9話 にいちゃん面接へ行く
第9話 にいちゃん面接へ行く
にいちゃんは、ずっとアルバイトをしていたのだと思う。
漫画家になる夢を、どこかで諦めきれなかったのだろう。
四十歳くらいになった頃だった。
郵便局の面接に行った。
結果はまさかの、不採用。
そのとき、私はにいちゃんの欠点を見つけた。
にいちゃんは、興味のある分野にはとことん詳しいけれど、
それ以外のことには、びっくりするほど無頓着だった。
面接に落ちた理由も、きっとそんなところだったのだと思う。
しばらくして、にいちゃんから連絡が来た。
「いっちゃん、面接受かったよー。」
「どこに決まったの?」
「郵便局だよ」
え?っと思った。
「スーツを着て行ったら受かったんだよ。
みんな、ちゃんとスーツ着るんだね。
にいちゃんが落ちるなんて、おかしいと思ったんだよ。」
そう言って、本気で不思議そうな顔をしていた。
どうやら、前回は私服だったらしい。
同じ場所に、もう一度面接に行くなんて。
私は、正直すごいと思った。
「いやー、にいちゃんが落ちるなんて、おかしいと思ったんだよ。」
そう言って、にいちゃんは笑っていた。
落ちたことを引きずるでもなく、
自分を疑うでもなく、
ただ、もう一度行った。
にいちゃんは、超人みたいなメンタルの持ち主だった。
二度も同じ場所へ面接に行くその背中が、とてもかっこよく見えた。




