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#2 夜道の鬼ごっこ

文章を直すのに、一度文をコピーしてみたのですが

想像以上の紙の量で少しビビってしまいました(;´・ω・)

 他愛のない会話を楽しみながらほのかの家に向かう。

 

 こんなに誰かと会話をしたのはいつぶりだろうか。

 

 周りの風景が見慣れた風景になっていく。建物が再建されたり、あの頃はあったはずの店が入れ替わったりしていて、今まで違う街を歩いてるのではないかと錯覚していたのだが、ほのかの家が近づいてくるにつれてあの頃の感覚が戻ってくるのを感じる。

 学校からほのかの家までは、スーパーを経由して徒歩40分ほどだった。小学生の頃はこの辺りでも遊んでいたはずなのだが、3年間でこんなにも変わってしまうものなのだなと感傷に浸ってしまう。

 

 「ほのかはどうして今の高校に進学したんだ?」

 

 ふと、疑問に思ったことを聞いてみる。今の高校の偏差値はそれほど高くない。ほのかはほわほわした雰囲気ではあるが勉強ができないわけではない。むしろできる方なのでもっとレベルの高い、進学校に進学できたはずなのだ。

 

 「んとねぇ、ゆうくんは覚えてるかなー?小学6年生の時に2人で今の高校の文化祭に行ったの」

 

 当時の事を思い出しているのだろうか、ほのかは既に日の落ちた夜の空を見つめている。そこには大きな満月が俺たちを見下ろしていた。

 

 「すーっごく楽しかったんだぁ。初めて2人でお化け屋敷入ったり、ロミオとジュリエットの演劇観たりしてさ。はしゃぎすぎて帰る時間が遅くなっちゃってお母さんに怒られたり…」

 

 俺もその時のことをはっきり覚えている。

 確かに、楽しかった。すごく楽しかった。

 

 「それが進学を決めた理由だよ」

 

 「…え?」

 

 それが進学を決めた理由?文化祭が楽しかったから、という理由だけで高校を選んだのだろうか。おかしいことではない。ないが、なんとも腑に落ちない理由だった。

 もう少し聞いてみようと口を開こうとするが、ほのかの家に着いてしまう。

 

 「とーうちゃーく!さぁゆうくん、すき焼きの時間だよ!」

 

 ほのかはそう言うなりただいまーと家の中に入ってしまった。かなりすき焼きが楽しみだったのだろうか。

 まぁ、彼女らしいといえば彼女らしいか。

 

 「…お邪魔します」

 

 ほのかに続いて俺も家の中に入る。進学の理由についてはいつでも聞けるし、また明日でいいだろう。そう思いながら。



 


 「今日は来てくれてありがとね。久しぶりにゆうくんの顔が見れて嬉しかったわ。またいらっしゃい」

 

 「また美味い肉用意しとくからな。はっはっは!」

 

 ほのかのお母さんとお父さんが玄関まで見送りに出てきてくれる。一人暮らしは大変じゃないか、お金は足りてるのかとか、本当の親みたいに心配してくれた。ほのかだけでなく、ほのかのご両親もあの頃と変わっていなかった。

 

 「何かあったら必ず相談するんだよ、いいね」

 

 ほのかのお父さんが夕日の肩に手を置いて、真っ直ぐ俺の目を見てそう言ってくれる。

 

 「はい、お願いします」

 

 正直、嬉しい。俺を支えようとしてくれる人がいてくれたことに。

 普段の学校生活では単独行動の多い俺は、他人(ひと)からの気遣いから遠いところにいたからだ。

 

 「ゆうくん、ちょっとそこまで送ってあげるよ」

 

 ふへへ、とほのかが笑う。

 

 「ありがと。今日はごちそうさまでした」

 

 ほのかのご両親に頭を下げて、自分が住んでいる家に向かって歩き出す。その後に、ほのかも付いてきた。

 

 「おいしかったねーすき焼き。また食べたいなぁ」

 

 「だな」

 

 少しの間静かな時間が訪れた。暗くなった夜道に、ぽつぽつと明かりを灯す街灯。なぜだか、祭りの後のような感覚が押し寄せてくる。

 

 「はい、ゆうくん」

 

 ほのかがおもむろに何かを俺に渡してきた。暗くてよくわからないが、手紙か何かだろうか。

 

 「ん?これは?」

 

 「開けてみてからのお楽しみだよぉ」

 

 ふへへ、とほのかが笑う。

 

 「……おう」

 

 俺は不思議に思いながらも学校のバックの中に入れた。

 

 「それじゃあ…また明日ねー」

 

 ほのかの家から少し歩いた所の曲がり角で別れを告げる。

 

 「今日はありがとな。また明日」

 

 ぶんぶんと大きく手を振るほのかに軽く手を振って歩き出す。ほのかに渡された物が気になったが、家に着いてから確認することにした。



 俺が住んでる家は、ほのかの家とは学校から逆の方向なのでやや距離がある。

 人通りの途絶えた道をひたすら歩く。

 ほのかが高校を選んだ理由が、まだ少し気になっていた。確かに、2人で行った文化祭は楽しかった。だが、それを理由に進学を決めるとは到底思えない。中学校の3年間のこともある。何か、他の理由でもあるのではないか。進学理由なんてどうでもいいことだが、なぜだかもやもやした気分になる。

 そんなことを考えていたからか、後ろから聞こえてくる足音に気付くのが遅れてしまった。周りのは誰もいない。不気味なほどに誰もいない。そんな中で、夕陽と一定の間隔を空けて付いてくる足音。

 

 「まさか、な」

 

 最悪のパターンを思い浮かべる。

 金目当ての通り魔か…?

 近頃、ニュースを確認していなかったことに後悔する。そのような事件が近所で起こっていたことを知っていれば、何かしらの対策はしただろう。だが、もう遅い。こうなれば全力で逃げるしかないだろう。幸い、体力には自信がある。

 ふーっと、長く息を吐く。準備はできた。あとは、

 

 「全力で走る!」

 

 バックを左脇に抱え込み、全力で走り出す。後ろの足音の正体が、普通の歩行者だったら、俺はどんなふうに思われるだろう…。

 しかし、後ろの足音も俺が走ると同時に走り始めた。なぜだろう、と疑問に思う。金目当てだとしても、わざわざ逃げる相手を追いかけるだろうか。

 何か恨まれるようなことをしただろうか。いや、まずほとんど誰とも話していない時点でそんな心当たりなんてものはない。なら、なぜだ?

 徐々に足音が遠くなっていく。逃げ切れるだろうか。そう思った矢先、背後からはっきりとは聞き取れなかったが声が聞こえた。

 直後、上空から2つの人影が落ちてきた。

 

 「っ!?」

 

 慌てて立ち止まる。目の前の人影は、形容するならば「黒」だった。夜の闇の中に、さらに暗い闇が2つ。この世の物とは思えないソレに身体が震える。後ろから追いかけてきていた足音もだんだん大きくなり、やがて、止まる。そちらの方に目をやると、同じようにソレが1つ。

 

 囲まれた。

 

 「くそっ!なんなんだよお前らは!」

 

 だが、返事はない。

 どうすればいい!?どうすればこの状況から抜け出すことができる!?

 すると、上から落ちてきたソレの1つが、ゆっくりと近づいてくる。

 とっさに抱えていたバックをソレに思いっきり投げつける。突然の出来事にソレがひるむのが気配で感じた。

 

 「おらぁぁあっ!」

 

 バックを投げつけたソレに思いっきり体当たりする。思いの他、手応えなくソレは倒れこむ。

 この隙に逃げるしかない!

 体当たりの勢いをそのままに、再び走り出す。上から落ちてきたもう1つのソレが伸ばす手(?)を避けて思いっきり走る。すると、後ろから3つぶんの足音が追ってくるのが聞こえる。

 

 「なんでだよ!なんで追いかけてくるんだよ!」

 

 もちろん返答はない。もう訳が分からなくなってしまった。この世の物とは思えない黒い存在が追いかけてくる。それはもう恐怖でしかなかった。捕まったらどうなるのだろう。考えたくない内容が次々と頭をよぎる。




 ………ほのか

 



 なぜか、彼女の笑った顔がふと頭に浮かんだ。きっと大丈夫。そう言っているかのように思えた。

 

 「捕まって…たまるかよ」

 

 ぐっと、走り続ける足に力を込める。依然として後ろからソレは追いかけてくる。だんだんと近づいてくる足音に追いつかれないようにしなければ…。

 ふと、街灯に照らされる路地裏への入り口が目に飛び込んでくる。

 真っ直ぐ走り続けてもそこは見通しのいい一本道だ。逃げるなら、少しでも入り組んだ場所の方がいいだろう。そう思ったのはすでに路地裏に入ってからだった。まるで吸い寄せられるように路地裏を走り抜ける。


 走る、走る、走る。

 ただひたすらに走る。

 もう後ろから足音は聞こえない。

 それでも走り続ける。

 少しでも遠くに、ソレが追いかけて来れないような所に!

 目の前に明かりが見える。路地裏の出口だろうか。

 

 とりあえず、路地裏を抜けたらこれからの事を考えよう。どうにかして家に帰らなければ。もう身体と精神はヘトヘトだった。早くシャワーを浴びて布団に入って寝てしまいたい。今日はもう疲れた。その疲れは全力で走り続けただけではないだろう。

 明かりに向かって走る。徐々に明かりが近づいてきて、ついに、路地裏を抜けた。



 するとそこには、見た事のない草原が広がっていた。 

ところどころ誤字を発見し、「これはイカンっ」とささっと修正…

私が気づけなかった誤字・脱字がありましたら教えてくださいネ!

…後でこっそり修正しときますので笑

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