第3話 チートな仲間、一人目登場!
ついに、旅立ちの日が来た!
・・・いや、来てしまった・・・。
「勇者ワタルよ! そなたが魔王を倒す旅がついに始まる! 汝が道中、無病息災である事を祈る。それと、道中の道草にはくれぐれも気をつけるように!」
王様と王妃様と姫様が僕に祈りを込める。まるで何かのおつかいみたいな言葉だ。
(獅子王師匠! 魚の目師匠!あなた方の授けてくれた剣と杖と技術で魔王を倒します!)
僕は心の中で誓った。ちなみに、僕の修行については、一応国家機密なので詳細はここには書かない。
僕が腰に差した、獅子王師匠から授かった、銅と鋼のハイブリッドでリーズナブルなハチキュッパの剣と、魚の目師匠から授かった、小さいタクトみたいな杖に向かって誓っている時、王様が思い出したように声をかけた。
「おぉ、勇者ワタルよ!すっかり忘れておったが道中の仲間を紹介する!神官騎士、ミルドラ―ス(どっかの魔王みたいな名前だなぁ)だ!」
そんな大切な事忘れないで!王様はもう盲録したの?と、心の中で文句を垂れていた。
すると扉の外から「誰だ!お前は!」とか、ゴギッ!ドカン!とか、喧騒が聞こえてきた。
すぐに喧騒が収まり、扉から神官騎士ミルドラ―スらしき人が入って来た。
金髪のポニーテールで、蒼くきれいな瞳をしていた。とってもハンサムでその体つきは細くも筋肉が引き締まっているようである。神官騎士らしい、独特で優雅な鎧を着ていて、まるで一流の芸術家の作品の銅像が本物になったようかの姿だ。
彼は輝く白い歯を見せてほほ笑んだ。
「勇者サマ、アナタハ神ヲ信ジテイマスカ?信ジテイルナラ、神ノ御加護ニヨリ、魔王ヲ倒ス事ガ出来ルデショウ!」
滅茶苦茶うさんくさいハンサムだった。
王様もビックリして、口を大きく開けている。
王妃様と御姫様は顔を赤らめて凝視している。彼女たちにとって、怪しいのと、ハンサムとはまた別問題らしい。
「神官騎士ミルドラ―スよ。2,3日見ぬ内に、ずいぶんとハンサムになったの。髪は金髪じゃったっけ?」
「(ひそひそ声)王様、あきらかに別人です。さっきの喧騒も聞いといて、怪しいと思わないのですか。」
大臣が王様に耳打ちする。
怪しいハンサムが答える。
「ワタクシノ、従兄ノミルドラ―ス殿ガ馬車酔イシタノデ戦エマセン、ソコデ勇者サマノ御供ヲ代ワリニ務メサセテモライマスル『ルシファー』ト申シマス。ドウゾ、ヨロシクチョンマゲ。」
ルシファーが怪しげな台詞を吐いて、輝く笑顔と共に優雅にお辞儀をする。
「そ、そうか。分かったルシファーよ!そなたが立派に務めを果たす事を期待する。」
王様が答える。
「しかし、ミルドラ―スはこの城に住んでいるのに、なんで馬車酔いするのか?」
大臣が疑問をつぶやく。
王様!納得するな! 大臣!もっとはっきりと突っ込め! ルシファーも、もっとましな嘘をつけ!
僕は心の中でどれだけ突っ込んでいるのだろうか? 断っても会話がループしてしまう勇者に選択権が無いのである。
「それでは、近衛兵隊長、ヨシュア・A・ガーナ。」
王様が呼ぶ。
鎧を着た壮年の男性が歩いてきた。
「勇者殿、私も精一杯に力をこめ・・・。」
ズドン!
近衛兵隊長が急に倒れた。目を白く剥いて、口からブクブク泡を出している。
「「ど、どうした!近衛兵隊長!」」
大臣と王様があわてた声をかける。
「オオー、可哀想ニ! キット、魔王トノ戦イヘノ訓練ノ疲労ト、緊張デ、倒レタヨウデス。」
ルシファーが棒読みで声を上げる。
「ルシファー、君の目が異様に蒼く光って隊長を睨んでいたけど、知らんぷりするつもりなの?」
僕が思わず突っ込む!
「オー、疑ワレルナンテ、ショックでーす。」
ルシファーが大げさに天を仰ぎ、顔に掌を当てる。
「きっと、勇者殿はルシファー殿の目が蒼くきれいなので、見間違えたに違いない。うむ、仕方あるまい。ではもう一人の従者、魔導兵隊長ローラ・フローラル。」
「はい。」と返事と共に、黒いローブをきた女性が歩いてきた。
「オー、美シイ女性ト御近ヅキニ、ナレルトハ、トテモ嬉シイでーす。」
ルシファーが歓迎と共に彼女を抱きしめてキスをした。
すると、ローラさんは顔を真っ赤にして気絶した。
「オー、ヤハリ彼女モ緊張ノアマリ気絶シテシマイマシタ。カ弱イ女性ニ困難ナ旅ハ無理ノヨウでーす。」
ルシファーが大げさに嘆く。
ルシファー、君は明らかに何かの力を使っているだろう。
「そ、そうか。それは困った。では他の者を・・・。」
その後も、精霊の巫女、召喚士、魔法剣士、魔法格闘家、魔法三銃士、などが呼ばれるものの、みんな不思議な事にことごとく気絶した。
「ふーむ、わが国には他に優秀な者達がいないのだ。もう勇者殿の従者に相応しい者がいないので、私から直々に文書を渡そう。これを見せれば仲間になってもらえるかもしれぬ。」
王様が渡してくれた文書は「勇者殿と共に魔王を倒す旅の仲間になってくれぬか、みごと務めを果たせたのならば、我が直々に褒美をやる。」と、仲間を集めるための内容が書かれていた。(チャラチャラチャンチャンチャーン)(効果音)勇者は仲間募集の紙を手に入れた。
「それと、勇者は狙撃の才があるそうなので、私が父から受け継いだ物をやろう。代々王家に受け継がれる一品だ」
王様の命令で、召使いが銃を運んできた。
どっからどう見ても猟銃にしか見えなかった。
「それは、王家が代々キツネ狩りをする際に使用するものだ。3発まで装弾可能で、魔力で弾丸を撃つ物だ。」
チャンチャラチャンチャンチャーン(効果音)。
勇者は王家の猟銃を手に入れた。これでキツネを狩れるようになった。
「あ、ありがとうございます。」
僕は笑みをひきつらせてお礼をいった。これで魔王を狩れ!と言うのか。
王様は満足そうにほほ笑んだ。
「勇者よ、魔王を倒すうえで、一つ話がある。
この世界のどこかに勇者しか扱えぬ伝説の聖剣が必ずある。他の王国の王家や貴族が宝として持っているかもしれぬし、商人が持っているかもしれぬ。
昔、この王家には代々勇者にしか使えぬと言われている伝説の聖剣があった。石の台座に収められていて、決して誰にも抜く事はできなかったと言い伝えられていた。」
「え、昔はこの御城にあったのですか?どうして今はないのですか?」
王様は気恥ずかしそうに目をそらして言った。
「私の4代前の王が、国家が財政難になった際に、「誰にも抜けぬのだから」と、言って、台座ごと売り、財政難を乗り越えたそうだ。」
そんな大切な国宝の聖剣を簡単に売るな!4代前の王!
僕があきれと怒りが混じったツッコミを心の中でしていると、王様が気を取り直して話を続けた。
「勇者よ!もしかしたら、商業国として発展した『マッカ―王国』に何か手掛かりがあるかもしれぬ。まずはそこを目指すと良い。この国よりも優れた武具もあると思う。」
(猟銃よりもましな銃があるかもね。)
もちろん口にはしない。
執事から旅のための荷物を受け取る。
「勇者殿、改メテヨロシク御願シマス。」
ルシファーがほほ笑む、怪しげに。
「そ、そう。よろしく。」
僕は仲間のルシファー(本当は12人ついてくるはずだった)と二人で魔王を倒す冒険の旅へでかけた。
ようやく旅が始まります。「偉大なる賢者★トール&とおる」と並行して話を書いていくつもりなので、どうやらペースが遅くなりそうです。