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第18話 魔法使いの試練

 僕はあれから何度か、あの変態から受け取ってしまった銛を捨てようとしたが、どこに捨てても僕の手元に戻ってきてしまう。川に投げても、いつの間にか僕の手に握られていた。土の中に埋めても、宿屋の部屋に立てかけられていた。商人に銀貨八枚で売った時はようやく捨てられたと思った。しかし、数時間後に王家の狩猟袋を整理していると、「元々ここに居ましたが何か?」とでも言っているかのように、しっかりとそこに収まっていた。             

 僕は銛を捨てられない事を嘆いたが、明日の出発に備えて、仕方なくその銛を使う事にした。銀貨八枚は僕のポケットにしっかりと収めたままだ。商人に、せっかく銀貨八枚で買った銛を失くしたという残酷な事実を知らせるのがしのびない。

 

◆◆◆◆

 

 翌朝、僕はベッドの中で目を覚ました。僕はしばらくボケっとする。

(ウゥ……なんか、また寝ちゃいそうだな)

 僕は大あくびしながらゆっくり背を起こし、僕は宿の食堂で朝食しながら二人を待つ。

「ふあぁぁ……。まだかにゃぁ…」

 僕が朝食を終え、机に突っ伏していると、ルシファーが来た。

「ルーちゃん、今日出発なのぉ? 私、超~寂しい~」

「ルー君、大丈夫? 依頼は危険なんでしょ?」

「大丈夫よ、ルーちゃんにとっては、あんたを満足させるよりもたやすく魔物を倒しちゃうわよ」

 ルシファーが美女をひきつれて現れた。昨日に加え、蒼々とした草原色の髪をした美女も増えている。

「大丈夫だ、心配するな。むしろ自分達の心配をしたらどうだ? 戦いの後は気分が高まっているからな、体力を整えた方がいいぞ。俺と過ごす夜のために、な!」

「「「キャー!!」」」

 美女ABCはピンク色の悲鳴を上げた。

 勇者のテンションはどん底に落ちた。

「よぉ、とおる。キリーはまだ起きていないのか?」

 ルシファーが僕に話しかけて来る。彼と一緒に僕まで周りの視線にさらされるが、なんだか慣れてきてしまった感じがする。慣れとは怖いものだ。

「そうみたい、キリーを起こしに行こうか?」

「おぉ、起こしてこいよ。こういう時はお約束通り、着替え中に出くわすのがセオリーだな。もてないお前にゆずってやるぜ」

「はぁ、……そうする」

 ルシファーの馬鹿にした態度にあきれて言葉が出ない。いったい何のセオリーだって言うんだ。

 僕はキリーを起こしに、彼女の部屋へ向かう。彼女の部屋の戸をしっかりノックする。僕にはルシファーが言うように、ラブコメ展開があるとは思わない。しかし、急に部屋へ踏み込めば、敵と間違えられて剣で斬り付けられそうだ。キリーと比べたらゴルゴ●なんて、目じゃないのだ。

「キリー! 朝だよ! 起きてる!」

 僕はノックするが、返事がない。ただの扉のようだ。

「キリー! 迷いの森に向かうよ! ごはん食べられなくなっちゃうよ!」

 僕はノックするが、返事がない。ただの部屋のようだ。

「おかしいなぁ。ぐっすり眠っているのかなぁ?」

 僕は扉を開けた。しかし、ベッドはすでに、もぬけの殻だった。

「あれ? キリー、どっかに行ったのかな?」

 僕は部屋を見渡すと、小さなテーブルの上に手紙が置かれていた。

「えっと、なになに。『お昼に昨日の所へ行きます。夕飯までには帰ります』だって?」

 どうやら、キリーはいつでもどこでも必ず迷子になるというセオリーがあるらしかった。


◆◆◆◆


 僕とルシファーはトンノ・ロッソ王国を出発し、西にある迷いの森に居ると言う噂の魔法使いに会いに行く。

 キリーが行方不明になったと言ったら、『言い訳しても無駄じゃ。どんな手を使っても、依頼をこなしてもらうぞ!』ギルド長のサルモーネは、頑固な老人らしく聞く耳を持たなかった。

「はぁ、迷いの山脈の次には迷いの森か。次に冒険する所は、迷いの山林とかっていう名前じゃないよね?」

「しっかし、森の魔法使いね。どうせなら、泉の精霊とかならいいのに。魔法使いって言ったら、たいてい男かしわくちゃのばあさんだからな」

 僕とルシファーは文句を言いながらも、迷いの森に辿り着いた。

 迷いの森を見たルシファーは顔をしかめた。

「おい、とおる。……この森は空間が歪められているぞ」

「そう……、歪められているね……。どっかで聞いたような……」

 たしか、迷いの山脈でも同じ事をルシファーから聞いた。あの時は、黒豚が山の中ではなく山のふもとに居た。

「もしかして、今回も魔法使いは森の近辺に居たりして……」

「おい、とおる?」

 僕は森の近辺を探り始めた。同じ手には二度と引っ掛かってやらないぞ!

「おい、どうしたんだよ、とおる?」

 ルシファーは突然の僕の行動を不思議に思ったようだ。彼は黒豚がどこに居たのかを知らなかったのだ。

 僕は茂みをかきまわして、魔法使いの住処を探す。絶対に何かあるはずだ。

 茂みを探る僕の手に何かが触れた。

「ん? むにゅ?」

 しっとりとしていて、なめらかな手触り。独特なフレーバーな香りが僕の鼻を刺激する。手にとって見ると、なんとまぁチョコレート色のご立派な「Feces」でした。「何何? いったいそれは何だって?」と、疑問をお持ちの方々。Fecesとは、肛門から排出される、食物のかすや腸粘膜からの分泌物などのかたまり。便もしくは糞(講談社出版 日本語大辞典より) Hi, repeat after me! 「Feces」,once more「Feces!」 例文1; The daughter of age tell her father not to defecate. Because the smell of his feces is the most stinking in the world.

 

「うぎゃぁぁ!!」

 僕は●んこを放り投げたが、それは粘り気があったため、コントロールがとんでもないことになった。

「わっ!」

 ルシファーが慌てて飛び退く。彼の足元に●んこが落っこちる。

「あ……」

 驚きに染まっていた彼の顔がだんだんと怒りに染まって行く。

「……と・お・る!!」

 ルシファーの体から金色の光が漏れだし、彼の背に光が集まって光の翼が形成しかかっている。

「ま、ま、まじ!」

 彼は鬼の形相をしていて、土下座ぐらいでは許してもらえそうにない。

「ご、ごめんなさい!!」

 勇者はとんずらした。

「待ちやがれ!!」

 しかし、ルシファーは親の敵を追うかのように駆けて来る。

「ゆ、ゆるして!!」

 僕が森に逃げ込んだ。すると、何やら妙ちくりんな音が聞こえ出した。

 ポワワワーン!

 急に僕の視界がオレンジ色の光に包まれて、周りの景色は絵の具をかきまわしたかのように崩れ始めた。

「くそ野―…まち…が……」

 直前まで迫っていたルシファーの手も、出来の悪いところ天のように崩れていった。

「な、なんだ!」

 景色がよりいっそうぐるぐる回り、いくつものの線となる。

 大地がなくなったかのように足元がおぼつかなくなり、頭の中はぐらぐらする。

 ぐるぐる、ぐらぐら、ぐるぐる、ぐらぐら……。

「うっ、……おえっ!」

 僕自身は回っていないのだが、回り続ける景色を見ていると気持ち悪くなってきた。胃液が喉元までせり上がってきて、ひりひりする喉を手で上から抑える。

 叙除に景色の回り方はゆっくりになっていき、木でできたログハウスのような部屋が目に入って来た。

 僕は立ちあがろうとするも、まだ景色はかすかに回り、足元もふらふらして再び座り込む。

「すみませんね、あなたにはこちらに転位していただきました」

 幼い声の方向に目を向けると、くらくらと回る僕の視界に黒っぽい人影が見えた。

「あ、あなたは……ゔっ、おぇっ!」

 僕は酔いに勝てなくなり、思わず吐く。

「ありゃー、きちゃない!盛大に床を汚してくれまちたね」

 声に少し嫌そう感情が混じっている。

「しかし、仕方ありませんね。ちちんと手順と礼儀を守らなかった僕にも責任がありましゅ」

 声を聞く限り、彼はかなり幼いようだ。

「お客さんをもてなすに、自己紹介が遅れまちたね。えぇ、僕の名前は……」

「み、水……」

「むっ、仕方ありまちぇんね。……『精霊さん、水ちょうだい』。……どうぞでしゅ」

 彼は魔法でコップに水を満たし、僕の口元まで運んでくれた。僕はコップを受け取り、ノドでひりひりする胃液を流し込んだ。

「では、自己紹介でしゅ。僕の名前は……」

「き、気持ち悪い」

 僕は床に倒れ込んだ。こんなにも木の床が気持ちいいと思ったのは、これが初めてだ。

「はぁ、自己紹介は後でしゅ」

 彼はぷりぷりして、机の上の水晶玉を見つめる。

「さてさて、予言の勇者さん。あなたの実力を見せて頂きましょうか。あ、そうでちた。あくまでも勇者さんの実力を測るのに、従者の方にはこちらで待機していただきましゅよ。……まぁ、聞いていないようでしゅが……」

 ちなみに、「勇者→転位魔法に酔って倒れ込んでいる情けない少年」です。しかしながら、どうやら彼は、ルシファーを勇者と間違えているようでした。僕には訂正する気力もないけど。

「試練は心知体を試すものでしゅよ。フフフ……。まず一つ目の試練は、いくつものの幻の道を見せるでしゅ。しかし、そのうち本物はたった一つ。間違えれば、最後の審判の時まで永久にさまよい続けるでしゅ」

 物凄い恐ろしい試練を、黒い人影はいたずらを仕掛けた子供みたいに目を輝かせてみている。

「な、な、なんと。周りの木々を吹き飛ばして、正しい道を見つけたでしゅ。凄いでしゅ!」

 どうやら、ルシファーは力技でクリアしたらしい。

「ふふふ、しかし、二つ目の試練はそう簡単にはいかないでしゅよ。濃い霧に包まれたそこは一本道で、一歩でも横に歩けば崖に真っ逆さまでしゅ。しかーし、霧の中には勇者の助けを求める人々の幻影があぁぁぁ!! これは心を鬼にしても進む事が求められる恐ろしい試練でしゅ!!」

 ハハハと、笑う黒い人影をぼんやりと僕は見る。ようやく頭がはっきりしてきた。黒い人影は130cmぐらいの背丈で、声は五歳ぐらいに聞こえる。

「な、なに~!! 助けを求める幻影をがん無視でしゅ! 幻影を見事に見破ったのでしゅか!? それでも、動揺一つ見せないとは凄いでしゅ、恐ろしいでしゅ!!」

 あぁ、多分、ルシファーは幻影だろうと本物だろうとがん無視しただろうさ。ルシファー、本当に恐ろしい子……。

僕は心の中で呟きながら、わななく黒いローブの男の子を見る。背丈が130cmぐらいに見えたが、彼は厚底の靴を履いていて、実際は110cmぐらいだった。

「まだまだ、次は大きな鉄球が襲いかかるでしゅ。一度、これをやってみたかったでしゅよ。やはははは!」

 目がギンギラギンに輝いている。小さな子供がサディストに笑う様子は結構怖い。

「わおぉぉぉ!! 巨大な鉄球を軽々と蹴り飛ばしたでしゅ!!」

 野球を見る子供みたいに大はしゃぎだが、見ているものはかなりきつい。相手がルシファーでなく僕だったら、今頃バタンキューになっている。

「さて、次は天井が下りてきて押しつぶしちゃう部屋でしゅ。謎を解かないと部屋から出られましぇーん!」

 いつの間に建物内に入っていたのか、辺り一面、森しか見えなかったが。

 僕の思考が終わるよりも早く、ルシファーはその試練をクリアしたようだ。

「おぉ!! 謎を解かず、普通に部屋を壊しまちた。凄いでしゅ!! しかぁし!!次は甘くありませんよ!!」

 いや、今までの試練は、恐らく人間には無理だと思います。

「この試練は今までに自分が犯してきた罪を見せる部屋でしゅ。自分の罪の重さにひれ伏すといいでしゅよ! ははは……うわぁぁ!! 水子の霊が一杯でしゅ!怖いでしゅ!! この男、どれだけの罪を犯して来たんでしゅか!? しかも、これまたがん無視でしゅ!!『パパ、パパ』と呼ぶ怨霊も眼中に無いのでしゅか!?」

 どうやら、水晶玉の向こうは大変な事になっているらしい。僕は床に倒れていて正解だったようだ。もし水晶玉を覗いていたら、しばらく夜中にトイレへ行かれないだろう。

「まぁ、勇者はすごい精神力の持ち主なんでしょうね……」

「ルシファーはすごい精神の持ち主なのは確かだよ……」

 めまいが治まってきた僕が呟く。

 水子の霊に怯えまくっていた幼い魔法使いだが、気を取り直して不敵に笑う

「ふふふ。だけど、あと最後の試練が残っているでしゅ!!」



「全く、なんだよ! 今回の話は!! ワタルがヒ―ヒ―言っているシーンはナシで、俺ばっかが苦労してるじゃねぇか!! おい! 作者ぁ!! キリスト教一派が地球を支配下においた暁には。貴様をぶっ飛ばしてやるからな! 覚悟しろよ!!  破濫蛮情、鬼鬼潰潰。 次回の最弱勇者をましに書かなきゃぶっ飛ばす!!」

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