあ、しょうがねーなぁ!」
ルギィとゾル、そして他の4人の男たちは抵抗できない狐人族たちを次々と檻に入れていく。
彼らは冒険者の中でレッドネームと呼ばれる犯罪者グループだった。
冒険者とは、各都市に存在するギルドと呼ばれる自由組合(どの国にも属さず、戦などの争いや魔物と呼ばれるモンスターを狩ることを生業とし生きている人々をまとめ上げる組織。組合のトップに君臨する自由組合本部長も、過去には世界に名を轟かす冒険者だった)に所属している戦いの猛者、戦いのエキスパートだ。だが、ルギィらのように中には犯罪を犯して金を稼いでいる者も存在していた。表面上は真っ当な冒険者として活動をしているが、陰で犯罪に手を染めているのだ。そんな彼らは各国から指名手配され、国の衛兵や同じギルドからも追われている。
「旦那もいっぱつかましたいんじゃないですかい?最近の長旅で溜まってるでしょう?」
ゾルは厭らしい笑みを顔に浮かべる。
「亜人には興味がない」
「…はぁ、本当に旦那はつまらねー男だぜ」
「……。」
そんな彼らは作業を続ける。弱者を捕らえ、自由を奪う作業。
もう慣れたものだった。悲鳴も、鳴き声も。最初は金欲しさで始めた裏の仕事。だが、その1回1回で稼げる金の規模は小さくなかった。1度その味を知ってしまっては、もう手を引くことなどできまい。
だから彼らは作業を続ける。すべては自分の幸福のために。
「そんな…」
チッタの口からこぼれた言葉には、絶望が感じられる。俺自身、今目の前に広がっている現実を受け入れられないでいる。
遠くでは狐人族の戦士たちが冒険者と戦っている。
目の前では非力な子どもやその母親が拘束され、檻に放り込まれている。
「ゆうひ様、お願いがあります」
チッタが意を決したかのように、今まで閉じていた口を開いた。
「わたしは彼らを助けに行かなければなりません。おそらく、3ツ尾であったとしてもまともに妖力を操れるのはこの場でわたし1人です。ならば、わたしが助けに行かなければなりません…」
チッタの足が震えている。
3ツ尾、それは狐人族の中で最弱を意味する。まともに妖力を操れるとしても、対する冒険者は6人。人数でも、そして戦力でもチッタが劣る。
「ですからゆうひ様、どうかお1人で逃げてください。南の方角に人間の都市があります」
そんなことはチッタ本人もわかっている事だろう。だが、チッタは俺に笑顔でそんなことを言ってくる。
「そんなこと、できるわけないじゃないか!」
「いいえ、ゆうひ様。ゆうひ様はこの場からすぐに逃げるべきです。あの冒険者は武装してます。ゆうひ様は武装もしていなければ妖力も、魔術も使えません。そのような身で挑むなんて自殺行為です。ゆうひ様がこちらの世界に来た理由はわかりません。ならば、このような場所で、わからないまま終わってしまうなんてことはあってはならないことだと思うのです」
ですから、とチッタは言葉を続ける。
「どうか…お逃げください。ゆうひ様にお会いできて、本当によかったです。ゆうひ様と一緒にいると、とても不思議な感じがするんです。族長の間での事、フォルク様にゆうひ様は何か言おうとしてくださいましたよね。それがとても、とても嬉しかったです。短い時間ですが、ゆうひ様とお会いして、お話しできてよかったです」
チッタの浮かべる笑顔に、1粒の雫がこぼれる。
だめだ。
「生きてください、ゆうひ様。わたしたちはきっと大丈夫です。すぐにイロリ様達が駆けつけてくださいます」
だめだ。
「では、ゆうひ様。行ってきます」
チッタが冒険者のいる方へ駆け出す。
一直線に、迷いなど感じさせない速さで。
だめだ。
何度も口から出かかっていた言葉は、ついに彼女に届けられなかった。
ただ、危険な場所に向かっていく彼女の後姿を見つめるだけの自分。
どうして、俺はこの世界に来たんだ。
俺の頭の中には、そんな漠然とした疑問と、最後に見せたチッタの顔が浮かんで離れなかった。
読んでいただき感謝です!
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