#9 理由
おっまたせしましたぁ( *´艸`)
8話からいっきにとばして11話を投稿して、満を持しての9話です!
よろしくお願いします!
「チッタぁぁぁぁぁぁあああああっ!!」
どうしてだろうか。
「ゆうひ様!?」
どうして俺はこんなにも必死になっているのだろうか。
どうして…
チッタに向けて放たれた黒球が、夕陽に直撃する。
「…!?」
夕陽の身体が地面に転がり、辺りに赤い血が広がっていく。
「ゆうひ様!?」
チッタが慌てて夕陽に駆け寄り、膝をついて傷口に手を当てる。
「…怪我はないか…チッタ」
「はいっ、わたしは無事です…ですが、どうして…」
チッタは涙を堪えながら、あふれる血液をなんとかして止めようと必死に傷口を押え続けた。温かい血液とは逆に、徐々に冷たくなっていく夕陽の身体に焦りを覚える。
「無駄だ、狐人族の娘。魔術をまともに受けたのだ。意識があるだけで奇跡に近いだろう」
黒球を放ったルギィがゆっくりと近づいてくる。
「…!!」
素早くチッタが夕陽をかばうように身体を起こす。
それを気にする様子もなくルギィは歩き続ける。
「黒髪の少年、なぜ狐人族の娘をかばった。その行為に何のメリットがお前にある?」
それは純粋な疑問。
「その娘はお前にとって命を懸ける程の存在なのか」
何年も前に失くした何かが、そこにはあるような気がして…
「何がお前をそこまで駆り立てるのか」
ルギィは立ち止まる。
血の海に浮かぶ黒髪の少年を真っ直ぐに見下ろす。
「…さぁな」
今にも消え入りそうな声で夕陽は答える。その目はかすみ視界がはっきりしているのか定かではない。
「…そうか」
ルギィはそれだけ呟き、右手を夕陽に向ける。
「悪いが、私達も生活がかかっている。どんなに汚い仕事でも、どんなに他者を傷つけようと、私は…私達はこの仕事を成功させなければならない」
ルギィの体内に存在している魔力が、空気中の魔素に干渉し、1つの現象を出現させる。
「そのためには邪魔な存在は消さなければならない」
練られた魔力が、黒い球体を生み出す。
「…楽にさせてやる」
「ふっざけるなぁぁぁああっ!!」
怒号と共に、片腕を失くした巨体の男がもう片方の腕で剣をルギィに振り下ろす。男の目は怒りに燃え、焦点が合っていないように見える。脂汗で濡れた顔面は青白い。
「好き勝手なこと言いやがって!汚い仕事?うまい仕事の間違いだろう!?そんな風に思っているのはお前みたいにオモテの世界で落ちぶれたヤツらだけだ!強者である俺らが!弱者であるヤツらを糧にするのは自然の摂理だろぉ!?」
ルギィは魔術の発動を中断させ、巨漢の男…ゾルの斬撃を避け静かに見つめる。
「へへへっ、こんな楽に稼げる素晴らしい仕事なんてねぇだろ!お前だってその胸のどっかじゃ思ってたんだろう?惚れた女のためだか知らねぇが、金が必要だったお前に手を差し伸べてやったのは俺だろ?俺のおかげであの女も生きられているようなもんだろ!」
「黙れ下種が!!」
それは突然だった。
静かに話を聞いていたルギィが吠えた。
瞬間、ルギィの体内の魔力が放出され爆風が起こった。
その衝撃に夕陽とチッタ、ゾルは吹き飛ばされる。
「ゆ、ゆうひ様!?」
態勢をすかさず整え、チッタは夕陽の下に駆け寄る。
夕陽の身体に触れ、その冷たさにチッタの表情が固まる。まだ息はある。細い吐息がかすかに胸を上下させていた。
どうにかして、どうにかしてゆうひ様をお助けしなければ…!
自分をかばって傷を受けた黒髪の少年。
今度は…わたしの番です。
チッタは夕陽の傷口に手を添えて、ある決断をする。
目を閉じて、自分の妖力をコントロールするのに集中する。
あわい金色の光りがチッタと夕陽を包み込む。
妖力のコントロールに長けた狐人族故に可能な禁断の妖術。自らの妖力を他者に流し込み、その力を…命を分け与える秘術。
絶対に…助けなきゃ…!
自分の中の妖力が徐々になくなっていくのがわかる。
「ゆ…うひ…様」
チッタは願う。
満月の夜に会った、異世界から迷い込んできた黒髪の少年が目を覚ますのを。
チッタは願う。
また、自分の名前を呼んでほしいと。
身体が重くなり、意識が遠のいていく。
妖力のコントロールに長けているとはいえ、所詮3ツ尾のチッタの妖力の総量など決して多いものではなかった。
……ゆうひ様。
そこでチッタの意識は闇に呑まれた。
そして。
『―さあ、目覚めなさい』
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