鳳仙花は思うのだった
「見た目が八割」
だなんて、外見のことを指摘された。言い出したのは友人たち。厳密には、女友達な訳で。自然体で生きてきた私だったが、現代的でないとか。髪には色を入れて、それなりに化粧も。洋服も、普通かな。けれど、今風の女性像だと、私は手元に美がないだとか。あの爪にごてごてな装飾をしていないのが足りないのだと。そういうのは好みだと思うけど、美を追求したいのが女心というもので、数週間前にそう言われてから私も努力をしてみた。
そして今日は、その美の追求をお披露目する日。
私は友人たちに自慢の爪を見せた。反応は上々の様子で、努力が報われたと思った。私も女に磨きが掛かったんだなと。
嬉しくなった私は友人たちに料理を振る舞おうと台所へ。友人たちを尻目に料理の準備を始める。それから、悪戦苦闘の末に料理が完成する。一同は「美味しそう」と、料理の出来映えに驚いていた。
けれど、交差する箸と箸を眺め、私は一切、料理に手を出さなかった。
「見た目が八割」
だもの。見えないものがどんなものでも。……見た目が良ければ、なんでも良いの?
私は数週間前から洗っていない手をぼんやりと見つめる。