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#15 妖術入門講座

試験期間ですが少しずつ筆をすすめてみました(*'ω'*)

よろしくお願いします!!

 金色の焔と青い焔がぶつかり合い、激しい衝撃が空気を振るわせる。

 結果、相殺され火の粉を周囲にまき散らしながら1対の焔は消えた。



 「ほぉ、ウチの妖術と同等の威力かえ?これは恐れ入りましたわ」

 「……それは…どうも…」



 涼し気にニコニコ笑顔のイロリに対して、夕陽は額に汗を浮かべ肩で息をし、余裕のない状態だった。チッタはあたふたと落ち着きなく2人の特訓風景を見つめている。いつの間にか集まってきた狐人族のギャラリーは、どこか興奮を抑えられない様子で特訓を見つめていた。



 「ええどすなぁ、吸収の早い生徒ちゅうんは。教えがいがあるっちゅうもんどす」



 イロリの特訓はまさにスパルタだった。最初に簡単な妖術の概要を口頭で説明した後に実戦形式での指導という流れになった。もちろん、初心者の夕陽にとっては勘弁してほしい状況だったのだが、指導をするイロリはというと楽しんでいるようである。時々「ふふ」「がんばれ、がんばれ」と小声で言いながら妖術を夕陽に向けて容赦なく放つ。初めは威力も弱かったのだが、徐々に強くなっている。そのため、夕陽は必死である。下手すれば大けがで済まされないだろう。にも関わらず、イロリは次々と妖術を放ち続ける。



 「さて、そろそろ終いにしよか」

 「はぁ…はぁ…ありがとう…ございました」



 ギャラリーから歓声が上がる。

特訓が始まって小一時間が過ぎようとしていた。あまりにも密度の濃い時間だったため

に夕陽はその場に崩れ落ちるかのように座り込んでしまう。



 「ゆうひ様!?」



 慌ててチッタが夕陽のもとに駆け寄る。



 「いやぁ、実に楽しい時間やった。こないに楽しい感じたんいつぶりやろか」



 対して、イロリは満足げに夕陽のもとへ優雅に歩いている。まるで今までのことがなかったかのように涼し気である。



 「これでゆーひさんは妖術上手につかえるようなったんやね」

 「イロリ様…少しやり過ぎなのではないでしょうか」

 「それは…否定できひんけど」



 あまりの疲れに立てない夕陽を支えていたチッタが、イロリに責めるような視線を送る。その視線に珍しくイロリがたじろぐ。



 「どうしたどうしたこの人だかりは…ってイロリ様!?」



 そこへ先ほどまで夕陽に妖力のコントロールの仕方を指導していたフォルクが狐人族のギャラリーをかき分けて戻ってきた。そしてイロリの存在に驚きすかさず片膝をつく。



 「こ、これはイロリ様。この度はどのようなご用向きで」

 「ふむ。少しゆーひさんの様子が気になったさかい」

 「左様でございますか…して、いかがでしょうか」



 何がいかがなのだろうか…

 その場にいた誰もが思っただろう。だがイロリは気にした様子もなくとんでもないことを言う。



 「せやなぁ。…フォルク。お前さん、ゆーひさんと勝負しなはれ」

 「「「…え?」」」



 誰もが予想していなかった発言に皆言葉を失った。



 …どうしたものか。



イロリの発言により、夕陽はフォルクと対峙していた。イロリとの特訓が終わって間もないというのに、と夕陽は内心ため息をつく。もちろん疲れはとれていない。フォルクの尾は6つ。イロリほどではないものの、高い妖力の持ち主だと推測される。



 ふん。わしがいない間に何があったのかはわからんが、小僧と勝負とな。いやはや、これも小僧のイロリ様に対する無礼の数々、後悔させてやろうかの。



 対するフォルクはというと、俄然やる気であった。崇拝するイロリの前での勝負。良いところを見せるチャンスである。

 肩を回しながらどのように勝負を決めるか思案する。特訓という名目上、夕陽の実力を測らなくてはならない。なので、適当にあしらってから大きい妖術で夕陽に負けを認めさせればいい。そう考えていた。



 「小僧、準備はいいか?」

 「…あぁ」

 「ふん。胸を貸してやるから、全力で来なさい」



 フォルクはちら、とイロリの様子を見る。

 すると彼女はうっすらと目を細め、淡い笑みを浮かべている。それを見たフォルクはよりやる気を高める。自分は期待されている、と。

 対する夕陽はそんなイロリを見て、「ぜったい楽しんでるよなぁ」と、もう何度目かわからないため息をつく。



 「ルールは簡単。どちらかが先に相手に1本とったら勝ちや。怪我したらウチが治してあげるから、思いっきりやりよし」



 そんな2人の感情を知ってか知らずか、イロリは開始の合図を出し、夕陽とフォルクの勝負が始まった。












 イロリの開始の合図に合わせ、夕陽は体内の妖力の流れを活性化させる。

 妖力を四肢全体に…指先足先、毛細血管の抹消部に至る隅々まで巡らせるイメージ。そうすることで、筋力や脳からの伝達を加速させて瞬発力を最大限まで高め、普段の数倍もの身体能力を発揮できるようにする“身体強化”。夕陽がイロリから最初に教わった妖術だ。

 妖力の流れを活発にしたことにより、夕陽の青みがかった妖気が九尾の形を形成する。

 おぉ…と、2人の様子を見守るギャラリーから感嘆の声が漏れる。



 「やっぱゆーひ兄ちゃんはすげぇや…!」

 「なんと立派な尾を…」

 「きゃー! かっこいい…です」



 それを聞いたフォルクは、あまりいい気分ではなかった。



 ふん。妖気の形は予想外だったが、それだけじゃろ。はしゃぎよってからに。これだから若いもんは…



 眉間のしわを更に深くして、あからさまに不機嫌になる。だが、自分の勝利を信じて疑わないフォルクは、夕陽を挑発する。



 「はん!妖力のコントロールはましになったみたいじゃな!だがそれだけではわしには勝てんぞ。先手を譲ってやるから、思いっきり来い!小僧!」

 「…じゃあ、ありがたく」



 夕陽はさらに妖力を練り上げる。

 夕陽の周囲に青い火球が5つ出現する。


―“鬼火(オニビ)


 狐人族が好んで扱う妖術の1つで、汎用性に優れており扱いやすいのが特徴である。火球の数や大きさを調節したりすることでアレンジが効き、様々な場面で使えるのも人気の理由の1つだ。もちろん、その調節には高度な妖力のコントロール技術が求められるが…。



 い、5つじゃと!?



 夕陽がさりげなく出現させた5つの火球。フォルクもできないことは無いのだが、かなりの技術が求められるレベルであり、つい先ほど妖術を習っただけでは到底成し遂げられないことであった。

 これにはフォルクも驚きを隠せないでいた。

 驚くフォルクの姿を見て、イロリは楽しそうに笑う。チッタはというと、ただ夕陽を見つめ「…ゆうひ様」と目を輝かせるばかりだった。

 夕陽は出現させた5つの火球をフォルクに向かって放つ。



 小癪なっ!



 フォルクは咄嗟に身体強化を行い、大きな火球を出現させ放つ。その技術は洗練されており、無駄のない妖力のコントロール技術によって編み出された鬼火は、夕陽の放った5つの火球を飲み込み、相殺、爆発する。夕陽とフォルクの間、火球同士がぶつかり合った場所に爆炎が立ち込める。



 まぁ、予想外な展開ではあったがこんなもんじゃろ。しかし…あの短時間でどれほどの技術を身に着けたのやら…。



 もうもうとする煙の向こうに目を凝らしながらフォルクは次の手を考える。次はどのような攻撃をしてくるのか、夕陽がどれほどの技量の持ち主なのか、もう予想がつかなくなっていた。



 次は何じゃ?鬼火か?それとも他の妖術か?



 「っ!?」



 ――瞬間



 フォルクは咄嗟に後方へ跳んだ。すると、先ほどまで自分がいた場所一帯が青い焔によって埋め尽くされている。遅れて、空から降りてくる人影。



 上からじゃとぅっ!?



 フォルクは背中に冷たい何かが流れるのを感じていた。一瞬反応が遅れていれば、夕陽の攻撃を食らっていたという事実に驚愕を隠せない。なんとか長年の経験か来る一種の「勘」によって間一髪避けることができたが、攻撃の威力といいフォルクは寿命が縮む思いだった。



 「…ちっ、避けられたかぁ」



 難なく地上に着地した夕陽が、自らが放ち今も尚燃える焔の中心で次の手を考える。

 自分の火球とフォルクの火球をぶつけ合い、爆発させて相手の目を眩ませるところまでは計画通りだった。そこから身体強化で強化された脚力で空中へと跳びあがり、制御できる最大の妖術“火焔(カエン)”をフォルクめがけ放ったのだ。



 そう甘くはなかったってことか



 夕陽は内心歯噛みする。今の一撃で勝負を決めようとしていたのだが、それも上手くいかず、攻める術を見失っていた。今夕陽が使える妖術は身体強化と鬼火、火焔くらいしかない。

 ふと、先日のチッタと冒険者の戦闘を思い出す。チッタは今の夕陽のように遠距離ではなく、極めて近距離での戦闘を繰り広げていた。相手の持っていた魔道具(アーティファクト)との相性が悪く動きに精彩を欠いていたが、それでも相手を圧倒しかけていたのは確かだ。

 夕陽はチッタの戦闘スタイルをイメージして自分の動きにトレースする。

 夕陽は武器を装備していない。ならば…



 俺が武器になればいい…!



 中学時代。海外の学校に通学していた夕陽は、異国人として同じ学校のクラスメイトや先輩から虐めにあっていた。負けず嫌いだった夕陽は「やられたらやり返す」スタイルで日々喧嘩を繰り返していた。独学で拳闘術も学んでいたため、最初はやられっぱなしだった喧嘩も、そのうち返り討ちにしてしまうほどの実力だった。

 夕陽は己の妖力の流れを更に活発にさせるようにイメージする。身体の隅々まで…細胞の1つ1つにまで妖力が行き渡るように。その妖力の流れの速さに合わせて、妖気の大きさも大きくなっていく。うっすらとしか現れていなかった、九尾のシルエットが濃く現れる。夕陽の口が鋭く吊り上がる。



 1発きめて、あのじじい(フォルク)にぎゃふんと言わせてやる!



 この時、夕陽はこの状況を“楽しい”と確かに感じていた。今まで使えなかった異常な能力(チカラ)。段違いに上がった身体能力、内側から湧き出てくるような高揚感に自然と夕陽の心は踊る。



 夕陽はさらに強化された脚力で大地を蹴り、フォルクめがけて疾走(はし)る。

 フォルクの目の前に”一瞬”で到達し、勝負を決めるために右腕を振り上げる。






 そして――



















久々の戦闘回でしたが…どうでしたか?

感想・評価いただければ喜びます( *´艸`)

今週は試験期間でおそらく更新できませんので把握お願いします!!

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