白の大地
黒。
白。
この二つはこの世の全てだ。
全ての物事がこの2色で表される。
黒は白を欲する。
白は黒を欲する。
輪廻、陰陽、昼夜など、様々な対の事と同じで、全てには表裏がある。
黒、白。
白、黒。
どっちが良いのか分からない。
どっちが悪いのか分からない。
けど、どちらとも分かることがある。
それは…
どちらとも同じである。
時は流れ、黒と白が全てを飲み込もうとしている世界。
ある男は伝説を追い求め、旅を続けていた。
「はぁ……ここにも白しか無かったか。」
溜息混じりに呟き、その場ーー何も無い平な大地に座り込む。白髪に赤眼という人間離れした容姿の男が独り、辺を見渡すも、水平線が見えるのみで何も無い。
「何もなしかっ…」
西暦2500年、世界は未知の物に脅かされていた。
黒と白と呼ばる物質によって世界は塗り替えられ、人々は2色に染まり死んでいった。
そんな中残された人々は、2色との境界線を創り出す事に成功し、僅かな食料で生き延びる生活をおくっていた。
黒は全てを破壊し尽くし、白は全てを無に戻した。
人類は立ち向かう術もなくただ、世界が崩壊するのを眺めていた。
しかし、人類は諦めず必死に術を求め、探した。
その結果、世界の崩壊を止める術を見つけた。
それは…
黒には白を、白には黒を、お互いに侵食させる事だった。
ただ、それを人為的に起こすのはとても大変であった為、僅かな希望を託してある手段に出たのだ。
同化ーー黒と白を人間の体内に取り込み、その力を侵食させる事で崩壊を止める方法だ。
これを行うために残された人類も人体実験により益々数を減らしていった。
西暦2700年、遂に人類は完全に同化に成功した人類を生み出したのだ。
俺は座り込んでいた白い大地から起き上がる。
「よっこいせっ…さぁて、そろそろ戻るかな」
何も無い真っ白の荒野から立ち上がり、そばに止めてあったクルーザーへと乗り込む。クルーザーと言っても昔はバイクと呼ばていた代物らしい。などと俺はあまり詳しくもない昔の事を考えながら、エンジンを起動する。
ブロロロロッ、真っ黒い煙を吹き上げて勢いよくエンジンが震え出す。回転数が安定してきたのを確認し、ハンドルを改めて握り発信する。
「今日はだいぶ奥まで来ちまったからなぁ…安全に帰れたら良いけど」
安全に?そう、安全にだ。この世界で“境界線”から外に出るというのは自殺行為だ。ましてや、更なる危険を周りに引き寄せる事になる。あの2色からは何人たりとも逃げられない。
この俺“グレス・ナノ”は世界を旅するいわば放浪者だ。放浪者故に様々な危険を経験してきている。2色には勝てないことも…
時は経ち、クルーザーにゆられて走っていた時だった。
『ウガァァァァァァアッ!!』
俺の前方の地面が盛り上がり、凄まじい咆哮と共に“奴ら”が現れる。小さな丘程の大きさの生き物、俺らが普段飼っている家畜である「ダクト」と呼ばれる子牛程の生物だ。しかし、今目の前に出てきたのは違う。ダクトよりも何倍も大きく、凶暴、そして強い。丸太の様な四肢。地面を剔る様に成長した四肢から生える爪。顔からは異様に発達した細かな歯。口割りからは絶え間無く流れて出す唾液。見るからに自我を失った瞳。俺達の飼っているダクトとは想像もつかないこの生物が、この世界を崩壊させた生物。こいつが俺達の世界を壊した奴らだ。
「侵食生物か…」
俺は咄嗟にハンドルをきり、そいつをギリギリの所では回避する。
『ウガァガァガァアッ!!』
真っ白の地面が掘り起こされ、奴の周りが黒く変色していく。
「こいつ黒を食いやがったなっ?!」
俺の真上が急に真っ暗になる。上を見上げる時間もなく俺はクルーザーから跳ね退き、地面へと飛ぶ。その背後で俺の乗っていたクルーザーがグシャッと、潰れる。
「あっぶねぇ…こいつ結構素早いな」
中級かと思っていたが大級か、もしくは超級かもしれない。しかも黒を体に宿してるからこのまま放置もできない。
「しゃあねぇ、久々にやりますかな。」
着てあった古い上着を投げ捨て、俺は両腕のーー制御鎧を確認する。説明すると、制御鎧は侵食作用を抑える境界線と同じ物質で出来ている。なので、これを着けているって事は…そう、俺は体内に黒と白を取り込んだ“同化師”だ。そして、俺の場合両腕に取り込んだため腕を覆っている。
『グァァァァァアッ!!』
俺は拘束を外す。拘束が解除された鎧がその場に落ちてゆく。その瞬間、鎧の隙間から黒と白のモヤが漏れ出す。
「久々だから手加減はしねぇぜ」
右手は黒。左手は白。俺は世界でも珍しい両色を取り込んだ同化師なのだ。
突進してくるそいつを見詰め、俺は右手を握る。
『ンッガァァアッ!!』
力を開放し、右腕が黒く染まる。アイツの頭を下げての突進に俺は真正面から殴る。腰を落とし、タイミングを見計らう。この力、腕の黒の力は…
「オラぁっ!!」
“触れたものを、粒子レベルで破壊する。”
それは侵食生物も例外ではない。こいつは全ての物質を破壊する。
『ウガァアッ!!』
脳天から拳を入れられ、頭部から黒い霧となって侵食生物は消えてゆく。俺はすぐさま制御鎧を装着する。
To be continue.




